「ものごとが、みえすぎる、感じすぎるというのは、これは、まあ、不幸、と言えば不幸であるかも知れんな。人間はある意味じゃ鈍感だからやっていけるんだろう。だからこそ社会というものが成り立っていけるんだろうと思う。みえすぎる目で眺めてみると、この社会なんてのは欺瞞のカタマリなのかも知れない。不可解でやりきれないものの巨大なカタマリなのかも知れないな。それを感じてしまう心は、不幸だろうな」
「・・・・・・まぁ、アレじゃねえか。人間はよ、多かれ少なかれ、カナシイ思いをする為に生きているんじゃねえのか」
「・・・・・・人間はよ、カナシクなるほどに、色んな事に気がつくものさ。カナシクなりゃなるほど、色んなものがみえて来もする。日が暮れるにつれて星の光にふと気づく様なのかも知れないな。-星は、いつだって空にあるんだけどよ、明るいうちは見たくたって、見えやしないのさ。-まぁ、星に興味の無い奴は、ずっと陽の当たるところに居ればいいがよ、だけど人間は、もしかしたら、星を目にするために生まれてきたんじゃないのかな。」
「そう。・・・・・・あのひとは、環境に適した生き物じゃ無いのよ。この人間社会で上手くやっていけるような体質じゃ無いの。陸の魚。放っとけば。死ぬわ。」
不器用で、哀しみに打ちひしがれた人は、より人の哀しみに寄り添うことに巧い。辻内智貴の主人公「セイジ」が両親を目の前で惨殺された少女の前でとった行動は?「竜二」が病床の母からもらった最後の言葉とは?愚直でストレートな飾り気のない文章は息苦しいまでに胸を打ちます。久しぶりに泣きました。辻内智貴の渾身のストレート。ダウン必至です。
- 辻内 智貴
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