最新作である「パシフィック・リム・アップライジング」ではなく,その前作に当たるのであろう2013年に公開された方の映画だ。最新作の公開に合わせてテレビ放送された。
結論から書く。壮大な駄作だ。これは酷い。元々コミックなのか,あるいはゲームから作られた映画なのか知らないが,とにかくストーリーも脚本もつまらなさすぎる。
それでも,大抵の人が大好きな怪獣やロボットが戦闘するシーンがふんだんに盛り込まれているから,観ている分には文句を付けるほどのこともない。まあ,2時間近い暇な時間をつぶすにはちょうどよいくらいの娯楽作品だ。
日本人の女優が2人出ている。
菊地凛子と芦田愛菜だ。菊地凛子といえば,国内よりも欧米でブレイクした感があり,アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたり,いろいろな賞を受賞している女優だが,この映画での演技はいただけない。素人に毛が生えたようなものだ。女優らしくない,いかにも素人っぽいところがリアリティに繋がっているところこそが本物の演技なのだと言われたら妙に納得してしまいそうなほどぎこちない。顔立ちも中国人のようだ。
それに比べて芦田愛菜は,役柄を完全に演じ切っている。個人的にはできすぎていてあまり好きではない子役だが,演技力ということで言えば文句の付けようがない。あそこまで恐怖と不安と悔しさを訴えかけてくる表情を作れる人は,子役はもちろん,大人の女優でもなかなかいない。
だが,この映画の見所は,残念ながらそれだけだ。冒頭からいきなり上官の命令に背いて漁船の救助に向かう主人公には唖然とした。軍事組織において上官の命令に背くのは重大な違反行為で,戦闘場面において個人の勝手な判断で行動していたのでは軍という組織は成り立たない。サンターバードのような家族経営の救助隊ですら父親の命令は絶対で,そうでなければチームとしての統率が利かず作戦の立てようもない。
ところが,危険な人達を見捨てられないという一見尤もな判断によって命令に背いた行動をする。そして,映画の作り手は,そんな身勝手な行動を主人公の優しさ,勇気として描いているようだが,とんでもないことだ。これは徹底的に糾弾されるべきだが,数年後にあの組織が崩壊してしまうというのは,もしかすると,婉曲に本来あるべき組織論を描いたのかもしれない。だが,もっと直截にこうした個人行動によって組織が崩壊したことを示すべきだ。
「シン・ゴジラ」が怪獣映画でありながらもそうした組織の問題点,命令の重さと責任を描いて秀逸だったのに比べ,この映画は子供が戦っているようなものだ。さらに,ロボットに乗り込んだ主人公の動きが笑える。
スピードのない動き,後手後手に回るアクション。怪獣は本能で戦っているからスピーディーかつストレートに戦闘してくるのに,ロボットに乗り込んだ二人組は,いちいち「さあ行くぞ」と掛け声をかけて精神を統一してから,おもむろに攻撃を仕掛ける。
それも機械仕掛けだから,いちいち「カシーン」「グワッシャン」という制動が必要になっているから素早く動く怪獣に翻弄されるのは当たり前だ。情けない。しかもロボットが走るためには中にいる生身の人間がえっさほいさと走らないといけないなんて,どこかのケーム機ではないか。
そんな突っ込みどころ満載という意味では面白かった。