凛
今年も残すところあとわずか。皆様にとって2008年はどんな年だったでしょうか。
ワタクシはとても逢いたかった人に逢えた年でした。
さて、そんな十二ヶ月の我がブログの更新回数は計32回。一年でようやく一ヶ月分の記事をアップする怠慢ブログですが、こうして巡り合ったのも何かの縁。下記にささやかな土産を用意しましたので、どうぞお持ち帰り下さい。
そして、また気が向いたときにふらりとお立ち寄り下されば幸いです。
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薄化粧
マッチ売り少女のように点ける。
「寂しい」
八百屋お七のように点ける。
「寂しい」
つぶやくたびに点けて、暗闇が溶けていくのを眺める。
「溶けろ溶けろ。みぃんな溶けろ」
十字架に張り付けられたガリガリの神さんも、赤と白のデブったヒゲのじいさんも全部溶けてしまえばいい。
軍手をしててもかじかむ両手で点けてやる。いくらだって点けてやる。
不治の病だって? ふざけるな。
来年は迎えられない? もう一週間もないじゃないか。
十割負担で医者にかかってみた途端これだ。くそったれ。あんなヤブ医者に一円だって払ってやるもんか。
「ちきしょう……ちきしょうちきしょうちきしょう」
どうせ死ぬなら点けてやる。全財産叩いて買いまくったこれを、ありとあらゆる家に点けてやる。
「これで私も犯罪者。執行される刑は火あぶりってか。上等上等。どうせそこまで持ちやしない」
雪が降って来た。けれどもう寒くはない。
「この家が最後か。新築だね。ケッ、さぞかし家の中はあったかいんだろうよ。これからもっとあったくしてやるから待ってなよ」
手早く点けて振り返る。深夜の住宅通りは自分が来たときより遥かに明るい。眩暈がするほどだ。額の前を星が瞬く。頭が回る。体に力が入らない。仰向けになって倒れ込む。雪のクッションで衝撃はない。それとも単に感じなくなっているだけか。いよいよだな。
「ヘヘヘ。やった。やってやった。ざまぁみろ」
裂けるほどに下唇を強く噛む。小指を立てて軍手越しに紅を引く。
十二月二十六日。早朝。ホームレスの老婆が住宅街の一角で凍死しているのが見つかった。老婆は昨夜、配線剥き出しの豆電球と単一電池を繋いだものを各家の玄関脇へ置き続けたらしい。イルミネーションのつもりだったのか。単なる嫌がらせか。各家庭の住人は例外なくその贈り物を廃棄した。勝手な行動を起こして勝手に死んだ老婆。死に顔には雪が薄く積もっていたと第一発見者は言った。
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追記
リンク先に別作品があります。
ひょっとこ はWEB幽の投稿怪談。
リトル・リトル・クトゥルー は一月発売予定の掌編集です。一編執筆しています。