松本 淳, 伊沢 正名
粘菌―驚くべき生命力の謎


南方 熊楠, 小林 義雄, 萩原 博光
南方熊楠 菌類彩色図譜百選
 山道を歩いていると落ち葉の陰や、朽ちた倒木などにキノコの目立つ季節になった。「熊でないよな?」なんてちょっと不安になりながらも、キノコの不思議な造形に見とれてたりする。
 倒木の皮の下には極彩色の粘菌の変形体もいたりする。そのけばけばしい色彩は紅葉の秋の森にも負けない。アメーバとして鞭毛を使い捕食行動をする粘菌は動物のような一面をもちながらも、事実、雌雄の性差がある、変形体となりまるでうごめく巨大な単細胞生物のようになり、おそるべく知能で捕食活動をするかと思うと、やがてキノコのように傘をもたげ周囲に胞子を撒き散らし繁殖するという植物のような一面を持ち合わせる。そしてその変形体の異質さは、その極彩色な色合いにとどまらず、その知性を帯びたかのような行動にもある。人為的に迷路を作り迷路のゴールに餌を置くと、実験を繰り返すうちに迷路の最短コースを学習するそれはまさに『風の谷のナウシカ』に出てくるような、感情を持った生き物のように思えてくる。
 熊野の森でそんな粘菌の不思議に打たれた南方熊楠は、直筆で多くの菌類のスケッチを描いている。『南方熊楠菌類図譜』にはそうした美しい菌類の姿が描かれている。変形体の写真が多く載せられた『粘菌』とあわせて菌類の摩訶不思議な世界に浸るのも悪くない。


里山で見つけたキツネノエフデ