前田又左衛門利家也。



名古屋城へ登城せし皆々よ。

大儀ぞ。


激動の最中に在っても、人の温もりは忘れては為らぬ。

身近に居る者を大事に致さねば為らぬ。

人は一人では生きては行けぬ。

此の当たり前の事が、若き日の儂には解らず〔わからず〕に居た。

人なぞは信用して成るものかと思うて居った。

然れど〔されど〕、我が人生で幾度周りの者に助けられたか。

数えきれぬ。


親子、兄弟でさえ裏切り争う動乱の世に在っても、我が前田家は、我が兄上や弟は、当主と成った至らぬ儂を支えてくれた。

齢近い安勝の兄様〔あにさま〕とは、よう酒を酌み交わし、誰にも申せぬ男の愚痴を快く受け止めてくれた。

病で酒を禁じられても隠れて酒を飲む様な憎めぬ兄上で在った。


故にこそ、身近に居る者を大事に致したい。

此の現世に蘇り、身近に居る者。

其れは、我等に逢いに参る客人の皆々じゃ。

一見の者も常連の者も、すべからく息災無事で愉しみ勇める人生の一刻を共に致したいと心より思う。

集いし皆よ。誠、忝ない〔かたじけない〕。



改めて申すが、我等に逢いに参れずとも、我等を応援致す者が此の世に存在致す。

此の事が、何れ程心強いか。

言葉を飛ばさずとも、想いは届いて居るぞ。

故にこそ、死ぬなよ。

皆が生きて居るだけで、我等が明日を戦う活力と成る。

我等は皆に此の恩を返したい。

本来、もてなす側の我等が気付けば随分皆にもてなされた。

来る〔きたる〕其の日迄。

全力で皆の活力と成るべく駆け抜けようぞ。



名古屋城には本日も、久しき者が仰山訪れた。

齢四つの小さき姫君は恥じらいを覚え口数少なく照れて居ったが、否、元々照れ屋な方では在ったが、少し身長が伸び髪も伸びて益々美しき姫君と成った。

儂の事を覚えて居るか。と訊ねた時にこくりと頷く姿が懐かしく、嬉しく思うた。

名古屋城の梅の花も今が見頃じゃな。

あられの如き蕾も今では控え目に美しく咲き誇る。

客人は申す。

梅の花。私には〔ポップコーン〕に見えました。

蕾が開く其の姿。正しく〔まさしく〕其の通り。

故に、〔ポップコーン〕の武士語は梅弾け菓子と名付けよう。


さぁ、此の後は電波放送戦。

CBCラジオ〔名古屋おもてなし武将隊 戦国音絵巻〕

皆の衆。

聞き逃すで無いぞ。



名古屋おもてなし武将隊 一番槍
前田又左衛門利家