前田又左衛門利家也。



名古屋城へ登城せし皆々、大儀ぞ。


春よのぅ。

梅の花も朝から夕には綻び〔ほころび〕、何か前向きな気持ちにさせられる一日で在った。

春の陽射しに微睡む〔まどろむ〕刻も又、心地よい。

御屋形様〔信長様〕も御機嫌麗しく、秀吉と儂は胸を撫で下ろす。

愉しき刻は過ぎ行くのも又、早し。



秘密。秘密。何が秘密。其れすら秘密。



小さき童は今日も今日とて万人を和ませる。

親は裏も表も世話をせねば為らぬが故に和むばかりでは済まされぬが、我等も小さき童に負けては居れぬと強く思うた。

心の誇りは我が身の埃。

誇りで勝負致しても勝てぬ。

誇りと勝負致さねば勝てぬ。



努努〔ゆめゆめ〕、忘れるで無いぞ。



儂が申すも何だが、此度の秀吉はなかなかに良い。

身内を褒めるは性に合わぬが、真実為れば致し方無し。

期待致して待つがよい。


儂が上から物申した事を知れば、秀吉と又、喧嘩に成るやもしれぬ。

犬猿の仲と云う言葉は多分、我等から生まれし言葉で在ろう。



皆の衆。



秘密。秘密。何が秘密。其れすら秘密。



努努、忘れるで無いぞ。



名古屋おもてなし武将隊 一番槍
前田又左衛門利家