洋楽・ロック歴45年とは言っても,ライブ参戦歴については,40年前のジェフ・ベックの武道館公演と30年前のポールの東京ドーム公演に行って以来,久しく絶えてなく,ここ4年間,急に,気が狂ったような頻度で参戦するようになった新参者なので,ライブに関しては偉そうなことは言えないのだが,逆にいい歳をして新鮮な感覚で楽しんでいるので,毎年のように何回も参戦してきたベテランの方からすれば分かりきったことでも,もしかすると,改めてライブの楽しみ方を再検証できるかもしれないと思う。

 

 きっかけになったのは,2013年のエアロスミスの大阪公演だった。これが想像していた以上に素晴らしく,これほどまでに感動的なものかと思い知ったのと,その頃から隔年で開催されるようになったポールのライブが,生来持っていた僕のライブ魂に火をつけたのだ。

 

  ポールのライブに関しては,それまでも,海賊盤を含めてほとんどすべてのツアーの音源を聴いていたのだが,ギター・ソロを含めて基本的に原曲を忠実に演奏するので,ツェッペリンのように,アドリブやインプロビゼーションを楽しむものではないことは分かっていた。ただ,解禁したビートルズ・ナンバーを怒涛のように聴かせてくれるし,ツアーごとのセットリストの変更によって,それまでライブで聴いたことのなかった曲を,実際に自分の耳で聴くことができるのをいつも楽しみにしていたのだ。

 

 名曲ではあるが,そんなに好きな曲には入らない「ヘイ・ジュード」の「ナナナ」のコーラスは,いつも会場全体が一つになって歌い上げる定番で,英語が得意ではない日本人にとって,とても歌い易く,その日初めて参加した人でも一緒に歌えるという意味では超がつく名ソングだ。ライブでミュージシャンと一緒に歌う瞬間ほど参加感を味わえるものはない。

 

  この全員参加のコーラスを何というのか知らないが,ポールがたどたどしい日本語で「イッショニ,ウタオウヨ」と呼びかけて歌う「オブラディ・オブラダ」や「オール・トゥゲザー・ナウ」などもライブ参戦の喜びを倍加させてくれる名曲だ。

 

 問いかけに「イェーイ」と答え,だんだんと難しい音程でリピートさせる「イェイ・イェー」のようなやり取りも気持ちを昂ぶらせてくれる。本人とファン,ファンとファンが一つになるこの瞬間,いつも「今回も参加してよかったなあ」と心から思えるのだ。

 

 ポールの場合は,簡単なフレーズで,いきなりでも万人が参加できる優れものが多いが,他にもドゥービーの「ウォウウォー,リッスン・トウ・ザ・ミュージック」くらいならすぐに歌える。カラオケで何度も練習しておいたスコーピオンズの「ウインド・オブ・チェンジ」のサビの部分を,周囲に負けない大声で一緒に歌えたのは嬉しかった。

 

 ナイト・レンジャーもミスター・ビッグもそういう参加場面がいくつかあって盛り上がったし,ストライプスのライブでは,小さなライブ・ハウスでみんなが一斉にしゃがみこんで,サビでジャンプするという「大技」も楽しんだ。これこそがライブなのだ。

 

勿論,マイケル・シェンカーでも喚き散らすほど歌ったし,あのプログレのPFMですら,アンコールの「セレブレイション」では,単語だけだが一緒に歌わせてもらった。

 

ただ,山下達郎が言うように,ステージからの合図もなしに喚くのはただの迷惑だ。