こんな話がある。

どじょうを空輸すると水槽がゆれて80%が死ぬ。

しかし、なまずを入れると20%は食べられるが、残りは緊張状態で生きているのだ。


つまり、ぬるい組織に厳しい上司がくれば、80%は上司に尻を叩かれながら成果を上げる。20%は成果を上げられないがそれはそれで仕方がないのである。

複雑なものは混沌と安定との狭間にある危うい領域でのみ成立しうると言える。


一方こんな話もある。

働く蟻と働かない蟻の割合が8:2。

働かない蟻を除いて、働く蟻だけにするとみんな働くかというとやはりその割合で働く蟻と働かない蟻に分かれてしまうのだそうだ。



80%の人がよく働けば組織としてOKなのであろう。



仕事には色々な内容があり、面白くやりがいのある仕事もあれば、単調でつまらない仕事もある。

みんなが華やかな仕事をしたいと思っていても、どうしても誰かがつまらない仕事をしなければいけないのである。
従って、効率を求めてできる人間だけで組織を作ろうとするとその中でやる仕事の内容に差が出てきてしまい、結局人間関係を含めうまくいかなくなってしまうのだ。



組織を作る上で、この法則は頭の片隅には置いておきたい。
ネットワークビジネスをしている人から勧誘を受けた。
基本的にビジネスの話は好きなのでねずみ講だと毛嫌いせずに積極的に聞いてみる。


ネットワークビジネスの目的は、

権利収入で不労所得を得よう

ということらしい。そして、

ものを人に売りつけるのではなくて成功するビジネスチャンスを人々に広める

のだそうだ。


自分が紹介して会員にした人以降の会員が購入したものに付随するポイントをそのグループの中で定められたパーセンテージで分配するという仕組みらしい。


そして自分が会員にした人以降のグループの購買ボリュームが膨大になれば、自分と切り離されて、自分が購入しなくてもそのグループが得たポイントの一定パーセンテージを得ることができるようになり、それが権利収入になるということのようだ。


その仕組みで長者がこれだけ出ているとか、デモを交えて商品が如何にいいかという説明も合わせて受けた。



そのデモが本当にフェアで商品が本当にいいかどうかはさておいて・・・


効率的なビジネスとしては考えにくいと感じた。


まず、ものを買うことでしかポイントを得られないということであれば永遠にものを買い続けなければならない。

従って、自分が会員にした人以降のグループが膨大な購買ボリュームになるまでは原則的にはそのグループの収入が支出を上回ることはない。


いわゆるJカーブとなる。


これはベンチャー投資と同様でものすごくリスクが高い。
つまり、ある時点では必ず誰か儲かっていない人が存在するということになるのだ。


やはりビジネスである以上、その事業を行なう人が全員、最初の月から儲かる可能性が欲しい。



唯一そのネットワークビジネスで取り扱う商品が本当にいいと思えるのであればやってもいいのだろう。
事業計画書の内容について質問が多いので目次を記す。

1.会社概要(会社名、住所、設立日、沿革)
2.事業内容(事業毎の概要)
3.収益モデル(各事業における収益の仕組み)
4.技術説明(特筆すべき事業毎技術)
5.競合他社優位性(参入障壁)
6.競合他社比較(同業他社との比較)
7.現状市場環境(各事業における市場規模)
8.市場成長性(第三者機関予測)
9.製品マーケットシェア成長率(成長市場の何%のシェアを獲得するか)
10.ロードマップ(各事業の展開方法)
11.販売戦略(ロードマップ実現の為のアクションプラン)
12.5ヵ年資金繰り表
13.今年度月次資金繰り表
14.5ヵ年利益計画(各年の計画算出根拠)
15.今年度月次利益計画(各月の計画算出根拠)
16.資本政策(収支と資金調達による計画書)
17.資金使途(資金調達する場合の内訳)
18.リスクファクター(リソース、事業、競合などあらゆる観点からリスクとなり得るものの列挙及びそれを回避する為の施策)
19.人員計画(各年の部署毎人員増減-経費との整合性)
20.知財関連(取得したもの及び申請中のもの)
21.契約関連(重要な取引先)
22.株主名簿
23.株価算出根拠(株価の算出方式及びその方式を選択した理由)
投資家が一番気にしなければいけないことは、EXITである。


