仏師 鈴木謙太郎 仏像彫刻と制作の日々

仏師 鈴木謙太郎 仏像彫刻と制作の日々

仏師・鈴木謙太郎による仏像彫刻の制作記録。
仏像制作の工程や工房の日常、教室活動などを発信しています。
木彫仏の魅力と、手仕事の世界をお届けします。

今週は、各地の教室が続く一週間でした。
水曜の真光寺教室は、台風の接近により休講といたしました。
教室を始めて16年になりますが、「休講」という判断をしたのは今回が初めてです。
生徒さんの身の安全が何より大切ですので、迷わず決断しました。

 

昨日の本光寺教室は、気候も穏やかで、落ち着いた一日でした。
本光寺教室は畳のお部屋で、基本は机と座布団の席になりますが、
腰に不安のある方のために、高い椅子と机の席もご用意しています。


数は限られていますが、電車でいう“優先席”のような感覚で、
生徒さん同士が自然に気遣い合い、譲り合ってくださいます。
その姿に、いつも温かさを感じています。

 

真光寺教室は、高い椅子と高い机のお部屋。
喜光院教室は和室ですが、こちらも椅子をご用意しています。
それぞれの教室に、それぞれの空気と良さがあり、穏やかに続いています。


また次回も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

教室の生徒さんから「仕上げがきれいにできません」と相談を受けることがある。


その理由は、多くの場合「刀跡が残ってしまうから」というものだ。
しかし、刀跡が残ることは決して悪いことではない。
むしろ、仏像彫刻においては“美しさそのもの”だと思っている。

 

サンドペーパーで表面を均一に整えると、一見なめらかに見える。
だがその代わりに、木の繊維は壊れ、細かな傷が無数に入る。
木が本来持つ呼吸や温度が薄く覆われ、どこか“平坦な表情”になり角のシャープなラインも丸く整えられてしまう。


そもそも、仏像が生まれた時代にはサンドペーパーという道具は存在しない。
千年以上、仏師たちは刃物だけで仕上げてきた。

刃物で仕上げるということは、木の繊維を壊さずに整えるということだ。


刃物が通った軌跡は、木の繊維を切り、整え、
そのまま“木の声”として表面に現れる。
この刃跡こそが、仏像に命を宿す。

刀跡が残ると、光の入り方が変わる。
 

刃物の角度によって生まれる細かな面が光を受け、静かに返す。
その揺らぎが、仏像の表情に深みと気配を与える。
サンドペーパーでは決して生まれない陰影だ。


「刀跡は、あなたが木と向き合った証です」
それは未熟さではなく、
木と刃物と自分の呼吸が重なった“痕跡”であり、
その痕跡こそが作品を美しくする。

 

木の声を消さず、刃物の軌跡を隠さず、
そのままの姿で形を迎えること。
それが、仏像彫刻の懐の深さだと思っている。

 

 

 

「雲竜」

 

不知火型は攻めの象徴、雲竜型は攻守の均衡を示す型。

横綱の二つの型に宿る意味を辿ると、

力と静けさのあいだにこそ本当の強さがあることに気づき、

均衡を求めて力士像を制作。

 

相撲の土俵入りは、ただの儀式ではない。

横綱がどの型を選ぶかは、その力士の生き方そのものを映し出す。

 

不知火型は両腕を大きく広げ、胸を張り、前へ出る姿勢が特徴。歴史的にも“攻めの型”として語られることが多く、

曙、朝青龍など、圧倒的な前進力を持つ横綱たちが選んできた。

 

一方、雲竜型は片手を腰に当て、もう片方の手を静かに前へ差し出す。右手は攻め、左手は守り。

陰と陽がひとつの身体に宿るような静けさと均衡の美しさがあり、貴乃花、稀勢の里、照ノ富士など、精神性の深い横綱たちが選んできた型でもある。

 

相撲協会が公式に「不知火=攻撃」「雲竜=均衡」と定義しているわけではないが、型の形や歴史、象徴性を踏まえると、この理解は文化的にも自然で、多くの相撲ファンに共有されている。

 

私はこの“均衡”に強く惹かれる。力だけではない。静けさだけでもない。その間にある、見えない緊張。

 

そこにこそ、最強の姿が宿ると思っている。今回の力士像を制作したときも、右手は攻め、左手は守り。陰と陽がひとつの身体に宿る姿を、木の中からそっと彫り起こすような感覚だった。

 

木を彫るということは、ただ形を作ることではない。木の声を聞き、刃物の動きを感じ、自分の呼吸と向き合う時間だと日々感じている。





新しいホームページが整いました。

  

作品集や仏像修復、教室のご案内など
無駄を省き極力シンプルに
静かな世界観でまとめています。 


 写真1枚目 新ホームページスマホ版

 写真2枚目 旧ホームページスマホ版 


 木と向き合う時間や、
仏さまをお預かりする気持ちを
そのまま感じていただけるよう
落ち着いたつくりにしました。


 スマホ版が特に見やすくなりましたので
よろしければゆっくりとご覧ください。 


 本格運用前のため、

表示の不具合や気になる点
こうした方が良いよという改善案がございましたら、そっとお知らせいただけると助かります。 


 プロフィールからリンクしています。

https://bussikentarou.hp.peraichi.com/


【真光寺教室・生徒作品/帝釈天】




真光寺教室での一日。
静かな本堂の空気の中で、生徒さんが彫り進めていた「帝釈天」が
ひとつの形として現れてきました。

今回の材質は楠(クスノキ)。
木目に癖があり、刃が素直に入らないことも多い木です。
思い通りに進まない瞬間こそ、木と向き合う時間が深まります。

彫っていると、ふわりとショウノウの香りが立ちます。
楠材ならではの、どこか懐かしい香り。
その香りに包まれながら、一刀ずつ丁寧に形を探っていく姿が
とても印象的でした。

帝釈天の堂々とした佇まい。
肩の張り、胸の張り、象に乗る姿勢。
どれも丁寧に観察しながら、時間をかけて彫り進めてくれました。

仏像彫刻は、急がず、焦らず。
木と自分の呼吸を合わせながら進めていくものです。

今日もまた、教室の中に静かな成長の時間が流れていました。

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