松尾 由美
九月の恋と出会うまで
向田 邦子
隣りの女 (文春文庫 (277‐4))
 向田邦子の『隣の女』はアパートの隣室に住む女のミシンの音から、想像が膨らんでく人妻の艶やかな不倫を描いた作品であるが、松尾由美の『九月の恋と出会うまでは』不思議なアパート(入居に面接があり、芸術家が多く住む)の隣室から、エアコンの孔を通じて聞こえてくる不思議な声をめぐる物語だ。「シラノ」と名乗るその声の主に従い、隣室の住人を尾行することになったのだが・・・
 物語は時間を遡及するようなSF風な展開を見せながらもクライマックスのさわやかな恋愛への予感は、これが優れた恋の物語になっている証左。秋のさわやかな風に吹かれて読むのがお勧め。