マネーの虎は投資の話ではあるが、ほとんどの社長がEXITについて触れていない。
これは、社長が投資の素人であるからだが、本来はその部分に質問が集中するべきである。


EXITとは投資したお金をどうやって回収するかということである。
一昔前であれば、IPOと声高に叫ぶこともできたが、現在のマーケット環境ではそんなことを叫んでも誰も見向きもしない。
まして、M&Aなどは一部の企業に限られており、EXITとして成熟しているとは言い難い。


しかし、エンジェル投資は必ずしもリターンだけを追及するわけではない。



起業家の心意気が買われれば、失敗してもいいからこの人物に成長する場を与えてやりたいと投資するケースも出てこようというものだ。

このケースは正にそうであった。



結果的にはこの投資は失敗に終わったのであるが、エンジェルの投資としては起業家に勇気を与え大変意義があったと思う。
こんなエンジェルが増え、起業家とそんなエンジェルがマッチングできる環境などができるとベンチャーも活性化するだろう。

ベンチャーキャピタル業界がシュリンクしている今こそエンジェル投資の台頭が望まれる。
乞食は三日やったらやめられないと言われるが、どうやら社長もそうらしい。
大変なことも多いが、何しろその会社の中では一番えらいのである。


私が知っている資金調達をしたあと次のようなことをした社長たちも、きっと社長はやっぱりやめられないと思っているだろう。


・年収15百万円から35百万円になった
・坪9,000円から坪30,000円のオフィスに引っ越した
・今まで在庫をもってなかったのに急に大量の在庫をもった
・社長を辞めてもいいと言っていたのに絶対にやめないと言い出した



資金調達というのは、単にキャッシュが入っただけで事業のステージが変わったわけではないのだ。

資金繰りに苦しんでいるときは、弱気になりもう今にも逃げ出しそうだった。
しかし、キャッシュが入ると人が変わる。逆に気持ちが大きくなってしまうようだ。

むしろキャッシュが入ったときこそ締めなければいけないのだ。何しろそのキャッシュは事業を成長させるための原資であり、上記のようなものは何一つ事業を成長させるものではないからだ。

更に言えば、このようなことをするとわかっていたら資金調達は絶対に成立していなかったはずだ。


起業する人は気をつけなければいけない。
少しでも社長をすると見栄が顔をだしてくるのだ。しかしそれをコントロールできる社長でなければ絶対に会社を成功させることはできない。


もちろん上記の社長たちは成功していない。
最近ではグーグルからFacebookやTwitterに人材が流出するケースも増えてきているという。

両社とも上場していないが、時価総額が半端ではない。
Facebookはマイクロソフトが出資したときに150億ドル(1.6兆円)の値がついた。
一方Twitterは10億ドル(9百億円)とも言われている。
共に世界中にユーザをもつマンモスサービスだが、収益的には大赤字と言われている。

2006年、YouTubeがグーグルに16.5億ドル(2千億円)で買収されたときも大赤字であった。(今でも赤字だが)


なぜこのようなことがアメリカで起きるかというとそんな株価でもいいと出資するベンチャーキャピタルや事業会社がいるからである。
ベンチャー企業からすれば売上を気にせず、これだけの資金を使ってユーザ志向のサービスに注力できるので、サービスの質はどんどん向上し、結果として世界中のユーザが集まってくる。


未公開でしかも大赤字の会社にこんな価値をつけて出資する会社が日本にあるかといえば皆無である。
だから、日本からアメリカの会社を凌駕するITサービスが生まれることは絶対に不可能なのである。


その理由はこれだ。

米国のベンチャーキャピタルは自分で事業を立上げ成功を収めた本物のベンチャーキャピタリストの精鋭集団である。
従って、面白いベンチャーがあれば主導権を握り、事業がうまくいかなければバッサバサ切る。しかし、うまくいけば創業者に多くのストックオプションを与えきちんと報いるのである。
創業者はうまくいけば大金持ちとなるし、うまくいかなくて切られてもまた新しいビジネスを考えられる、そういう土壌があるのだ。


