昨日は何時もの薬貰いに,掛かり付け医院に行って来ました。

 

連休前で、とてもお客さんが多かったですが、わたしも連休中に何時もの薬が無くなる予定ですから、覚悟の上で出かけたのです。

 

そこは内科で、家から歩いて5分足らずの所に在ります。

 

先代の、お父さん医師の頃から通っていますが、今はそこの娘さんが女医さんになっています。

 

先代の時は、古い和風の建物で、ちょっと変わった細い部屋に、ストーブが置いてあるだけの待合室でしたが、今は洋風のおしゃれな建物に成り、何時行っても患者さんが多く待っています。

 

先代さんは、どちらかと言えば豪快な人で、風邪を引いても直ぐに注射をしてくれますから、仕事を休めないわたしなどには便利でした。

 

二代目女医さんは、わたしより一回り以上年下の人で、見立てが良くて優しいですから、患者さんが年々増えてきて、一時間くらい待つのが普通になってきました。

 

昨日も何時ものように、文庫本を持ち、読書用の眼鏡を持って出かけました。

 

文庫本は、「鬼平犯科帳 10」で、待合室などで読むには丁度良い軽さです。

 

何気なく腰かけた椅子で読み始めましたが、ふと・・・・そうだ、ここの椅子は、以前T姉(Tねぇ)、が座っていて、挨拶して、後で家の梅の木を診察してやったんや・・・、と思い出しました。

 

わたしの田舎では、親しい近所の人や親しい親類の女性に、歳が上も下も関係なく、○姉(○ねぇ)と呼ぶ風習が有ります。

 

男性には、同じく○兄(○にぃ)と呼びますが、男性の場合、例えば隣の一番下の男の子にも○兄と呼んだりします。

 

そんな場合呼ばれた子は、例え幼稚園児でも、人格を認められたが如き顔で、嬉しそうに返事をします。

 

それはさておき、その後ようやく名前を呼ばれて、まず血圧だけ計りましたが、座っていた椅子へ戻りましたら、なんと!!そこにT姉が座っているのです。

 

お互い約3秒ほど顔を見合せましたが、T姉が、「あら○○ちゃん」と笑顔で呼びます。

 

T姉は、わたしが生れて高校卒業するまで住んでた家の、左斜め前に住む、大きな酒屋の娘さんだったのです。

 

ですからT姉は、わたしが物心ついた時からT姉でした。

 

T姉の結婚式の時は、今は神戸に住む当時小学生のわたしの姉が呼ばれて、花嫁さんの着物の裾を持って歩いたり(多分)したようです。

 

そんなT姉ですから、待合室の多くのお客さんの中で、「あら○○ちゃん」と大きな声で呼ぶのもしかたないことなのですが、81歳で呼ばれるこちらとしては、やや恥ずかしいような気もします。

 

そしてまた大き目の声で「80にもうなったん?」と言いますから、「うん、なったよ」と、もう諦めの心境で、向かいの席に座りました。

 

「わたしはもう92やで、イヤに成るなぁ」と言いながら、わたしの声は聞こえないようです。

 

それで隣の椅子に座り、「T坊は幾つになったん?」と聞きますと、「70やろうよ」とのこと。

 

一人息子のT坊(この場合T兄でなくてT坊)も、もう70歳のようです。

 

70歳の息子さんを、T坊、と呼ぶわたしもわたしですが、T姉にかかっては、もうそんな世界に入り込んでしまうしかないのです。

 

明るいフワリとした服を着て、髪もフワリと整えて、T姉はお元気そうでした。

 

わたしの方が先に済んで帰りましたが、かえり際T姉を見ると、笑って両手を振っています。

 

わたしも子供の頃のように笑って、「それじゃぁ、また・・・」とわかれました。

 

病院のローカが、まるで子供の頃の、昭和の通りになったみたいでしたよ。