やぁ、罪プラはあるか?
マスター:
青春時代はプラモを買っては作っていたが、大人になってからは作る機会が少なくなった。今では、惰性で購入しその日の気分で作っている。製作は、パチ組から軽い塗装までの技量。他者のプラモも見ることが専門になっているのが多い。
神姫:
最近になって購入。購入理由は、既に組まれているフィギュアという観点に興味を持ったから。積まれている箱を見て若干引いたらしい(型は決まっていない。挙げるなら、アーンヴァル型やハウリンといったしっかり者役が適任か)
「んもー。今日で何体のプラモを買ったんですか?!マスターもいい加減にしてください!」
「いやぁ、つい衝動買いしちゃって……」
「ついなら積んでもいいと思っているんですか?」
「そんなつもりは……でも、この衝動を抑えろというのは酷なことだよ」
実際、部屋にはすでにうず高くプラモデルの箱が積み重なっている。
「どうせ、ランナー見て組み立てる気になってるだけでしょう」
「そ、そんなことない・・・よ?」
「目が泳いでますよ」
「うっ、いや、でもさ」
「私も、組むとかならばある程度は許容しますよ?だけど、時間があるときにやる。やる余裕ができたらする。これってただの先送りですよね?」
「それは……」
図星だ。
最近、プラモを買おうと思っていても、いざ買いに行ける時間がないということが多い。
ネット注文をしても、仕事やら何やらで必然的に積みプラが増えてしまっているのだ。
「ただの方便ですよね??」
「う゛」
まさにその通り。
すでに時間はある。やろうと思えばやれる状況ではある。
だが、プラモを作るまでの気力が出ないだけなのだ……
「さて……もうこんなに積みあがってるんですから……この際です!売ります?お部屋も広くできますよ?」
判断が早すぎるというか極刑という選択である。
売ればお金は入るが、なんというか……なんか負けた気がする。
「それはちょっと……」
「えー、なんでですか?」
「いや、なんというかプライドというか……」
すると彼女は、手を当てて何かを考えた後、笑顔で提案した。
「でしたら、マスターの購買意欲の成長曲線グラフを一週間後に提出しますね。そのプライドをしっかり守ってください♪」
「……成長曲線グラフ?」
「はい、成長曲線グラフです。マスターの購買意欲がいつ、どこで、どのような要素で上昇しているのかを予測し計算したものです」
「そんなもの作れるの?」
「はい♪こう見えて神姫ですから」
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そして、一週間後「はい。では、講義を始めますね。マスター?」メガネをいつの間にか装備した彼女が、講義を始めた。
「は、はい」
「まぁ、実際はデータに基づいた説教なので講義という堅苦しいものでもないんですけれど……」
「データに基づく?」
「3分割程に分けました。買った期間から当日まで、当日。その後を」
「なるほど……」さっぱりわからん。だが、小言を受けるのは確定したようだ。
「まず、マスターは新作のプラモ情報は毎日欠かさずチェックしています。特にほしいプラモは履歴がいっぱいです」
「ぐぬぅ……」
よく分からないが、私生活を暴露されたようで恥ずかしい。
「そして、予約当日いの一番にサイトにアクセスして、予約をします。この時は興味を10段階でいえば、10になります。これは非常に重要なポイントです」
あぁ……なんか恥ずかしい。
自分はかなりの行動が筒抜けだったことに顔を赤らめた。
「では第一段階目に入りますね」
あれ?まだスタート段階ですらなかったの?
そんなことを思っているが彼女の講義は続く
「一段階目は。予約ができたことによりテンションも下がりますが、おおよそ8~9といったところです。まぁ、買うまでわくわくするのは良いことです」
「おっ、おう・・・」
「そして、面白いのはここからなんですよね。マスターは数日すると0になります」
「え?0?」
「はい、そうなんです。マスターは、わくわくして買ったけど、仕事やほかのゲームをして忘れてしまうんです。あえて『浮気』と言わせてもらいますね」
「な、なんか言い方に棘がない?」
「気のせいですよ。さて、ここで重要なのはここからです。この0から、数日経つとプラス3になるんです。なぜでしょう」
「さぁ?」
「ヒントは、メールです」
「メール?あぁ、販売の知らせとかか」
「そうです。ここで、浮気していたコンテンツからいったん脱却するんです。そして、プラモのメールを読んで0からプラス3になります。そういえば買っていたのがやっと届くんだーって思って販売日当日にそのままいきます」
「これはもう……楽しみだよね」
「はい、このメールを読んだ時の喜びから、5~6ほどになります」
あれ?少ない気がする。
もっと、喜びで跳ね上がるもんじゃないのか? すると、まるでその疑問に答えるように彼女は言う。
「恐ろしいことに、当日までには半分まで下がってるんですよ」
「えぇ!?」
「そうなんです。この状態から購入するのです。もちろんうれしいのですが、6~7といったあたりです」
このとき、自分の中で何かがわかった気がした。
手元にあることが楽しいんだ。
「そして、購入したプラモのランナーを見て『また今度』と言い、あったテンションが0になって、あのバベルの塔に献上されて行くんです」
指さすプラモのパッケージ。
積んだ罪はあまりに重い。
「な、なんか……ごめん」
「ま、マスターが悪いのではありません。悪いのは自制心がなさすぎるマスターの脳みそですから」
それは遠回しにけなしているのだろうか……「とりあえず、今後プラモ買うときは自分の中に決め事を作ってください。そして、少しでも迷ったら頭の中を整理してください」
「うぅ・・・だけど」
「言いたいことはわかりますよ。その時しか手に入らないものもあるってことですよね?」
その通りだ。
だからこそ、我慢できずに買ってしまうんだ……「だったら、余計に自制心を持たないといけません」
それを言われると……ぐぅの音もでないのだ。
