根拠はないが,男はラーメンが好きだ。もちろん女性の中にもラーメンが大好きな人は多いと思うが,ラーメンが嫌いという男をあまり知らない。実際にラーメン専門店に行くと,女性の場合はカップルか家族連れがほとんどで,女性一人とか,女性同士の二人連れというのは,あまり見たことがない。

 

   逆に女性はパスタが好きだ。僕は,今でもパスタなどという気障な言い方ではなく,スパゲティと呼ぶ方が性に合っているが,どちらにせよ,ラーメンかスパゲティのどちらでもよいがどうするかと聞かれれば,いつでも間違いなくラーメン店を選ぶ。

 

   ラーメンのことを「中華そば」とも言うが,どう違うのだろうかと思ってネットで検索してみると「ラーメンと中華そばの違い」で結構な数,ヒットする。ということは,この二つは別物なのかと思うかもしれないが,いくつかの記事を拾い読みして,細かいことを一切捨象してしまうと,単に歴史的な呼び名の変遷のようなものだと言い切ってよいと思う。

 

   それにしても,日本人ほどラーメン好きな国民はいないのではないかと思うし,調べたわけではないが,全国すべての都道府県に「ご当地ラーメン」がありそうだ。博多ラーメンと言えば,豚骨スープが最大の「売り」だし,札幌ラーメンならば,太い麺の「塩バター・ラーメン」か「味噌ラーメン」というのが多くの人のイメージだと思う。

 

   そういった基本的な理解の上に立って各地のラーメンは存在している一方で,近年は,むしろ全国展開するチェーン店の味,がラーメン店選択の一番の決め手になっているように思う。例えば「天下一品」のラーメンを食べようとか「来来亭」に行こう,というように。

 

マクドナルドやケンターッキーのように,全国どこのお店に行っても同じ味を期待できるのがチェーン店の強みで,良くも悪くも一定の味と品質が保証されているわけだが,ラーメンのようにシンプルなのに多種多様な食べ物の場合,できることなら,何かしらの違いがほしい。

 

麺の太さはもちろん,ゆで加減によっても味は変わるが,やはり,なんと言っても,ラーメンが美味しいか不味いかを決定するのは,スープだろう。「いやいや,それは素人の発想だ」と笑われるかもしれないが,素人というのは当たっているとしても,スープが美味しければ,麺は多少不味くても我慢できる。逆に,どんなに美味しい麺でも,スープの味にコクや深みがないと,満足感は得られない。

 

ところで,少し前から気に入っていた系列店が,相次いで閉店したことにちょっとしたショックを受けている。愛媛県発祥の「りょう花」という店なのだが,薄味で上品なスープに鶏肉を炒めた具は,女性にも人気があり,夫婦で行くにはお勧めのラーメン屋さんだった。平日は知らないが,少なくとも土日のお昼は満員で並んで待つこともあったから,けっして不人気で閉店に追い込まれたのではないと思うが,ネットの記事を読むと,「メニューが変わった」とか「味が変わった」という否定的なものがいくつかあったので,急速に人気が落ちたのかもしれない。

 

胃腸だけは丈夫を自負する僕だが,人口調味料を大量に使っているラーメン店で食べるとお腹が下ることが多い。ラーメンは,塩分が多く,カロリーも高いので,休日くらいしか食べないようにはしているが,おいしい店のスープはどうしても飲み干してしまう。

 

美味いラーメンは病みつきになる。考えてみれば,ロックにのめり込んでしまったのも,初めに美味しい(上質な)ロックに触れることができたお陰だろう。もし,最初の出会いが通にしか分からないような妙なバンドの音楽だったら,ここまでのめり込めなかっただろう。