昨年読んだ書籍の中で、とても刺激的だったものがある。
それは、『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹)だ。

この書籍、子育て中の親や子供を指導している教育者の方に是非読んで欲しい。常識が根底から引っ繰り返される。


本書の第1章「それは本当に反省ですか?」にある一文を紹介する。

― 引用 ―

・自分が起こした問題行動が明るみに出たときに最初に思うことは、反省ではありません。事件の発覚直後に反省すること自体が、人間の心理として不自然なのです。もし、犯罪者が反省の言葉を述べたとしたら、疑わないといけません。

・今の日本の裁判では、「反省していること」が量刑に影響を与えるのはなぜなのか私には理解できません。大半の被告人は裁判でウソをつくのです。

・ただ一つ、被告人が本当に反省しているかどうかを見分ける方法があります。それは、量刑が出た後に、被告人が控訴するか、量刑をそのまま受け入れて控訴しないかです。

― 引用終わり ―


悪事がバレたとき、人がはじめにするのは、反省ではなく後悔。
人は、後悔というステップを経から反省をする。これは自然な心の動きだ。しかし、後悔する間を与えず、「反省」を強要されると、人は“上辺だけの反省”をしてしまい、心から反省する機を失う。下手をすれば、一生涯、反省する機に恵まれなくなる。
3章に、こんな一文があった。「本来受刑者は自分の犯した罪に対して、心から反省し、更生することを目標とすべきです。しかし残念なことに、現実は異なります。大半の受刑者は反省していません。」と。

被告人が後悔や保身に関わる言葉を述べれば、世間は「反省していない」と批判される。被告人は素直な気持ちを吐露しているだけであり、自然な心の動きなのだ。むしろ、はじめから反省の弁を述べている被告人のほうがタチが悪い。偽りの言葉を並べて、刑を軽くする算段でいるからだ。だが、日本人はその嘘の弁を聴いて、酌量しようと考える。本来はこう言うべきだ「もっと後悔しろ」と。
人の心は誰にも分からない。ならば、嘘でも量刑が軽くなるよう、嘘でも反省の弁を述べようとするのも、また人の自然な心なのだろう。


この話は犯罪に限らず、子育てや教育指導にも応用できる。
考えてみれば、日本は「反省の文化」とも言える。反省が大好きだ。何かあれば「反省しろ」と言う。

私は以前から、「反省」という文化に違和感があった。
人に注意を促す際、「反省しなくていいから改善しろ」と言っていた。そのこころは、本当に反省しているかどうか誰にも分からないからだ。それよりも、同じ過ちが起きないことが重要なため、「反省してもしなくてもいいから同じ過ちは起こすな。そのために、具体的な改善策を考えろ」としていた。


少し脱線したが、本書の目次を紹介しよう。

1章 それは本当に反省ですか?
2章 「反省分」は抑制を生む危ない方法
3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
5章 我が子と自分を犯罪者にしないために

著者は、刑務所での累犯受刑者の更生支援にも関わっている専門家だ。言葉に説得力がある。ぜひ、多くの人に読んで欲しい書籍である。