まず,「熟聴中」という言葉は,僕の造語だ。熟慮とか熟読という言葉があるように,じっくりと腰を据えて聴くというような意味だ。

 

  今,10日後に迫った来日公演に向けて,ストライプスの曲を耳に残るまで聴き込んでいる。ビートルズの曲のように,何十回となく聴いていれば,曲名を聴いただけで,サビのメロディだけでなく,イントロからドラム・パターンまで,「ある程度」耳の中で完全再現できるが,歳をとったこともあって,新しいバンドの曲の場合,3回や5回聴いたくらいでは,脳内再生することは簡単ではないし,やっと覚えたメロディが曲名と合致しないこともしばしばあるのだ。

 

 さて,ストライプスの魅力が,その楽曲にあることは間違いないが,彼らのファッションを含めたスタイリングもなかなか優秀だ。自身でコーディネイトしているのか専属デザイナーが付いているのか知らないが,20歳前後の若者らしさを引き立てると同時に,ロック界で名を上げようとしている風格のようなものも感じられる。サングラスも音楽性とマッチしているように思う。ヘビー・メタルにタトゥーやメタル・ジャケットというのが一つの定番のようになっているし,パンクにはパンクらしいファッションというのがあって,ジャケ買いのところでも書いたように,バンドの立ち方とか風体を見れば,音の7~8割くらいは見当がつく。そういう意味でも,音に似合ったスタイルだ。

 

 2011年と言えば,彼らが14歳頃ということになるのだろうが,カバー曲をやっている映像がyou-tubeにアップされている。中にはジョン・レノンの秀逸なカバー「ロックン・ロール・ミュージック」を歌っているものもあったが,この時点で演奏力・歌唱力ともに,相当程度完成されている。

 

  勿論,粗削りで,まだまだ未熟な感じもするが,素人が学園祭でやっているレベルを超えて,プロとしてデビューするのも間もないなといった感じだ。その頃の服装はジーンズとジャンパーみたいな恰好で,あかぬけているとは言えないが,わずか数年で,ここまでプロらしくなったところはビートルズを彷彿とさせる。

 

  そして,何よりも演奏力がある。リズムが安定しているし,ギターもリズムとリードをうまく使い分けていて,曲作りとか展開の仕方をよく知っているなと感心する。更にブルース・ハープを使うタイミングと音の出し方もすでに一流の域に達している。確かに,まだストーンズやエアロの真似というか,強い影響力が抜けておらず,彼ら独自の使い方とまではなっていないかもしれないが,元々そういう楽器だと割り切れば高いレベルにあることは間違いない。

 

  彼らの曲を聴いていて思い出したのが,1970年代にロックン・ロールにパンク色をまぶしたようなサウンドでブレイクした「ドクター・フィールグッド」だ。ビートルズよりも,こちらの影響の方が強いのではないか。

 

僕は,ハード・ロックとプログレを基本路線としつつ,パワー・ポップと言われるものも好きだが,「トム・ロビンソン・バンド」や「ブームタウン・ラッツ」のようなシンプルでロックの基本のようなバンドも好きだったことを思い出した。ストライプスの個々の曲について書けるほど聴き込んでいないので,印象だけだが,少なくとも男女両性にアピールするものを持っていることは確かで,これが大ブレイクには必須なのだ。