恋愛小説に料理が出てくるのは、珍しくはない。それは香の物のようにストーリーにピリッとした色を添える。が、この小説に出てくる料理はちと変わっている。ヤモリの姿焼きに、ポテトサラダ、カレーうどんにバターぶかっけ飯。うーん、華やかな恋を描くには、なんとも無骨、野暮な面々だ。その「B級グルメ」を平安寿子の描く女性たちはぺろっと平らげる。それどころか、臆面もなく大好きなんだーみたいに言ってのける。うへー参った。飾り気のないガチンコ恋愛パワーに、気の弱いおじさんは「ごちそうさま!」と肩を丸めて帰路をとぼとぼ行くしかない。カレーうどんで、てかてか光る唇をなめながら、触手は次の恋愛対象を物色中。怖い。昨今の女性の強さを描いた秀作です。

 そのうち、おじさんの聖域、立ち飲み屋にいったら、中はうら若い女性でいっぱい、なんて日がくるかもね。

平 安寿子
恋はさじ加減