ビートルズ最後の傑作, Abbey Road。最後のアルバムは実質的にLet It Beとされることが多いが, アルバムとしての完成度がまったく違うのであくまで「最後の傑作」と呼ぶことにする。
Abbey Road最後のメドレーは今もポールのコンサートで毎回最後に演奏され, ビートルズの終わり, このコンサートの終わりを実感させられ涙する人も多い。
その中の2曲について少し話したい。Golden SlumbersとCarry That Weightだ。

気に入ってるPhil Collinsのカバーをぜひ。
https://youtu.be/SgoQ1gi_7i0

Golden Slumbersは伊坂幸太郎の本のタイトルにもなっており, 聞き覚えのある人が多いのではないだろうか。直訳すると「黄金の眠り」
冒頭の歌詞は

〈かつては帰る家があった。
かつては自分の居場所に帰るべき道があった。愛しい君よ, 今はおやすみ。泣かないで。僕が子守唄を歌うから。〉

そこからはマザーグースの子守唄からそのまま引用したような歌詞でこの曲は終わり, 次の曲Carry That Weightに続く。
〈君はそのWeight(重荷)をこれから先, ずっと背負っていくんだ。〉

このCarry That Weightは, Golden Slumbersで愛しい人を亡くした人に向けられた歌詞だと感じられる。

単純に聴くと, このWeightとは悲しみであり, 寂寥感, 孤独感であるとしか受け取れない。そんなお先真っ暗な解釈はしたくないので, 英英辞典でWeightを調べてみた。
Weight(重心)を説明した英語をそのまま日本語にすると
「もしWeightを変えれば, 体勢を変えることになり, 体の一部の圧力が別の箇所に移る。」
とあり, 読んだ瞬間少し違う解釈ができることに気づいた。
Weightは人を亡くしたことに対する悲しみだけでなく, 故人が背負ってきた重荷でもあるのだ。
人が長時間立つ時に右足と左足を交互に休める姿を想像すると理解しやすい。
長年, 体を支えてきた右足(故人)に変わって左足(遺された人)が支える番が訪れたのだ。


ポールがこの曲を書いた時の年齢は僕と同じ27歳。
今もただの音楽好きなただのオジサンのように振る舞うポールだが, 若い時からいかに人生を達観していたかが分かるのが, Abbey Roadメドレーの最大の魅力になっていると僕は思う。
Weightを抱えることに「仕方ないな」と思わせてくれるメドレーだ。