夏休みの間、毎日のように一緒の時間を過ごした娘と娘の彼ジョーダン。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ、娘が大学に向かう日がきた。
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空港で30分くらい時間のあった娘と彼は、人通りの少ない、隅の方の椅子に座った。
いつかこういう日が来るとわかっていても、現実を突きつけられると、悲しくて涙が溢れる。
娘は、彼の胸に顔を埋めて、ただただ泣いた・・・。
彼は、そんな娘をずーっと抱きしめていてくれた。
その時、突然、娘が思い出したことがある。
娘が彼と付き合い始めて間もない頃、娘はOCD(強迫性障害)と併発した鬱に加えて、友達とのいざこざなどもあり、自信というものを完璧に失い、人の目を見て話すことができなくなっていた。
勿論、彼と話す時も彼の目が見られなかったのだが、そのことにすぐに気が付いた彼。
ある日、娘に
「僕の事を少しでも好きって気持ちがあるなら、僕の目を見て話してほしい」
それから彼の目を見て話すように努力し始め、今は「人の目を見て話すこと」ができるようになった。
離れ離れる前に、もう一度、彼の目を見て「ありがとう」と言いたいと思った娘。
彼の胸に埋めていた顔を上げようとした。
すると、彼
「お願いだから・・・・・。
ちょっとだけ、僕の目、見ないでくれる・・・・。
見られたら、涙止まらなくなるから・・・・・。」
そのまま娘は、彼の胸に顔を埋めたまま泣き続けた。
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会社の25歳の男性が言っていた。
「高校で付き合っていたカップルが別々の大学に行くと、だいたい10月か11月に別れちゃうんですよね」
新しい環境に慣れ、目移りし始めるのが、10月か11月頃ということらしい。
離れ離れになってからも、毎日、テキストやFaceTimeで連絡を取っているようだが、娘と彼も、10月か11月には別れてしまうかもしれない。
または、それまで続かないかもしれない。
もしそうなったとしても、彼と出会えたことは、娘にとってとても意味のあることだったと思う。
自分に自信がなく、自分のことが嫌いで仕方なかった娘に、「自分らしく生きる勇気」を与えることができたのは、私でも、旦那でも、そして娘の精神科医でもなく、彼だけだった。
娘の人生を変えてくれた彼には、感謝してもしきれない。

