郊外都市の湖畔に一人の男が降立った。そばには素朴な女。湖畔で静かな生活をのぞむ男であったが、その眼は油断なく構え、心の休まる時はなかった。愛する女の死をきっかけに次々と明らかにされる男の過去。ありがちなハードボイルド小説の設定だが、本作がデビュー作となる著者の確かな筆力は、ハードな中にも繊細さと美しさが溢れ、ラストの湖畔の輝きの中に漕ぎいでる男の姿は感動を呼ぶ。第10回日本ミステリー大賞受賞の傑作ミステリだ。



海野 碧
水上のパッサカリア