「もう八時か。明日は七時でいいや」
と、布団の中に入る。
すやすやと眠っていたら、突然扉が蹴破られた。
「何やってるんです、早く来てくださいよ」
大きな音に脈が速くなり、動悸息切れが起こっている中、よく分からない連中に連れ去られてしまった。
車の中に押し込まれて訳が判らない。走る車は高速道路に入った。
「全く、今日は大事な日だっていうのに何やっているんですか!!」
なぜか怒られる私。何をやっているのかって? 寝てたんですよ。寒いから。
言ってやりたいけれどもこの連中、切羽詰った様子で言い出せない。
高速を抜け、次に車が止まったのは空港のど真ん中。
「この飛行機に乗ってください。早く!!」
またも強引に押し込められる。ジャンボジェットとは言わないまでも、一般的な旅客機程度の大きさの飛行機の中、私は身ぐるみを脱がされ、お高級な服を数人に着付けられる。
「時間が無いんで、儀式始めますからね!!」
「儀式?」
服を着替え終え、まだ分からないままでいると飛行機の奥の扉が開き、謎の六人が現れ、私を囲んだ。
「な、何をするんですか」
顔色の一つも変えない六人は、それぞれが違う言葉で呪文らしきもの唱え始めた。
ここで始めた私は大切な何かを忘れている事を自覚した。けれどもそれが何か思い出せない。出てきそうで出てこない。
そうこうしていると飛行機は目的地に着いたらしく、地上へ着くとすぐに降ろされた。
「時間がありません。早くこの中へ」
巨大な大筒に押し込められる私。
(ああ、なるほど)
ようやく何か思い出した。それと同時に私はまだ薄暗い空へと放たれた。
ツンと澄んだ冷たい空気が懐かしい。雲を突き抜け、一番高くへ昇るその時を待つ。
時が来た。ここぞとばかりに私は輝いた。
今日は新たな年の始まりなのだ。危うく私はこの事を忘れてしまう所だった。
しかし、たくさんの人のおかげで今年もこの役目を果たす事が出来た。初日の出という役目を。
終わり
お正月という事で少々更新が途切れます。次回の更新時には一つよろしくお願いします。
という訳で、それでは良いお年を!!