よっちゃんは肉にも目を向けずにビールの
星のマークを見つめたままだ。
彼は少々踏み込み過ぎたと感じ、あの〜…
肉、持って来ましょうか?
返事も聞かずにラム肉を寄そっていると
三人組の1人が話し掛けてきた。
あのカブの親玉みたいなバイクはヤマハ
ですよね?旧車はいいですよねぇ〜!
そうなんですよw 実はあの風防も
ニーシールドもカブのものなんですよw
カブの様な見た目はダサいバイクでも、
意外とよく見ると綺麗なフォルムなんです。
なので、私のバイクも現在はとっつぁん
バイクではあるけど、塗装やシートや
タイヤを変えるだけでもかなり印象が
変わるんですよ(´◡`๑)
あぁ〜‼︎確かに言われてみればカスタマイズ
し易いですよね⁈ビジネスバイクは侮れない
ですねw
その様子を見ていたマー君が彼の皿に手を
出して寄越せと言わんばかりの形相だ。
彼はハッと思ったと同時にまさかマー君が
食べるのか⁈という疑念を抱いたが、
私が持って行きますから大丈夫ですよ。
よっちゃんの元へ皿を渡し、あの蟹は
労働報酬なんですか?w
…まあ…そんなもんだね。昔なら百円
ライターを持ってロシリコ船(ロシア船)の
ところへ行ってかざすと蟹一杯と交換
出来たんだよ。煙草なら二杯は貰えるよw
へぇ〜⁉︎それぐらい貴重なもんやったん
ですね…。話を逸らされたがよっちゃんは
確実に無断で蟹をくすねている。
三人組が庭から敷地の扉の辺りへ群がり、
誰かと話している。彼は気になって様子を
見に行った。暗くて良くは見えないが銭湯の
帰り道で見た時の車に似ている。ドライバーは
三人組に誰かの名前を伝えているが、三人組は
全く心当たりが無く、ちょ、ちょっ、ちょっと
待ってて下さいね!と中へ戻ってドライバー
から聞いた名前を皆に聞いた。
河合義雄さんという方を探しているそうなん
ですが、どなたかご存知の方は居ませんか?
彼はドライバーに話し掛けようと運転席を
見ると、あぁっ‼︎サロベツ原野で会いました
よねぇ⁉︎とよほど久しぶりに会った知人かの
様なはしゃぎっぷりで再会を喜んだ。
お兄さんが探していたのんて人やったん?
は…はい。色々痕跡を辿ったのですが、
夏だと北海道に居るかもしれないと聞いた
ので、稚内に来ました。
で?何で探し回ってるん?
お母さんが病気で長くはないので、私に
初めて父親の名前を聞かせてもらったんです。
幼過ぎて父親の印象も全く覚えてないけど、
名前を聞かせてもらったのでそれを頼りに
沖縄の知人に聞いて廻ったら手掛かりがあって
夏は北海道に居る筈だと…。
名前は?
河合義雄といいます。
ありふれた名前やなぁ…そら、中々見つかれ
へんのんちゃうかな。と同時になんとなく
似た様な生活をしているよっちゃんなら何か
知ってるかもとよっちゃんの居る方を見たが
姿が無い。三人組が帰って来て、義雄さん
なら居るけども河合じゃなくて上地だって。
力になれなくてごめんなさい…。
ドライバーの若者は何かに気付いたのか一点を
見つめたと思ったら急に運転席を飛び出して
その義雄さんはどの人ですか⁈と血相を変えて
三人組の1人の両肩を揺さぶり、彼等は呆気に
取られている。若者はハウス内へ駆け込み、
お父さん‼︎貴方は義雄さんですよね⁈
上地夏奈を知っていますよね⁈
皆もハウスへ駆け寄って、窓から二人の様子を
見守っていた。
マー君が若者に制して割って入り、人違いだよ
なぁ?よっちゃん。
…。
固唾を飲んで皆が見守っている。
おやっさんが静寂を破って一言呟いた。
もう…いいんじゃないか?
よっちゃん、もう帰りなよ!で?念の為に
聴くが、君の名前は何ていうんだ?
つづく