今日、コブシの花が咲きました。駐車場の脇に一本だけあるコブシの花が咲きました。そのコブシの木の下に行って、確かに3輪のその白い花弁を仰ぎ見ていたら、都塵にまみれた空が何時もより、静謐に感じられて、何とはなしに、中也の『春日狂想』を思い出した。
 愛するものが死んだ時には、
 自殺しなけあなりません
 愛するものが死んだ時には、 
 それより他に、方法がない。
 けれどもそれでも業(?)が深くて、
 なほもながらふことともなったなら、
 奉仕の気持ちに、なることなんです。
 奉仕の気持ちに、なることなんです。
という、有名なフレーズで始まるそれを。そして詩中のイロニーに似通った、憂鬱にやや苦々しながらも、
 つまり、我等に欠けてるものは、
 実直なんぞと、心得まして。
 ハイ、ではみなさん、ハイ、ご一緒に-
 テムポ正しく、握手をしませう。
との、最後のフレーズに、コブシを仰ぎ見るのをやめ、ややニヤニヤしながら、職場に向かうため、車に乗り込んだ。



中原 中也, 大岡 昇平
中原中也詩集