偉そうに聞こえたらいけないのだが,ビートルズから始まったロック遍歴において,可能な範囲のできるだけすべてのジャンルのロックを聴くようにしてきたので,詳しい分野とそうでない分野はあっても,全く知らないロックというのはないと思っている。

 

 パンク・ロックについては,丁寧な解説や定義もあると思うが,自分の解釈としては,70年代の後半,それまでのロックに対して,本来のロックというものは,ストレートで,反権力的で,楽器の技量とは関係なしに,主張すべきことをシンプルにぶつけるべきものだという考え方の下に台頭してきた「進取の気風のロック」というものだった。

 

 そのシンボルとなったのが,セックス・ピストルズという卑猥なイメージの名前のバンドだった。登場の仕方はかなり違っていたが,デビュー当時の勢いに限れば,ビートルズ並みのインパクトがあり,彼らやその後継者と呼ばれるバンドも含めて,それまでの既成ロックはぶっ飛ぶことになるという破天荒な捉え方をした評論家もいて,これからのロックは,こちらが本流となり,既存のロックは音楽ビジネスに成り下がった権力側の一産業に落ちぶれると宣伝するものもあったと記憶している。

 

  それほどセンセーショナルな登場だったから,思春期の人間にとっては,今までの価値観を否定して新たなロックに身を任せるべきなのか,恐る恐る聞いてみたというのが偽らざる心境だった。

 

 デビュー曲の「アナーキー・イン・ザ・UK」を聴いたが,歌詞が何かとんでもないことを歌っているらしいという以外,何も分からなかったせいもあって,興味が湧かなかった。スリー・コードのギターをやかましくかき鳴らすだけにしか聴こえなかった。

 

 どのバンドがパンクで,どこからがニュー・ウェイブなのか,はっきりしないところもあったが,クラッシュ,ジャム,ラモーンズなどがパンク・バンドの代表であり,旗手だったように思う。

 

  そうしたバンドの中で比較的好きだったのは,ブロンディとストラングラーズだった。ブロンディは,つい一緒に歌いたくなるポップな曲調とデボラ・ハリーのセクシーな声が魅力的だったし,ストラングラーズは音楽的な深みを感じた。 

 

 パンクとは違うのかもしれないが,あの頃,変な言い方だが,正式なロックとは認知されていない亜流のようなバンドの中で好きだったのが,トム・ロビンソン・バンド。

何かの拍子に思い出して,お得意のyou-tubeで検索して「2-4-6-8モーターウェイ」を聴いたら懐かしくてたまらなかった。なぜか,その後完全に音沙汰を聴かなくなった。 

 

もう一つ,こちらは思い出した理由がはっきり分かる,ドクター・フィールグッド。ストライプスの原点のようなハード・エッジのロックン・ロールでパンクとは違うのかもしれないが,日本語盤のタイトルが「殺人病棟」で,怖い顔がどアップになったジャケットは圧倒的だったし,しばらくの間,気に入って聴いていた。今聴いてもなかなか,かっこいい音だ。彼らはパブ・ロックというそうだが,あまり詳しくない分野だ。

 

その頃,ラジオで聴いたライブによって病み付きになったバンドが,ブームタウン・ラッツ。「ラット・トラップ」や「哀愁のマンディ」など,シンプルで心に沁みるメロディの曲が好きだった。

 

去年,新譜を出したらしい。まだやっていたとは知らなかった。