週末、西日本大会を見に名古屋まで行ってきました。


私が参加したのは土曜日と日曜日。ジュニア、アイスダンス、女子、男子をまとめてやるので、朝から晩までの長丁場。なので全部見たわけではなく、基本、シニア男女のショート、フリーと、アイスダンスフリーです。

土曜日は、午後に名古屋に到着して、途中から参加したので何となく集中していなかったのと、やっと大ちゃんの競技演技が見れるという浮き足立った気持ちもあって、大ちゃんのシェルタリング・スカイだけ辛うじて記憶に残せている状態でした。


日曜日は男子の公式練習が見れる時間に開場だったので、9時から現場にスタンバイして、やっと大ちゃん以外の男子選手を一人一人ゆっくり見れました。滑走順で2分半程度の曲がけ練習をやっていくので、最終滑走の大ちゃんは最後です。
選手たちの演技を見ながら、改めて、そうか、出場選手のほとんどが学生さんなんだ、社会人は山田耕新君と大ちゃんぐらいなんだ、ということに今更気づいて感心していました。これはもう、ほぼインカレです。
わしは大ちゃんの以前の現役時代にジャパンオープンを一度見に行ったぐらいで(あれを試合に入れるかどうかは別にして)、フィギュアスケートの現地観戦は基本アイスショーです。もちろん、テレビではもっと前から見ていますが、テレビで見れるのは大きな国際試合と、国内試合は全日本選手権のみ。それも、地上波では上位グループしか撮さないので、その舞台に出てこないスケーターはほとんど知りません。(今年は去年に引き続き、BSで生放送してくれるようなので見れるかもしれません)
今回の西日本大会でいうと、友野一樹君はすでに世界で活躍しているので別として、あとは耕新君、中村優君、日野龍樹君、本田太一くん、櫛田一樹君ぐらいしか知らない、正真正銘ライトヲタです。
なので、日曜朝の公式練習は、名前と演技を確認して出場選手を知る、というわしにとっても試合前の準備時間になりました。

 

グループが後半になるほど、当然演技の完成度も上がってくるのを感じながら見ていたのですが、第三グループで、笹原景一朗君の曲掛けの順番になりました。
流れてきた曲は、男子にはめずらしく女性ボーカルもの。ああ、こういう曲、佐藤有香さん好きちゃうんかなーとか思いながら見ていたのですが、曲の世界観に合ったとても伸びやかな笹原君の演技に引き込まれていきました。彼の演技はまるで誇張がなく、ちょっと日本男子には珍しいタイプだと思い、ずっと見ていたかったのですが、曲が途中で終わってしまって、これは本番絶対チェックだ!と笹原君の名前を心に刻んで会場を出ました。

 

今回はジュニアの演技は観戦せず、シニア女子から会場に戻りました。
女子は華やかです。大ちゃんの後輩の細田彩花ちゃんがトリプルアクセルを決めた時には、ああ、あのカレーの時の女の子も花開いたかと感動し、紀平梨花ちゃんまでアクセル決めて流石期待通りやなと感心しました。
そして次は男子です。やはり試合なので皆が上手くいくわけではありません。失敗する人も多くいました。ただ、学生の彼らが賢明に演技をする姿を見て、この場面に立ち会えるというのは物凄く有難いことなんやないやろかと思うようになりました。皆が知ってるトップ選手に比べれば、技の難易度も完成度も劣るわけで、当然実力では敵わないのでしょうけど、そういう力とは別の、それぞれの個性というのがあって、それは例えトリプルアクセル飛ばなくても十分に観客を引き込む力があったし、特に山田耕新君のときには、思ったより点数は伸びませんでしたけど、それまでで一番の盛り上がりだったと思います。

 

そしていよいよ笹原君の番。
流れてきたのはこちらの曲です。

 

★Gabrielle Aplin: Salvation (Official video)

 

 

「一蹴りの伸びやかさと美しさ」
実況の西岡さんが笹原君のスケートをこう紹介しましたが、本当にそのとおりで、笹原君のスケートは日本人離れしているというか、むしろわしが思うアメリカ男子のスケートのイメージに近く(なぜかジョシュア・ファリスを思い出した)、見ていて本当に気持ちのいいスケートをしていました。そして全身を使って表現しているので、現場でもとても大きく見えました。
大学(同志社)のプロフィールを見ると、身長168cmと実際には特別身長が高いわけではないのに、ものすごく大柄な選手に思えるほど、バランスのいい肢体、伸びやかな手足、ぴんと張った背中で演技していて、そしてジャンプも高さがあって丁寧で、全体的に何か品のようなものを感じさせるスケートをする選手でした。

 

後半のあのイーグルの部分では、感動が最も高まったところで、本当によく曲の良さを捉えているなと思いました。素晴らしいパフォーマンスは、音楽をより一層引き立てます。音楽を利用するのではなく、音楽に寄り添う。
それにしても。この楽曲を選んだのが本人なのか、振り付けの吉野晃平君なのかはわかりませんが、他の誰よりも、笹原君にぴったりの楽曲です。吉野君も大ちゃんと同じ関大で長光門下生でした。彼の現役最後の演技となった、2016年全日本選手権でのSPの演技を見ると、何となく今回の笹原君の楽曲に近い選曲をしていたような気もしますので、もしかしたら吉野君の提案だったのでしょうか。

 

おまけで、こちらアコースティックなピアノバージョン。

 

★Gabrielle Aplin - Salvation (BBC Introducing session)

 


