前田又左衛門利家也。
名古屋城へ登城せし皆々、大儀ぞ。
信じる事が最も難儀で在りし我等が時代、最期迄人の誠を信じた男が居た。
其の男は申す。
儂が信じねば、誰が人を信じると申すか。
嘘と建前で塗り固められた武士の生き様は如何とも形容致し難く、若き日の男は此の世に憤怒致す。
然れど〔されど〕、此の男も又、短くも永き人生の中で出逢うのじゃ。
嘘も建前も通らぬ御方に。
其の男は申す。
少しは人を疑えと人は申す。然れども儂は、人の疑い方を知らぬ。嘘や建前が分からぬのじゃ。
出逢いし御方は其の男の不器用な迄の生き様を御気に召し、人には申せぬ事も其の男にだけは打ち明けた。
其の御方は申す。
御前は出世せぬぞ。生涯、儂の傍に置くからな。
他の者が臆して申せぬ事も其の男は申し、其の御方は半ば怒りを覚え乍〔ながら〕も半ば嬉しく思うたそうじゃ。
嘘も建前も分からぬ男は己が居場所が在りし事を心底歓び感謝致した。
時は流れ、男は其の御方と別れる事と成る。
いつの日にか、己が道を成した時迄決して逢わぬ事を約束致して。
其れ迄は、決して逢わぬ事。
其れが、何物にも勝る確かな絆で在った。
来る〔きたる〕三月九日、十日、十一日。
我等が大戦。
名古屋能楽堂にて開戦。
皆の者、尾張名古屋にいざ集え。
本日も名古屋城にて嬉しき出逢いが在った。
昨年、十月。
未だ小さき女子が口も達者に成りて儂に逢いに参った。
母上の申す事を確と〔しかと〕聞くのじゃぞ。
と申せば、
母上ってお母さんのこと。
と聞く。
左様。お母さんの事じゃ。
お母さんってこの まま のこと。
左様。左様。
左様ってそうってこと。
そうじゃ。そうじゃ。
小さき姫君との会話は此の世の平和を身に沁みて感ずるもの。
善哉〔よきかな〕。善哉。
他にも昨年、本丸御殿の前で出逢いし者と再び出逢うた。
彼の時〔あのとき〕、車寄の御話を御聞かせ下さった御陰で皆様に興味を持ち、今では名古屋城へ度々参る様に成りました。
嬉しきものよのぅ。
皆との出逢いが確実に紡がれて居る事を実感致せるは此れ、至極の歓びで在る。
久しき者に仰山出逢いし一日。
皆に感謝致す。
若武者の如き頭髪の者を取り巻く助け合いの一幕も在り、人間捨てた物では無き事と客人の皆々に教えられた。
明日は我等が演武〔パフォーマンス〕日和。
午前十一時、午後二時半と日に二回の予定。
愉しみ勇めや皆の衆。
名古屋城にて相見えん〔あいまみえん〕。
名古屋おもてなし武将隊 一番槍
前田又左衛門利家