僕が「グッド・モーニング」について書くならば,朝のニュース番組の方ではなくて,ビートルズの曲の方でしょうという突っ込みがあったということもないが,やはり,この曲について書かないわけにはいかないだろう。ただし,ビートルズの曲名は「グッド・モーニング,グッド・モーニング」と連呼するので,間違えるわけがないという声もあるかもしれない。

 

   そうは言っても,ユーミンが書いた曲については,あらぬ誤解を招かないように,わざわざ「グッド・モーニングのテーマ曲」としておいた。さて,この曲は「サージェント・ペパー」に収録されたにぎやかな曲で,ジョン作ということになっている。

 

   彼は,適当に作ったつまらない曲と言っていたようだが,動物の鳴き声や馬車が通るような音など,SE(サウンド・エフェクト)がふんだんに使われていて,なかなか面白い。この曲に関しては他にも面白い話がいくつかある。

 

   まずリード・ギターを弾いているのがジョージではなくポールだということ。なぜかは分からないが,ジョージはこの曲にはコーラスでのみ参加しているようだ。確かにこの曲にはジョージの素直な弾き方は似合わず,ポールの独特の吠えるようなギターがぴったりくる。

 

   想像でしかないが,曲ができていく過程で,ポールの頭にあのフレーズが浮かんで「ちょっと俺に弾かせてくれ」と言ったのではなかろうか。それほどに,短くも印象的なフレーズだ。そして,この曲の拍子がとても複雑怪奇なのだそうだ。

 

   普通に聴けば分からないが,ある人によれば「Aメロは4分の5で3小節,4分の3で1小節,4分の4で1小節という感じで始まり,ここまでで1小節目!つまり『4分の10拍子』で,次の2小節目は『4分の12拍子』,その次の3小節目は『4分の9拍子』,4小節目が『4分の6拍子』」でイントロ」という構造になっているのだそうだ。わけが分からんが,ジョンが思いつくままにやっただけで,譜面に書くとそういうことになるのだろう。

 

   ビートルズの曲は,いつも何でもないところで猛烈に複雑なことをやっている。この人によると,この曲がビートルズ最強の変拍子なのだそうだ。さらに,ジョンが「ブラス・サウンドがストレートすぎる」と言い出して,リミッターやコンプレッサーをかけまくってあの音を作ったとか,動物の鳴き声は,食物連鎖の順にしてほしい(実際には,そうならなかったようだが)などと,気ままというよりも,「どうせやるならそこまでやっちゃおう」的な発想が楽しいではないか。

 

   そんなある意味,わがままなリクエストに応えたブラス・セクションやレコーディング・スタッフの技術と情熱も素晴らしい。

 

 最後に,鶏の「コケコッコー」という音が,ライブ会場でのポールの「1,2,3,4」というカウントに変移する瞬間が堪らない。歌詞はまだまだ研究の余地がありそうだが,こんなことを頭に入れて,聴きなおしてみると,新しい発見があるかもしれない。それにしても,このシンプルそうに聴こえながらも超絶の変拍子をいとも簡単に叩いていたリンゴの力量は絶賛ものだろう。

 

 リンゴと言えば,この曲と対極にあるような「グッド・ナイト」という曲を歌っている。これもジョンがジュリアンの子守歌として作詞作曲した曲だが,思いきり甘い音にしてくれということで,オーケストラだけの演奏となった上,そんな要求をしておきながら自分で歌うのは恥ずかしいと言ってボーカルをリンゴに頼んだというのだから,彼の息子への愛情と照れ,リンゴとの関係などいろんなことが分かってほのぼのとした気持ちになる。ビング・クロスビーに捧げたらいいと思うほど,ジョンとしては,珍しく,とてもノーマルで優しいメロディが際立った曲だと思う。