ビートルズのベスト・アルバムと言えば,若い人だったら,2000年に発売された「1」のことだと思うかもしれないが,往年のファンにとっては,やはり赤盤と青盤を思い浮かべると思う。

 

正式には,赤盤は「ザ・ビートルズ19621966」青盤は「ザ・ビートルズ19671970」というように,前期,後期に分けた名曲選だが,以前書いたように,ジョージによる選曲ということもあって,単なるヒット・パレード集になっておらず,「オールド・ブラウン・シュー」のような珍しい曲も収録されているところが,多くのオールド・ファンに愛され続けている理由の一つだろう。

 

 ところで,先日,you-tubeをサーフィンしていたら,「ザ・ビートルズ グリーン・アルバム」というものを見つけた。ビートルズに関しては,海賊版も含めて様々なアルバムが発売されているとはいっても,さすがに,そんなアルバムが公式に発売されていないことは知っているので,誰かが赤,青に続く傑作選を作ってアップロードしたのだろうということはすぐに分かった。

 

10年以上も前になるが,ビートルズ解散後のメンバーのソロ作品から選曲した海賊版を買ったことがある。収録曲は,すべて既存のアルバムやシングルとして発売されたものばかりなので,自分で編集してもよかったが,ジャケット・センスを含めて良いCDに仕上がっていた。

 

そんなことを思い出しながら,今回のグリーン・アルバムの収録曲を聴いた。オーソドックスだが,ユニークな面もある。まず,ポールの「ヴィーナス&マース~ロック・ショウ」からスタートするが,70年代のウイングスが,この曲をライブのスタートの定番にしていたように,とても良い選曲だ。ありきたりという意見やウイングスそのままじゃないかという声もあるかもしれないが,そんな雑音は,2曲目のジョンのカバー「スタンド・バイ・ミー」が軽く吹っ飛ばしてくれる。この1曲で,その場の空気が一瞬にして70年代中盤の世界に変わってしまう力がある。

 

ポールのはつらつとした歌声に続くジョンの淡々としたあの声が懐かしく響くと,これに続くのがジョージの「二人はアイ・ラブ・ユー」というちょっとおかしな邦題のポップで彼らしい佳曲。「ジョージ・ハリスン帝国」という,いかつい邦題のアルバムからの選曲だが,リンゴの「オー・マイ・マイ」とポールの「あの娘におせっかい」という2大ヒット・ナンバーを挟んで,またまた「帝国」から「ギターは泣いている」も選ばれている。これも「ホワイル・マイ・ギター…」の続編のごとき名曲だ。そして,A面ラストをジョンの「夢の夢」で締めくくっている。センスがいいとしか言いようがない。

 

彼らがソロとして最も輝いていた時代の,ヒット・ナンバーだけでこれだけの曲が揃うのだから,解散したとはいっても,彼らはそんじょそこらのバンドとは格が違っていたことが分かる。B面もまた名曲が続く。ポールの「心のラブ・ソング」から始まり,ジョージのカバー・ソング「トゥルー・ラブ」もぐっとくるし,リンゴのカバー「オンリー・ユー」とジョージの「ディス・ソング」は日本でもよくヒットしていた。ここで,イギリスではそれまでの売り上げ記録を更新したというポールのキンタイア岬ならぬ「夢の旅人」で,心をスコットランドまで連れて行ってもらえるのだから,堪らない。

 

ジョージの「クラッカー・ボックス・パレス」も明るく弾む曲調が嬉しいし,最後の「Beware My Love」は「愛の証し」という邦題なんてすっかり忘れてしまっていたが,ポールお得意のハードなロック・ナンバーで最高だ。贅沢を言えばジョンの「真夜中を突っ走れ」も入れてほしかったが,エルトン・ジョンとの共演のイメージから外したのかな。