現地で観戦しているときは、笹原君に関する情報は全くなかったので(名前すら知らなかった)、今シーズンが実は彼にとってラストシーズンということは知りませんでした。果たして、他の方は知っていたのでしょうか?彼の演技が終わった瞬間に総スタオベだったのです。ジャンプが失敗しなかったからということもあったでしょうが、とにかく、彼の演技が会場に与えた感動というのは、一地方大会を超えていたのです。本人も何度もガッツポーズをしていました。

 

競技は点数で順位が決まりますが、感動は点数とは必ずしも比例しません。例えば、今回優勝した大ちゃんの点数は、今世界のトップで活躍している選手達に比べれば、技術的にまだ戦えるレベルではありません。それでも、同じ舞台に立ったとき、会場の観客やTVの前で見ている人たちに与える感動がその点数を逆転できることぐらい、今回の彼の演技を見た者であればわかります。ちなみに、彼の今回の演技はわしが思うにまだ彼の実力の6割程度だと思います。全日本でそれが8割、9割になったときがすごく楽しみです。

 

実は、CSで放送された今回の大会は、大ちゃんの演技を録画で何度も見ていますが、同時に笹原君の演技もリピートしています。大ちゃんの演技はそのかっこよさを堪能したくて見てしまうのですが、笹原君のは泣くために見ています。やばいすかね。
わしは、泣くために見ているスケート演技は他にもあって、一つはジェイソン・ブラウンの「愛の香気」、あとはジェレミー・アボットの「エクソジェネシス」と「弦楽のためのアダージョ」です。世界のレジェンドである彼らと、国内の地方大会の表彰台に乗らない学生選手を同列に語るのは抵抗のある人もいるかもしれませんが、私の中では「泣ける演技」という括りで同じです。


ジェイソン・ブラウンの「愛の香気」については、「スケアメのジェイソン・ブラウン「愛の香気」、からのロヒーン」という記事を書いたのですが、その中で、彼の演技を見た印象を、

スケートってこんなに気持ちがいいものなんだよ
音楽を体で表現するってこんなに素晴らしいことなんだよ

 

ジェイソンは、フィギュアスケートという身体表現の手段を使って、そんなことを観客に語りかけているように思える。

と、書きました。まさに同じ感想を笹原君の演技を見て感じたのです。この「気持ちのいいスケート」は昨今のトップ選手にはなかなか見れません。彼らはうまいスケート、強いスケートはするのですが、各エレメンツの技の難易度を上げればあげるほど、4分となったフリーでは不可能となってくるのです。
今回笹原君のスケートを見て、久々に、「ああ、スケートって気持ちがいいものなんだな」と思い出すことができました。

 

こういう体験ができたのも、大ちゃんのおかげです。大ちゃんが地方大会から参加しなければ、足を運ぶこともなかったし、いわゆる無名の選手(スケオタの方は知っていたのでしょうが)に目を留めることもなかった。
そして改めて、フィギュアスケート競技に対するフジテレビの取り組みが、有名どころだけを放送して人気を煽るような「美味しいとこどり」な仕事ではなく、競技の裾野まできちんと取材をしてやっているスポーツ事業だということを認識しました。
今回異例のCS生放送に踏み切れたのは当然高橋大輔の人気を当てにしたものですが、それだけでなく、これから出てくる若手選手を紹介し、笹原君のように20年もの長い間フィギュアスケートをやってきて、今度の全日本が最後の全日本となるラストシーズンにスポットを当てることができたのです。フジテレビありがとう。

 

是非、多くの人に笹原君や他の若い選手の演技を見てもらいたいです。彼の登場するグループが地上波に入るのか、BS放送のほうなのかよくわかりませんが、できれば地上波で流れて欲しいな。

 

「フィギュアスケート全日本選手権2018」
日程: 12月20日(木)〜12月24日(月・祝)
会場: 大阪府門真市 RACTABドーム
フジテレビサイト: https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html

 

また、今回の西日本大会は、ある方が問い合わせたら下記のスケジュールで再放送予定と返事がきたらしいですが、どうなんでしょう。まだサイトの方にはアップされていません。

 

12/16(日) ONE 14:00~19:30
番組サイト http://otn.fujitv.co.jp/b_hp/918200185.html


手裏剣

 

笹原景一朗 プロフィール
同志社大学 商学部4年

169㌢61㌔

追手門学院大手前高等学校卒
昨年の夏にはアメリカに留学し、様々な経験を積んだ。4回生になる今年、ついにラストイヤーを迎える。

 

■同志社大学サイト関連記事

 

>'15ルーキー特集「フィギュアスケート部」
http://doshisha-atom.net/web/result.php?no=1522

 

>主将セレクション2018 : フィギュアスケート部
フィギュアスケート部主将セレクション 2018年を語る
友野一希×時國隼輔×笹原景一朗「個性を伸ばす」
http://doshisha-atom.net/web/result.php?no=2110

 

NEW

>4 years. #大学スポーツ記事

「笹原景一朗、笑顔でフィギュアにさよならを」

澤田亜紀  大岡敦  2018/11/21

https://4years.asahi.com/article/11960767

 

 

 

(写真:坂本清)

 

 

手裏剣  手裏剣  手裏剣

 

 

西日本も全日本も関係ないんですけど、おまけで、上記で言及したジェレミー・アボットの「エクソジェネシス」紹介します。笹原君のスケート見て、久々に見たくなったんで。


★Jeremy ABBOTT(USA) -FP-WC 2014

 

 

 

そして、次回こそ、大ちゃんについて書く。。。。予定。。。オイ滝汗