ビートルズは,バンドとしては8年間,全米デビューから数えたら,実質的には6年間ほどの活動期間しかなかったが,あれだけの人気を得て世界中を飛び回ったこともあって,エルビス・プレスリーを始めとする多くの著名人や英国のエリザベス女王だけでなく,各国の大統領や政治家たちとも会ったし,多くの名セリフを残した記者会見だけでなく,何週間ものツアーに同行していた記者もいた。

 

   また,インドに滞在してマハリシやその取り巻き連中など,実に多種多様な人たちとの交流があった。そのため,こんな話を聞いたとか,実は,こういうことがあったというような秘話や逸話が何十年も経ってから明らかにされることも多い。真偽が確認できないものも含めれば,永遠に話題が尽きないのではないかと思えるほどだ。彼らに関する記事はかなり熱心に読んでいるつもりだったが,未だに初めて知ったという話もたくさんある。

 

例えば,ポールが「ペイパーバック・ライター」を書いた理由の一つに,彼の親戚のリルおばさんから「ポールは職業を扱った歌を書いたことはないわね」と言われたからというのがあるそうだが,知らなかった。だからという訳でもないが,もう少し,ビートルズの歌詞に登場する職業について書くことにした。

 

警察官という職業は,歌に登場する職業の代表みたいなもので,童話にも「犬のおまわりさん」という歌があるし,昭和30年代には「も~し,も~し,ベンチで囁くお二人さん」と歌う「若いお巡りさん」という曲があった。これを知っている人は60歳以上かもしれないが,もう少し最近の,ピンク・レディの「ペッパー警部」なら知っている人は多いだろう。

 

ビートルズの歌詞にも警察官は何人か登場するが,すぐに出てくるのは,やはり「アイ・アム・ザ・ウォルラス」の「街の警察官が座っている (あるいは整列している)」というものだ。Policemanという単語が韻を踏みやすいせいか,実に心地よく歌える。この歌に警察官を登場させる必然性はないが,最初の方で「銃におびえて逃げていく豚」という歌詞があるので,銃から連想して警察官という言葉を使ったのではないだろうか。おそらく,歌詞の意味よりも,いわゆる語呂とか韻で登場させた感じだ。

 

この曲は,それまでも,それ以後も似た曲すら思い浮かばないほど画期的な音作りをしているフェイバリット・ソングで,SEの使い方を含めてすべてが超絶だと思っている。歌詞の意味よりも,ジョンが早口でまくし立てるように歌うのにふさわしい言葉が並んでいて,後のラップの先駆けというか原型みたいなところがある。

 

 また,「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」にも「P.C31」という歌詞があり,P.Cは,police constableの略で,「巡査番号31番の奴」のことなのだそうだが,当時は,何のことか全く分からなかった。ジョアンや教師を殺したマックスウェルを捕まえた巡査という設定なので,ストーリー上,必然性のある登場人物になる。この巡査は「汚ねえ野郎を捕まえたぞ!」と叫ぶ。

 

ジョージ作の「ブルー・ジェイ・ウェイ」にも「街中の警察官に聞いてみろよ,そこら中に警官が溢れてるだろ?」と歌っている。警察官は,本来は市民を守るはずの存在だが,独裁者や権力を振りかざす為政者が彼らを自分たちだけのために使うこともあるので,権力の象徴として登場させることが多い。

 

70年代最後にリリースされたチープ・トリックの「ドリーム・ポリス」という曲と同名アルバムがある。彼らが絶好調だった頃の作品だ。ここで歌われているポリスは,夢の中まで取り締まる。思想,信条にまで立ち入って検閲する未来社会を風刺したのか。