前田又左衛門利家也。



名古屋城へ登城せし皆々よ。

大儀ぞ。



尾張名古屋の桜はちと早く咲き始め、東別院は既に満開と鉄籠の担ぎ手が申して居った。

御屋形様〔信長様〕は春の訪れを感ずる時の香りが好きじゃ。と仰有られた。

拙者、犬めも恐縮乍〔ながら〕四季折々の香りが好きで御座いまする。

特に秋の深まる季節。鼻の奥に差すような香りと申すか匂いを嗅ぐと、ふと気張って参ろうと思うのじゃ。

皆も知らず知らずに匂いに思い出が在る筈じゃ。

大事な者が好いて居る匂いをそっと届けたれば、其方等の優しさが必ずや伝わる筈。

儂も未だ若き頃、綺麗な着物も買えぬ故、せめてもの心配りで妻 まつ に野辺に咲く花を贈った事が在る。

其の思い出は、互いに頭が白く成ってからも時々まつは嬉しそうに話して居った。

一輪の花でも、他人の為と使いし刻は必ず相手に届くもの。

皆の衆。

文を忝ない〔かたじけない〕。

其方等が使いし刻も丸ごと貰い受けて居る故、案ずるで無いぞ。


我が故郷。尾張名古屋の誇る美味成るなごやめしを堪能致し、最後迄、尾張名古屋で過ごす時を満喫致せ。



名古屋おもてなし武将隊 一番槍
前田又左衛門利家