世界中に何億人というファンを持つバンドの中でも,とりわけイギリス本国と日本,そして南米での人気がビートルズやレッド・ツェッペリンをも凌ぐと言われるクイーンの代表曲「ボヘミアン・ラプソディ」をタイトルにした映画が11月に日本で公開されるという。

 

   先日,映画館で予告編の映像を見たが,あのウェンブリー・スタジアムのライブを完全再現しているシーンなど,圧倒的な迫力だった。一瞬しか見ていないので何とも言えないが,本物の映像とシンクロさせているのかもしれない。

 

  「あのウェンブリー」というのは,1985年のライブ・エイドのことだ。このイベントは,確か,ブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフが呼びかけて実現したと記憶している。

 

彼は,この年のノーベル平和賞の候補にもなったらしいが,今,改めて当時の資料を読み直してみると,いろいろと知らなかったことや忘れていたことが数多くある。そもそもライブ・エイドは「1億人の飢餓を救う」というスローガンの下,「アフリカ難民救済」を目的として,1985713日に行われた20世紀最大のチャリティー・コンサートで,巷では「1980年代のウッドストック」とも言われたりしたが,実際の観客動員や規模は,ウッドストックを遥かに上回ったそうだ。

 

ただし,ロック・オンでお馴染の音楽評論家・渋谷陽一氏によれば,「ウッドストックは,イベントそのものが大きな事件だったが,ライブ・エイドは『チャリティ』という話題を借りなければイベントが成り立たず,音楽の影響力が低下した証拠だ」という趣旨の発言などの批判を始め,白人中心のステージが問題だとか,せっかくのイベントがアフリカの一部の国の政治的な目的に利用されたとか,様々な議論があったようだ。

 

ただ,あのライブで,圧倒的な演奏力を見せつけたクイーンが,再び注目を集める存在になったことは,やはり特筆すべき事実だ。

 

我がポール様も,もちろん出演している。フィナーレを飾った「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」の前だから,トリということでよいと思うが,「レット・イット・ビー」1曲というのは寂しい。

 

このライブは,同時進行で,アメリカのJFKスタジアムでも開催され,フィル・コリンズのステージにロバート・プラント,ジミー・ペイジ,ジョン・ポール・ジョーンズを上げて,「ロックン・ロール」,「胸いっぱいの愛を」,「天国への階段」を演奏したそうだ。何とも凄い出演者の面子だ。

 

 クイーン大復活のきっかけとなったライブ・エイドから話を戻す。映画では,フレディ役をラミ・マレックという俳優が演じているらしい。僕は,この人のことは知らないが,映画ファンならよく知っている人なのだろう。

 

  予告映像を見た限りでは,顔がそっくりというわけではないが,雰囲気はよく捉えていると思う。彼以上にそっくりだと感じたのは,ブライアン・メイ役の俳優。グウィリム・リーという人なのだそうだが,若い頃の彼に風貌がそっくりだ。

 

  ジョンとロジャーまで観察する余裕はなかったが,音楽面では,今でも現役で活躍中のブライアンとロジャーが総指揮という形で関与しているらしいので期待が高まる。映画なので,制約があることは分かっているが,少なくとも歌と演技に関しては,先日ライブ参戦して感動したトリビュート・バンド「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」のフレディ役を抜擢すればよかったのではないかと思ったりもする。

 

いずれにしても,地方大会で熱戦を繰り広げている高校野球の応援ソングとしても歌われている「ウィー・ウィル・ロック・ユー」やサッカー・ワールド・カップでは定番の「伝説のチャンピオン」などの曲を知らない人はいないと思うが,そのクイーンが映画で蘇るのは楽しみだ。