ブックカフェ ~風の通り道~

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一本の筆が世界を変える

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「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」


という有名な書き出しから始まるこの作品。村上春樹の処女作。第22回群像新人文学賞受賞作。


先日発売された『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』はみなさんの記憶に新しいことでしょう。(『色彩を持たない~』は色々と言われていますが、それについてはまた別の機会に述べることにします。)


村上春樹有名だから読んでみたいんだけど、何から読めばいいか分からない。とりあえず、一番有名な『ノルウェイの森』を読んでみたんだけど……。

というような人が多いみたいです。


そんな初めて村上春樹を読んでみたい方に僕がお勧めするのが『風の歌を聴け』です。正直、いきなり『ノルウェイの森』はきついかなと……。


『風の歌を聴け』は今の村上春樹の文章とは大きく違いますが、なんだかんだ言って、彼が書いたものであり、彼の処女作であるわけで、作品中には、今の彼に通じる「匂い」がちゃんと存在し、その「匂い」を嗅ぐことができると思います。


作品について具体的なことを言うと(内容には触れません。)、僕が読了後、一番最初に感じたのは、いつかのオリンピックで北島康介が言っていた「気持ちいい。ちょー気持ちいい」でした。群像文学新人賞の選評に「ポップアートみたい」というのがあるように、とてもすらすらと読めます。そして、そのすらすらさが僕にとっては「ちょー気持ち良かった」のです。小説を読んでいて、初めて「文章が気持ちいい」と感じました。


あと、もう一つ言いたいのはこの作品の面白さについてです。『風の歌を聴け』は物語としては、起伏がほとんどありません。淡々と物語は進んでいきます。ほとんど何も起こらないといってもいいくらい。なのに、読み終わった後、面白いと思ってしまうのです。ただ、派手な面白さではありません。料理に例えて言うなら、高級レストランのフルコースディナーを食べ終わった時の「すごい美味しかった」ではなく、彼女が作ってくれた肉じゃがを食べ終わった時の「うん。なかなか美味しいよ」といった感じです。うん、なかなか面白いよ、みたいな。


最後に

この作品の中には、「本なんてものはスパゲティーをゆでる間の時間つぶしにでも片手で読むもんさ。わかったかい?」という台詞があるのですが

『風の歌を聴け』は、まさにそんな小説です。


みなさんもスパゲティーをゆでながら、片手で『風の歌を聴け』を読んでみたらいかがでしょうか?