観音像の修復作業を進めていました。
もともと木地仕上げの像に新たに彩色を仕上げてあり
見た目には新しい観音像です
施主様が大切に守ってこられた仏像であり、その思いに応えるべく、私も一手一手に心を込めて作業に向き合いました。
経年による乾燥収縮や環境変化の影響で
表面に細かな亀裂が生じていました
まず行ったのは、亀裂の状態と深さの確認です
単なる表層の割れか、構造的な影響を及ぼすものかを見極めるた光の角度を変えて観察し、必要に応じて細い探針で内部の状態を確認しました。
中央に亀裂
補修には、像の材質と経年変化を考慮した調合の木粉を用いました。
木粉は同種の木材から採取した微粉末を使用し、
充填後は、乾燥を待ってから慎重に研磨し、周囲と違和感が出ないように整えました。
補彩の際に元の色味や筆致を再現するよう努めました。
彩色後
このような作業は、単なる修復ではなく、像に込められた祈りや時間を尊重する営みです。
木地の状態を見極め、適切な充填材を選び、色味や質感を整える工程は、まるで仏様と対話するような時間でした。
そして先日、無事に修復が完了しました。新たな命を吹き込まれた観音像は、以前にも増して静かな力を湛えているように感じられます。
年の瀬にこうしてひとつの仕事を納められたこと
そして大切な像を未来へと繋ぐお手伝いができたことに、
深い感謝の念を抱いています。
合掌









