柔術選手の生きる道・・・無人の荒野を行く岩本健汰選手 | 柔術新聞

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柔術の事について書いていきますね。

~岩本選手の快進撃

 

岩本健汰選手が、ADCC本戦に続いて、フローグラップリングで中継されたEBIルールの大会「Submission Only Series VIII」に出場しました。

 

柔術選手、特にアジア人選手はフローで中継される大会に出れなければ、知名度なんて無いも同然で、とにかくアメリカ群衆の目にとまらないと、選手キャリアとして何も始まらないのが、残念ながら世界の現状。

 

そしてフロー中継の大会に継続参戦というのがそもそもデッカイ壁。

 

遠いのももちろんですが、向こうのプロ大会にしょっちゅう参加できるってどんな強豪だよ!って話です。

 

そういうルートに乗りつつある岩本選手は本当に凄くて、日本人としては前例がないケースと自分は思っています。

 

~世界の趨勢はグラップリング優勢

いわく「柔術で食ってくのは難しい」と言われて幾星霜ですが、その壁を乗り越えてしまってる感があるのが昨今の「ノーギ&グラップリング」。

 

もちろん試合で食えてるのなんて一握りで、その人達だって収支を見てみればインストラクション配信収入の方が多くを占めていると思うのですが、それでもギの選手より随分「ファイター/格闘家」感が強いように自分は感じます。

 

まあ見た目の問題もあるとは思いますが、まず有名選手は知名度が抜群。

 

知る人ぞ知るとか、業界でリスペクトされてるとかじゃなくて、道歩いてるとサイン&ツーショットねだられるレベルという事ですね。

 

UFC含めたMMA選手との交流も盛んだし、「ワールドで優勝した」「ADCCで勝った」とか通り越して、選手単体として名が通っている。

 

これはすごい事ですよね。

 

~ギの閉塞感

ギの格闘技における有効性は完全に確定していて、グラップリングはもちろんMMAにおいても、もう必修もしくは重要科目として定着しています。

 

ワールド優勝なんてなれば当然リスペクトを集めますしね。

 

ただそれでも、どうしても競技全体からアマチュア感が抜けない。プロ大会とかたくさん開かれたにもかかわらず、です。

 

DOスポーツとしての認知度や競技レベルの高さ&有効性に関係無く、この辺の閉塞感は、海外でも最近よく指摘されており、自分もとくにこの数年非常に強く感じております。

 

これは全く個人的な嗜好の話ですが、自分は「柔術で食ってく」的な事象にはあまり興味がなく、とにかく「ファイター」としての個人の強さに惹かれるのです。

 

人知を超えた美しいムーブを見せてくれる選手は、競技問わず自分にとって優れた芸術家なのです。

 

ですので、どうしても「強さに物を言わせて自分を売ってる」人に興味を持ってしまうのです。

 

~僕の前に道はない 僕の後に道は出来る

話を岩本選手に戻しますと、もうとにかく強い。

 

そしてその強さを乗せるルートの方向感覚も、ワールド等の大会権威を追求するだけではなく、現状支配的なメディアを認識し、真っ正面から体当たりで突破していくという、これまでの日本人選手にあまりなかったもの。

 

世界中の選手が同じ事を考えてるため、競争率がエグイことになってる訳ですが、その狭き門をこじ開けて世界に向けて自分を売ってる。

 

人ってある程度地位が固まったり名声が出ると、守りに入ったりしますが、岩本選手は最も頂点が明確で、それゆえ最も強敵が多い世界に挑戦しているように自分は感じます。

 

MMA含めれば、今成正和選手や青木真也選手のような開拓者がいますが、柔術界にはあまり前例がないゆえに

 

どこかに通じている大道を

 僕は歩いているのじゃない

 

僕の前に道はない

 僕の後ろに道は出来る

 

道は僕のふみしだいて来た足あとだ

 だから

道の最端にいつでも僕は立っている

 

という高村光太郎状態。

 

自分は業界の人間とかでなくただの格闘技ファンなので、ロマンを見せてくれるファイターの猪突猛進ぶりを、ひたすら楽しみに、残りの人生を過ごしていきたいなと思っています。