目釘





 ここのところ御刀を用いた犯罪が件数としては着実に増えてきているという話を聞きました。
 哀しい事です。

 御刀は神事に用いたりするなど神聖なモノとして扱われて参りました。

 現代の日本で御刀で人を傷つけたりすとはもってのほかです。
 
 また、刀剣ブームと博物館に人が押し寄せたりして何やら騒いでいるようですが、
 武士の魂である御刀をおいそれとさわってよいはずもありません。博物館でも騒いでよいものでも
 ありません。刀剣鑑賞やその扱いかたにはしっかりと定式があります。(御刀の扱いについては
 先にお話し致しまたこちらをご参考にしていただければと思います。)

 そのあたりの事ももう少しお勉強なさってから御刀と相対して頂きたいものです。

 
 さて、今回は以前に目釘についてのお話を書いて下さいとのメッセージを頂きましたので久々にブログを
 更新致しました。ご参考にまでして頂ければとおもいます。

 竹の詳しい話は下記のバンブージャパンの方が詳しいかと思います。
 

 


●材質

 目釘は竹でできています。稀には金属でできたものがありますが一般的なものではありません。

 短刀や兵庫鎖太刀のように金属箔でくるんだ拵えでは金属の鋲を両方から差し込んだり、
 ねじでとめるものもあります。この場合目釘と言わず目抜き(目貫)とよんでいます。




鉄目釘



〇金属で出来た目釘





●種類

 大別すると三種類あります。






 真竹(まだけ)

  すべての面で目釘として優れています。弓、矢、扇子、傘、提灯の材料に使われます。
  皮に黒い斑点が在ります。


 淡竹(はちく)

  真竹とほぼ同じです。耐寒性に強く札幌近くでも栽培できます。
  繊維が細く細やかに割れるので茶筅の材料によく使われます。火であぶると硬化するので
  竹槍として保護されました。北日本の家屋に多用され、いぶし竹はほぼ淡竹といわれています。
  燃やすと破裂音が大きく「破竹」とも書きます。
  神事には淡竹をよく用います。これは最後まで燃やすと完全燃焼するからです。
  真竹はブスブスと燃えるので用いません。


 孟宗竹

  中国原産の巨大な竹です。江戸中期に琉球経由で島津公が移植。
  建築材や細工用によく使われます。現在は竹炭などに活用されています。
  食用としても好まれます。


●性質
  竹や木は火に掛けると硬化する性質があります。釣竿や矢は火に掛けて曲がりを直す『矯め(た
  め)』によって強度が増します。

  竹釘は釜で蒸し焼きにして硬度を高め材料に打ちこみ易くします。
  竹槍は用いる前に火であぶって硬度をあげます。自然乾燥によって粘りがよくでます。
  高級竹刀などは野外で半年間乾燥させます。弓は自然乾燥と燻し竹の二種類を張り合わせます。
  反発力がいる内側に燻し竹を用います。


●目釘竹
  京都の石清水八幡宮の目釘竹が江戸時代に珍重されました。
  真竹の産地と武士の守護神としての取り合わせが武士に好まれました。

  【窪田清音の「刀装記」に、目釘は竹に限るべし。
   竹は3~5年を経た南表の日向に生えたものの土際より3寸程上から1尺までの日向の
   ほうを用いるべし。竹林の中に生えたるは柔らにして悪し、竹は太く厚きものを選ぶべし。
   作り方は、皮を薄く去り、肉をとって丸く削り肉の形を無きように削る。
   目釘の打ち方は皮の方を刃の方に向けて打つべし。目釘は一つでよいが中心の短い物は二箇所
   打つべし。強く物にあたる時は刃方の中心先が破れることがあるので用心が必要である。
   
   また、目釘穴は柄中央より鍔元に寄るほうが良い。古代は中央であったが建武の後より
   その悪さがわかって刃区の方に寄った・・・(ほぼ原文)】

   〈窪田清音田宮流長巻の名人、刀工源清磨の支援で長巻剣法伝授の著書がある〉


●目釘の事故
 刀身脱落の大半が目釘の抜け落ちです。柄の中に目釘が残存している場合は刀身が抜けること 
 は稀です。

 目釘の折れる原因は垂直落下が殆んどです。粘りの無くなった竹はた易く折れてしまいます。
 刀をたてかける時は柄を下にする配慮が必要です。しかし、たてかけるよりも寝かせておく方が
 安全でしょう。

 目釘穴は柄木の弾力が無くなれば広がるので振動で目釘が抜けます。金属製の目釘が不適なのは
 この理由によるものです。柄木と竹は相性がよく、目釘穴に密着するので脱落しにくいのです。


●目釘の手入れ
 良質の竹(高級竹刀は目釘の要素を満たしているので材料としては良い)を自分で削ることから
 はじめます。
 竹の強化法には、椿油で拭く、柿渋に浸ける等があります。注意すべき点は竹の生命を損なわない
 こと、繊維の弾力を失わせないことです。油で揚げるなどと聞いたことがありますが最も避ける
 べきことです。

 菜種油と椿油は前者が乾性で後者が不乾性です。乾性はガム化するが不乾性はいつまでもサラサラ
 しているので刀油に使われます。弓の手入れも椿油で行います。
 松脂と菜種油を煮込んだ物を「くすね」といいます。ともに硬化する性質ですので接着剤として 
 用います。柄糸の裏などに塗ります。
 弓の弦に塗って糸をまとめて切れない様にもします。時間の経過と共に硬化しますが摩擦熱で軟化
 します。戦闘準備の「手薬煉引く」の語源です。



 以上つらつらと書きましたが、目釘についてはまだ色々お話があります。また機会が
 ありましたら書かせて頂きます。
 

 
  参考資料 一般社団法人 真傳居合道連盟 資料



稽古会HP(仮)https://www.facebook.com/shinkage.reihou



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