【多聞天、完成】
多聞天像が完成しました。
北方を守護する四天王の一尊であり、毘沙門天としても知られる武神の仏さま。
仏法を守り、迷いを断ち、進む人の背中を支える存在。
怒りの表情は、恐れではなく“強い慈悲”のあらわれです。
材は国産ヒノキ。
冬の静かな空気の中で彫り進め、
木の香りとともに仕上がった一体です。
冷たい季節に生まれた、
あたたかい「守りの仏」。



このたび、舎利弗尊者像が完成いたしました。
舎利弗(しゃりほつ)尊者は、釈迦十大弟子のひとりであり、「智慧第一」と称される存在です。論理的思考と深い理解力に秀で、釈迦の教えを体系的に整理し、多くの弟子たちに伝えました。その姿は、ただ知識に優れるだけでなく、他者への慈しみと謙虚さに満ちていたと伝えられています。
今回の像では、そうした舎利弗尊者の内面性を造形に込めることを目指しました。衣の流れは静謐さを、岩座の質感は地に足のついた実践を、円光の柔らかな広がりは智慧の普遍性を象徴しています。
この像は、仏教美術の伝統を踏まえつつも、現代の感性にも寄り添うよう制作しました。
仏教に親しみのない方にも、尊者の穏やかなまなざしが、何かしらの気づきや安らぎをもたらすことを願っています。
2026.1 制作 仏師 鈴木謙太郎
高さ70㎝
青面金剛像 修復完了のご報告と新年のご挨拶🌅

新しい年の光が、静かに工房の窓辺を照らし始めました。皆様におかれましては、健やかに佳き年を迎えられたことと存じます。旧年中のご厚情に深く感謝申し上げます。
年の初めに、ひとつの節目として、青面金剛像の修復が無事に完了いたしました。
公開は出来ませんが裏面に制作者の名が入っている岩座と框の接合部分を強化し
光背の付け根は、傷を抱えて取り付けが出来なくなっていました。その部分を丁寧に補修し、
失われていた持物は資料を頼りに一つひとつ形にしていきました。
とれていた腕は、慎重に再接着し、剥がれていた彩色は、かつての色味を再現しながら筆を重ねました。
青面金剛の眼差しは、怒りの中にも慈悲を宿し、私たちの内なる混乱を鎮める力を秘めています。
その存在が、再び人々の前に立ち、静かに語りかけてくれることでしょう
本年も、仏像を通じて心の奥に届くものづくりを続けてまいります。皆様の一年が、穏やかで力強いものとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。
修復前
年末の気配が深まるこの頃、
仁王像の修復を無事に終えることができました。今回ご依頼いただいた像は、
長年堂内に安置されてきた中で、腕部の欠損をはじめとする経年の傷みが見られました。
欠損部分の接合し仁王像特有の緊張感を損なわぬよう、細部の調整には特に時間をかけています。
完成した像は本来持つ「畏怖」と「守護」の気配が再び立ち上がるようかのようです。
修復という仕事は、単に形を直すだけでなく、像に込められた祈りや地域の記憶を未来へつなぐ営みでもあります。今回の作業を通じて、その重みと喜びを改めて感じました。
本年も多くのご縁に支えられ、心より感謝申し上げます。どうぞ皆さま、穏やかで温かな年末をお迎えください。来る年が健やかで実り多い一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
観音像の修復作業を進めていました。
もともと木地仕上げの像に新たに彩色を仕上げてあり
見た目には新しい観音像です
施主様が大切に守ってこられた仏像であり、その思いに応えるべく、私も一手一手に心を込めて作業に向き合いました。
経年による乾燥収縮や環境変化の影響で
表面に細かな亀裂が生じていました
まず行ったのは、亀裂の状態と深さの確認です
単なる表層の割れか、構造的な影響を及ぼすものかを見極めるた光の角度を変えて観察し、必要に応じて細い探針で内部の状態を確認しました。
中央に亀裂
補修には、像の材質と経年変化を考慮した調合の木粉を用いました。
木粉は同種の木材から採取した微粉末を使用し、
充填後は、乾燥を待ってから慎重に研磨し、周囲と違和感が出ないように整えました。
補彩の際に元の色味や筆致を再現するよう努めました。
彩色後
このような作業は、単なる修復ではなく、像に込められた祈りや時間を尊重する営みです。
木地の状態を見極め、適切な充填材を選び、色味や質感を整える工程は、まるで仏様と対話するような時間でした。
そして先日、無事に修復が完了しました。新たな命を吹き込まれた観音像は、以前にも増して静かな力を湛えているように感じられます。
年の瀬にこうしてひとつの仕事を納められたこと
そして大切な像を未来へと繋ぐお手伝いができたことに、
深い感謝の念を抱いています。
合掌