洋楽の話に限るとして,ロックバンドには,「ブラック」がつくバンド名が圧倒的に多いことは知っているが,僕は,「ホワイト」がつくバンドの方が結構好きなのだ。「ブラック」の場合,「ブラックサバス」があまりにも有名なので,どうしても黒魔術とかデスメタルのイメージが先行してしまう。ラックには「ブラック」だけで一つのコーナーができてしまうほどの数のCDがあるが,すぐに思い出せるのは,「ブラックウィドウ」くらいで,大半は一度聴いたきりで,二度三度と繰り返して聴くような名盤はない。

 

 それに比べると,「ホワイト」がつくバンドは,すぐにいくつも思い出せるほど好きなバンドやあまり知られていないが味のあるバンドが多い。ちょっと思いつくだけでも,「ホワイトスネイク」「グレイトホワイト」「ホワイトウルフ」「ホワイトタイガー」「ホワイトライオン」「アヴェレイジホワイトバンド」「ホワイトゾンビ」「ホワイトストライプス」「ホワイトホース」「ホワイトライズ」など。一番有名なのは,「スネイク」だと思うが,ここ何年かで一番売れているのは「ストライプ」だろう。ジャックホワイトという独特の香りを醸し出す稀代の名ギタリストとその妹か姉か,はたまた元女房かよく分からない2人組は,古くて新しい音で,次々に時代をリードする名作を発表しているし,一度聴いただけで気に入った理由は,ツェッペリンのような豪快なギターとシンブルに響くドラムが,懐かしい70年代のようにぶっとくて,リズムがしっかりと地に着いた音を出していたからだった。単純に聴いていて気持ちの良いロックの原点の音だ。

 

 「スネイク」も一世を風靡したが,特に日本で人気が高い。欧米ではツェッペリンとパープルをライバル視する人は少ないようだが,わが国では,ハードロックと言えばこの両者を外すわけにはいかない。そのパープルファミリーの中でも,一番人気は,レインボーで,次がブルーステイストに溢れたカバデイルのボーカルと心に沁みる日本人好みのメロディを備えた楽曲が魅力の「スネイク」だった。80年代では,「スネイク」とレインボー,UFOの英国組とスコーピオンズ,マイケルシェンカーグループのドイツ組,ゲイリームーア,シンリジーのアイルランド組が僕のお気に入りだった。イアンギランバンドも好きだったから,やっぱりパープルファミリーは外すことはできない。

 

 「グレイト」は,ツェッペリンの曲をカバーさせたら世界一で,特にジャックラッセルのボーカルは全盛時のプラントを彷彿とさせるだけでなくオリジナルも素晴らしく,ライブが映えるし,PVにも美女が出てきて魅力的だ。来日したら,ぜひ行きたいバンドの一つだ。「ウルフ」もメロディアスハードの傑作を残してくれたし,「ライオン」はCD黎明期に1枚か2枚だけだが,とても耳に残る名曲を残してくれたので忘れ難い。

 

 知られていない「タイガー」はキッスに一時在籍したマークセントジョンのバンドと知って,長らく探し求めたバンドだったが,ややしょぼくて残念だった。ランディローズ時代のクワイエットライオットと同じようなものだ。「ゾンビ」はこなれた曲が多い。

 

 そう言えば,「ブラック&ホワイト」という一発バンドも結構好きだったし,ビートルズの「ホワイトアルバム」というのも,実は一番の名作アルバムだったりするわけで。