今回のチャンスを逃すと、次はいつ行けるか分からないと思って予約していたアビーロード六本木へ、東京で仕事をしている息子も誘って出かけた。

 

 年度末の土曜日なので2か月前から予約していたのだが、予想どおり第1回目のステージが始まる頃にはすでに席はほとんどが埋まっていた。

 

 客層も、僕たち世代に負けないくらいの人数の若者や大学生くらいの息子や娘さんが、お父さんやお母さんに連れられて来ているし、外国人のグループ、いつもの常連さんなど、ビートルズが大好きな人達で溢れかえって、ムードは最高。

 

 それぞれのビートルズ愛を、そこかしこで語りながら開演を待つ楽しさも、また格別なものがある。僕以上に裏話に詳しくなった息子から、ポールに関する新しい噂話や、まだまだ知らない曲があるという妻に、先輩面しながら曲の蘊蓄を語るのも楽しい。

 

 2回目ということで、店の様子やシステムなどもよく分かったので、落ち着いて話をしながら待っていると、いきなり始まった「ドライブ・マイ・カー」。この曲は、ビートルズを知らない人に、彼らがロック・バンドだということを知らしめるにはうってつけだと思う。

 

 相変わらず上手い。チャッピーさん亡き後、新加入の星さんは、若い頃のジョンの面影を感じさせるだけでなく、あの独特の脚の開き方まできちんと研究していて、リズム・ギターだけでなく、キーボードやベースも弾きこなす。

 

 途中のMCも、全員が交代で、変に気どることもなく、それでいて楽しい会話になっている。つい先日も、ポールの次女ステラさんのプライベート・パーティで演奏したという話の中で、彼女が人間的に素晴らしい人だった逸話など、ファンの好奇心をくすぐる話で盛り上がるのだが、何と言っても、演奏とボーカルが圧巻だ。

 

 ポール役のゴードンさんは、どんな難曲も楽々と弾きこなし、何を歌っても、高音から低音まで、苦しそうなところが全く感じられない。前回も驚愕した「オー・ダーリン」の絶叫から「ブラック・バード」の囁くような歌まで、完全にポールの魂が入っている。初めて聴いたときの驚きが、今回は溜息に変わるほどの円熟ぶりだ。そんな彼が一カ所歌詞を間違えたときには、メンバー全員が彼の方を振り向いたが、何事もなかったかのように歌いきった。さすがプロだ。

 

 恒例のバースデー・タイムは、資格取得や卒業記念、果ては外国人カップルの新婚旅行もあったりして、この時ばかりは、みんな記念写真を撮って大いに盛り上がった。

 

 もう一人の新加入、リンゴ役のメンバーも若くなってボーカルも本人よりも上手いくらいだが、改めてリンゴの多彩なリズム・パターンに感心した。考え尽くされた曲の盛り上げ方は、おそらく彼の感性だけで叩いていたのだろうが、その味がありすぎる。「ペニー・レイン」の最後のシンバルだけでもアイデアの横溢だ。

 

 今回、一番嬉しかったのは「オールド・ブラウン・シュー」。パロッツは、この曲だけはリクエストしてもやってくれないらしいと聞いていたからではなく、ベースの斬新さを超越した曲への適合感を直接感じることができたからだ。ポールの大胆な発想が、曲に堪らない魅力を加えている。

 

 最後に大好きな「アイ・アム・ザ・ウォルラス」、アンコールに「ツイスト&シャウト」なんて最高。

 

セット・リスト ~ 記憶に基づく演奏ナンバー

1 ドライブ・マイ・カー

2 アイ・フィール・ファイン

3 ノーホェア・マン

4 シーズ・ガット・ア・デビル・イン・マイ・ハート

5 アクト・ナチュラリー

6 ノルウェーの森

7 ミッシェル

8 ペニー・レイン

9 ヘイ・ブルドッグ  僕のリクエスト

 

10 シー・ラブズ・ユー

11 キャント・バイ・ミー・ラブ

12 フォー・ノー・ワン

13 イエロー・サブマリン

14 バースデイ

15 ホワイル・マイ・キダー・ジェントリー・ウィープス

16 イン・マイ・ライフ

17 レット・イット・ビー

 

18 抱きしめたい

19 ロールオーバー・ベートーベン

20 ストロベリー・フィールズ・フォーエバー

21 カム・トゥゲザー

22 オクトパス・ガーデン

23 ブラック・バード

24 イエスタデイ

25 サムシング

26 ヘイ・ジュード

 

27 エイト・デイズ・ア・ウィーク

28 マッチボックス

29 ユー・ゥオント・シー・ミー

30 ドゥー・ユー・ウォント・ノウ・ア・シークレット

31 アンド・アイ・ラブ・ハー

32 アクロス・ザ・ユニバース

33 オールド・ブラウン・シュー

34 オー・ダーリン

35 アイ・アム・ザ・ウォルラス  36 ツイスト&シャウト(アンコール)