プロムが終わり、卒業式も終わると、夏休みが来た。
娘の夏は、毎年、とにかく忙しかった。
特に高校に入ってからは、大学のクラスを取ったり、リーダーシップ・キャンプに参加したり、SAT(アメリカ版統一テスト)の夏期講習に行ったり、短期留学したり、ボランティア活動をしたりと休む暇がなかった。
が、今年の夏は、全く予定を入れなかった。
「大学に入ったら、毎日寝ないで勉強しなくちゃいけないから、今年の夏はのんびり過ごしたい」という娘の意見を尊重し、大学入学準備と友達と過ごすためだけの夏にすることにした。
夏の間、娘は、エチオピア系アメリカ人の女の子、ダニエラと遊ぶことが多かった。
ダニエラは、我が家に来ても、娘だけでなく、私にもハグしてくれるスーパーフレンドリーな子。
シャイで、知らない人とはあまり口をきかない娘の彼・ジョーダンも、ダニエラとは仲良しになったので、ダニエラと遊ぶ際、彼を一緒に連れて行くこともあった。
ある日、娘が彼の部屋のベッドでゴロゴロしていた時の事。
彼がトイレに行っている最中、ベッドの上の彼の携帯にテキストが来た。
ちらっと見ると、送信者はダニエラだった。
「時間がある時、連絡して!」
彼とダニエラが連絡を取り合っていたことを知らなかった娘。
嫌な予感がした・・・・・。
夏休みが終われば、娘は地元を離れるが、学校は違うが、彼とダニエラは地元に残る。
彼は、娘がいなくなった後、ダニエラに乗り換えようとしているのだろうか?
が、その後も彼の態度に変化は見られなかったので、娘はテキストのことを気にしないようにした。
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娘が大学に向けて出発する数日前、彼が娘をディナーに連れて行ってくれることになった。
場所は、我が家の近くの、娘が大好きなベジタリアン・レストラン。
いつものように、手を繋ぎながらレストランに入った。
が、いつもとは違うことが一つだけあった。
レストランには、ダニエラをはじめとする、娘の友達が集まってくれていた。
それは、彼が計画してくれた、娘のための「サプライズ送迎会」だった。
ダニエラと連絡を取り合っていたのは、この送迎会のためだった。
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普通の人の100倍シャイで、人との交流も得意ではないタイプの彼。
その彼が、娘のために、あまり交流のない娘の友達に連絡をし、パーティーを計画してくれた。
その彼の気持ちだけで、娘にとっては十分なプレゼントになった。