もちろん、日本で資金調達をしようとする時当たり前のように取られる個人保証は、アメリカの起業家は絶対にしない。

そんなことをしたら失敗したときに再スタート切れないではないか。
創業者はそんなこと心配せずに出資金を使って思いっきり事業をする。失敗もあるが、だからこそ大成功が次から次へと生まれるのである。


個人保証をとったって失敗する人は失敗するし、成功する人は成功するのである。むしろ個人保証をとられるからと事業を起こさないことによる機会損失の方が日本の未来にはマイナスなのである。
事業計画書は資金調達する上で欠かせない。
投資家からすると出資するかどうかの重要な判断材料になる。

マネーの虎で多くの社長が事業計画を絶賛しながらノーマネーとなった志願者がいる。



この中で社長は、データが素晴らしすぎるがその通りにはいかない、カフェは品数を絞って効率を求めるが品数が多いと効率的ではないなどの理由で出資をしていない。

しかし、データが素晴らしすぎるのはその通りにいかない理由にはならないし、品数が多いのは他のカフェとの差別化要因になる。



もっと言えば、事業計画どおりに行く会社はほとんどない。


計画未達はもちろん計画した収益を上回ってしまう場合も事業計画どおりとは言えないのだ。それだけ収益を上げられることを予測できなかったことにはかわりはない。


それでも、事業計画を作成時点でできるだけ精緻に作り込む必要があるのだ。それは、実績が予算とずれたときに計画が精緻であればあるほど、その要因の分析が詳細にでき、リアクションにつなげていけるからだ。
営業の問題なのか、前提条件が違っていたのか、市場が変化したのか。それによりリアクションの方法が変わってくるのである。

そして事業計画書は何より投資家との約束である。
逆に言えば、事業計画書に書いてあるとおりの戦略で事業を推進してその通りにいかないということは、投資家が事前に承認してしまっているとも言えるのである。

だから、投資家サイドもこのマネーの虎の社長のようなフワフワした適当な質問ではなく、その通り事業を推進できるかという核心をつく質問をして事業計画書をブラッシュアップしていくべきで、投資家の話に耳を傾けて妥当であれば事業計画書をリバイスしても一向に構わないのである。
最近、ベンチャー企業と接触しこんな経験をした。
それは営業代行をする会社だったが、電話でいきなり営業をしてきた。


こういう場合、こちら側に余裕が無い時は会わないが、余裕があればなるべく会うようにしている。
営業だとわかっていても人との縁はどこでどう繋がっていくかわからないからだ。

会社員時代に飛び込み営業を受けた営業マンとは今でも10年来の付き合いを続けて定期的に飲みに行ったりしているが、商売をしたことは一度もない。しかし、お互いに色々な人を紹介して輪が広がっている。


今回営業をしてきたベンチャーの社長は、人当たりもよく好印象だった。
しかし、提案してきた内容が物足りなかった。
明らかに提案書の内容は使いまわしであて名だけを変えているのだ。
それで商談を取ろうとしている。

その考えはちょっと甘いが、まあベンチャーで経験不足だからそんな程度のことは大目に見てそれをそのまま指摘した。
「私の会社はこういう会社だから、それに対して貴社のノウハウを適用したら、弊社の業績がどういう風に上昇するのかを具体的に示して欲しいんですが。この内容だと明らかにあて名変えればどこの会社にも出せますよね?」


すると、

「すいませんでした。来週前半には提案しなおします。そういう風に指摘していただけるのは大変有難いです。」

といたく感動して帰って行った。
しかし、いつまで待てど何の連絡もなく、結局そのまま会うことはなかったのである。

そのベンチャー以外でも同様の結末を迎えるベンチャーからの営業を最近何度か経験した。


結局、提案能力が著しく低いのだろう。

若いベンチャーは大企業の社員と比べて教育も十分に受けていなく、顧客に怒られて育つ経験もしていないケースが多い。大企業の社員はどんなにいやな客だと思っても逃げられない。会社への報告義務があるし、別の部署で取引があるかもしれないからである。
だから、若いベンチャーが提案できないのは仕方がなく、正直に提案できない旨を営業した会社に言ったほうがいいのだ。
しかし、言うと能力のない会社と思われるのがいやなのか、もう会わないからとそのままドロンしてしまう。


