サンディエゴ柔術事故詳報(動画あり) | 柔術新聞

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事故動画公開

 

 

ツイッターで既報のこの不幸な事件、道場設置の監視カメラで撮影された動画が公開されました。

 

 

いかがでしょうか。

 

かけた技は色々予測されていましたが、いわゆる「レオロール」ですね。

 

動き自体はさすがシニストロという感じで見事ですが、受けがついていけず、首があらぬ方向に曲がっています。

 

アメリカの柔術界はこの件で非常に揺れており、意見百出の状態。

 

この動画を公開した懐かしのファイブグラップリングアカウントは「見てのとおりイジメも乱暴さもゼロ。ただの不幸な事件。被害者は白帯だが完全な初心者ではなく、我々の大会に出たこともある。しかも彼は現在歩いて旅行もできている。シニストロは未熟な裁判制度の犠牲者」的なコメント。

 

そんな中、ヘナー・グレイシーが裁判の有識者による参考意見陳述的なのに協力し、「白帯に『forward-flip backtake』(前転バック)をかけるなんて馬鹿げてる。『forward-flip backtake』は柔術の基本技術でも必須技術でもなく、例外技の範疇だ。そういう技術はトップ選手同士の練習会でやるもので、経験の少ない人間が授業のスパーでやるものではない」と証言したことが明らかに。

 

この証言が62億円の損害賠償支払いという判決に大きく寄与したであろうことは想像に難くないことから、柔術界からは「ヘナーは裏切り者」「金の亡者」と糾弾する声が上がり、一部からは「シニストロを助けろ」「俺の道場にいつでも来い」と擁護する人も現れています。

 

いやこれ危ないでしょ・・・

そんな中で個人的な意見を言わせてもらいますと、これ普通に危なくて全然ダメだと思うんですよね。

ヘナーの証言と同じ印象です。

 

アメリカって自己責任論めっちゃ強いから、「成人が自分の責任でマットに上がったんだから、完全な初心者でもない限り、正当な技に対して正当な返しができなかった方が悪い」的な風潮強いんですけど、首を下にする危険性をあまりに軽視してるように思います。

 

ツイートしたように、自分は最初からシニストロが乱暴とかは思ってなくて、単純に頭下にするムーブを経験少ない人にかけたと認識していて、そこで既に「ええ、、、」と思っていたのですが、アメリカでは「きっとイジメスパーだったんだ!なんて酷い!」みたいに思ってた人が多く、そこで動画公開されて「なんだ正当なスパーじゃないか!ただの事故!シニストロは悪くない!」みたいな流れになってて、自分としては「おおう、、、」という感じです。

 

白帯でも「試合出たことあるなら初心者でなく経験者扱い」というのも、アバウトにもほどがある括りという印象。

 

この動きに対応できるレベルかどうかを見極めるのがインストラクターの仕事だと思うんですけどね。しかもそんな難しい見極めじゃないでしょこれ。いきなりこんなスーパーテクやられたら自分だってついていけるかどうか分かりません。

 

現在負傷者さんが旅行もできてるというのであれば、それはもう諸手を挙げて「良かったね」という感想しかなく、「だから大した件ではない!」なんてとても思えません。

 

そういう状態を考慮して賠償金額が適切かどうかという話はあるでしょうが、それは裁判が決めた事ですからねえ。

 

頭が下になってる時は危ない体勢

向こうの細かい裁判事情なんてこっちじゃ分からない事も多いので置いといて、こちらが得る教訓としては、「格闘技なんて基本危ないんだから、動いた先でどうなるか予測してないとダメ」という事だと思うのです。

 

つまり「相手の頭が下になってる時に全力高速ムーブしたら、頚椎ぶちぶちってブッチ切れちゃうかも?」「肘とかヘンに畳まってる時に上から乗ったら、関節逆になっちゃうかも?」とか、「痛い系の妄想」できないとダメって事ですよね。

 

自分けっこうこれ系弱くて、「あの時ああいう風になってたら神経切れてたかも、、、」とかしょっちゅう妄想してて。

 

ちょっとだいぶ話それるのですが、東京武道館の二階席って手すりがそんな高くないですよね。

あそこ手すり高いと思って全力で寄りかかって落ちそうになった事あって、「あそこで頭から落ちてたらどうなったんだろう」とか怖くなって眠れなくなる事が。

 

まあそこまで病的なのもどうかとは思いますが、なんかこう、危ない体勢を予測して「怖い!」と思う事って、それこそ護身という意味でもすごく大事なんじゃないかと思う訳です。

 

痛みと恐怖は、人間の防衛本能における重要な機能ですからね。