できる限り毎日ブログを更新しようと心掛け,文章量も決めているのだが,7月に一日だけ更新できない日があった。

 

   あまりにも体調が悪くて,パソコンを起ち上げることすらできなかったからだが,それでも,その後もしばらく続いた体調不良にめげずに,拙い雑文を書き続けてきた。

 

   先日,ブログを休んだのは,山に行ったからだ。予想外の接近予報が出された台風13号のせいで,3か月前から予定していた南アルプスを断念し,台風の影響のない九州の二つの山を訪れた。久住山は,3年前,雨の中でも魅力的だった山で,再挑戦する機会を待っていたとも言えるが,由布岳は,下山後に温泉に浸かりたいという邪念から思い付いた山だ。

 

  しかし,これが素晴らしい。まず下界から見上げた雄姿に,沸々と湧きあがる闘志を感じる。標高は1,583mだが,豊後富士の異名を持つだけのことはある。東西二つのピークを持つ双耳峰は麓から見上げる姿が美しい。昼前,正面登山口からゆっくりと森の中に入っていく。

 

  勇壮な山の麓近くのゆったりとした森の空気が,一瞬にして自然の恵を感じさせてくれる。

 

   いつも感じる「山に来てよかった」という憩いの時間を味わいながら,やがて,真夏の日差し

が,厳しさを教えてくれる剝き出しのつづら折りの道。傾斜が緩いのだ,足腰への負担が少な

いだけでなく,すぐ横に見えていたちょっとした草原の丘が,一折れするごとに下になっていく

ことで,増していく高度感を直感できるのが嬉しい。

 

   富士山と比べれば,何分の一かというほどのつづら折りだが,繰り返すうちに,山頂がぐっ

と近づいてくる。マタエと呼ばれる,西峰と東峰の分岐点に立つと,ミニ槍ヶ岳の気分。高度は

半分,スケールも半分だが,それでも,爽快なのは,吹き渡る風のせいだけでもなさそうだ。

 

   鎖場がある西峰へは,ゴツゴツとした岩場を登っていく。楽しいだけでなく,鎖から手を放す

と落っこちてしまいそうな崖またぎの適度なスリル感は,石鎚山の天狗岳を思い出す。山頂か

らの展望は最高の一言。

 

   見上げていた小山が遥か下に見えているだけでも,歩いてきた道のりを振り返ることができ

るが,長く,くねくねしたやまなみハイウェイがさらに遠くにくっきりと心地よい。奥に見えるの

は,九重の山々だろうか。マタエに引き返したら,今度は東峰。数十mのちょっとした崖だが,

西峰に比べると道筋がはっきりとしていて登り易い。こちらの眺望もまた違った景色で,真夏

の日差しを和らげてくれる一陣の風が疲れた身体には優しくさえ感じられる。下山もひたすら

ジクザグ道を歩く。

 

 独立峰ならではの高度感を味わえる優れた秀峰だ。季節を変えてもう一度訪れてみたい。

 

 翌日は,かねて再訪を念願していた久住山。牧ノ戸口からすぐ始まる急登のおかげで,一

気に高度を稼ぐ。あっという間に150mは昇った。ここからの展望もすでに絶景だ。岩がゴロ

ゴロする火星のような尾根道を楽しく歩くこと1時間。

 

   避難小屋前ではヘリコプターが救助訓練をしていた。前回は風雨の中を登ったが,今回は

山頂までくっきり。直登だと思っていたピークまで続くガレ場の道は,大きな弧を描いていた。

 

   そして,連山の最高峰,九州の最高峰中岳の途中に出くわした池のエメラルド・グリーンの

静かな湖面は,吸い込まれそうなほど神秘的。ぐるりと回った中岳から久住山と火山らしい煙

の見えるはげ山など周囲すべてを独り占め。隣に聳える天狗が城も1,780mあるが,中岳を少

し降りて登り返すだけ。ここにも素敵な世界が広がっていた。短い縦走路だが,それでもトータ

17㎞。心地よく疲れた一日だ。