これは大きな間違いである。


こういう不義理を続けていると必ず回りまわってくるのである。
そのベンチャーが進めている商談があっても、その商談を受けている会社の社長が、

「今度、営業でこういう会社を使おうと思ってるんだよ。」

と別の会社の社長に喋ったりしたときに、

「あ、その会社っていい加減で有名なところでしょ。うちに来たときに・・・」

ということになってしまうのである。



もし資金調達をしようとしても、デューデリジェンスで評判は筒抜けになってしまうから要注意だ。


今からでも遅くない。
今までそんな会社だったとしても、これから気をつければいいのだ。
何年か前にマネーの虎という番組があった。
事業のアイデアを持った人がお金を机の前に積んだ5人の社長の前でプレゼンテーションし、
内容を気に入った社長が自分の出してもいいお金を積み上げていき、
その合計金額が志願者の希望額に到達すれば「マネー成立」となる。


志願者の事業の甘さが社長たちの突っ込みのネタとなり、志願者が社長から怒られたり、社長同士でいい争いしたりという臨場感が人気だった番組だ。

起業を目指している人であれば多くの人が見ていたに違いない。


この中で時々何人かの社長から、

「投資されたお金をなくしたら死ねるか云々」というコメントが聞かれた。

この志願者も言われている。




こういうことが放送されると

「ああ、お金を出資してもらうというのは命をかけなきゃいけないんだ。」

と思ってしまった人もいるに違いない。
この番組に出演していた社長はこの時点では事業に成功していたが、投資は全くの素人であったためにこのような発言が横行していたように思う。

なぜ、命をかけて出資を受けなければいけないのか。

そもそも投資とは、会社が発行する株を投資家が買うことである。
未公開の株は会社が株価を決める。
その株価が割高だと思えば投資家は出資しないし、割安だと思えば出資する。

ただ、それだけの話なのだ。

会社が立ち行かなくなるということは、株の価値が出資時より下がり、投資家が損をするということだ。経営者が命をかける必要など全く無いし、返す必要もない。


リスクがあるから投資なのだ。損失補てんのあるベンチャー投資など聞いたことがない。そのリスクを認識していないのであれば投資などしてはいけない。
従ってこの場にいるということは、そういう前提を踏まえている必要があるのだ。
志願者の中に社長の投資に対する間違った認識を指摘する人がいなかったのは残念であった。


だから、ベンチャーキャピタルなどは非常に怖い存在だと思う人も多いと思うが、
きちんと付き合えば決して怖い存在ではないし、どんどん積極的に出資を受けたほうがよい。
(投資環境の動向や出資比率など気をつけなければいけない点はあるが)

正しい投資の認識をもった会社と投資家が増えれば、有効な資金調達がもっと増え、
ひいては有望な成長企業の創出につながる。
起業した人の本などを読むと大体

「起業はすばらしい」とか「大変だけど充実感がある」

というような内容で、自分もそんな気持ちを味わいたいと思う人も多いだろう。
確かにそのとおりなのだが、その人と同じように成功すると思ってはいけない。


その本に書いてあるのは、その人だからそうなった訳で他の人にはほとんど活用できる話はない。
だから、擬似起業体験をするぐらいの感覚で読まないといけない。


実際に起業すると色々わかることがある。
いや、起業しないとわからないだろう。


今いる会社がいい会社であればあるほど会社を辞めたら付き合いがなくなる人がでてきたり、
綿密に立てた事業計画についても絶対にそのとおりにいかなかったり。

しかし、逆に起業したからこそ付き合える人も必ずでてくるし、
事業計画どおりに行かないからこそ意外なところからビジネスにつながったりする。

だから起業は面白いのである。
起業しないまま終わるのは、寿司を食べずに死ぬのと同じぐらいもったいない。(寿司が嫌いな人もいるかもしれないが)


最後に一つ断っておく。事業計画どおりには絶対にいかないといったが、だからといって起業するときに事業計画を作らなくていいといっているわけではない。
絶対そのとおりにいかないのに事業計画を作らなければいけない訳はなんだろうか。

それはその事業に対する自分の考えをきちんと把握しておくということと計画と実際がどの程度違うかの尺度として使う必要があるということだ。
そうすれば、色々と発生する不測の事態に冷静に対処することができる。


起業家はアクションよりもリアクションが大事なのである。