中 勘助作「銀の匙」を読み終えました。
何も知らない初めての作家でしたが、いろいろと読んでいる内に少しは知識が身に付きました。
まず明治18年生まれと成っていますから、これはどうやらわたしの祖父と同じ年のようですし、昭和40年没となっていますので、わたしの祖父より一年早く没したようになっています。
そのようなことを知りますと、子供の頃祖父と何度か小舟でハゼ釣りに出かけたことや、祖父の好きだった産業祭へ連れて行かれたこと、また祖父の晩年わたしは大阪で働いていましたが、最期の年に見舞いに帰ったことなど思い出され、中氏にも何となく親しみが湧いてくるのでした。
この「銀の匙」は前編が・大正元年 初稿・となっていまして、後編は・大正二年 初稿・と成っています。
この付近は、わたしの父が一歳から二歳の頃になりますから、本を読むに連れ、その頃の世情などを知ることが出来るのも興味の湧くところでした。
この小説は作者が27歳の頃書かれていますが、内容は自身の子供の頃からの自伝となっています。
その子供の頃の作者の心の在り様が、とても深く描かれていまして、自然に内容に惹き込まれてしまいます。
それは作者の子供時代が、特別に憶病で虚弱であったことから、読む方に哀れさと共に同情や、また確かな実存感を与えるのですね。
例えば5歳位まで、主人公は一緒に暮らす伯母の背に、何時もおわれていたようです。
「五つ位までは外へ出かけるのに、土の上に降りることが無い位だった」、と書かれています。
そんな主人公ですが、幼少期女子の友達には恵まれているのですね。
そのことは小学高に入るまで続きます。 まず自身の家が転居してからは、隣のお国さんという同じ年の女の子と仲良く成り、お国さん一家が引っ越してからは、今度は新しく転居してきたお恵さんというチャキチャキの女の子と親しく遊びます。
当時は、「男女七歳にして・・・」、の風潮が世の常だったと思うのですが、これがまた近所の子となりますと、事情が変わって来るのでしょうね。
小さい頃は毎日お国さんと遊び、小学校へ入ってからは帰宅後毎日お恵さんと遊んでいます。
かくれんぼをしたり、歌を歌ったり、綾取りをしたり。
わたしがちょっと羨ましかったのは、わたしにも小さい頃女の子の遊び相手が居たのですが、その子が引っ越してからは、主人公のように、次の女の子の友達が現れなかったことでした。
わたしの友達女の子は従妹でした。
小説と同じ、やはり同じ年齢の子で、幼稚園に入るまでは、毎日家で一緒に遊んでいました。
子供のわたしから見ても、とても可愛い子でしたが、その頃の年齢からすると自然な結果として、わたしは年上の女の子に従属するかのような形で、一緒に遊んで居たように思われます。
或る日、その子とその子のお母さんと、わたしとわたしの母の四人で、少し改まった服装で連れ添って出かけたことがありました。
わたしはその四人で歩くことの嬉しさに心はウキウキして、明るくはしゃいだ気持ちで小学校の横の路を歩いたことを今でも思い出します。
しかし悲劇はそれから間もなく訪れるのです。
彼女のお父さん(わたしの父の弟)は銀行員でしたが、出世して隣の県内の市の支店長として、一家で転居してしまいます。
四人で小学校の横路を歩いた日は、実は幼稚園の受付の日だったのですが、わたしはその後暫くは、その幼稚園には呆然と気抜けした気持ちで通うこととなったのでした。
わたしの子供の頃と明治20年代も同じで、近所の子であればやはり女の子とでも仲良く遊んでいたようですね。
しかしそれも、小学校の低学年までが限界のようですけど。
この小説の後編では、主人公は小学校の高学年から、中学校の生徒となっています。
後編では、中学生に成った主人公が、幼い頃母親以上の存在であった伯母に、最後に会う場面がとても良かったです・・・。
この小説は、旧制高校兼東京大学の教師であった夏目漱石から認められて、出版に至っています。
夏目漱石はこの小説の良さを、「子供の心の表現を、子供時代の記憶として書かれたものではない、子供の体験した世界をそのままの真実として書かれている」と言った表現で現わしています。
つまり大人が子供時代の思い出として書いたものでは無く、子供時代の心を、子供そのものの目から描き切っている、という感じでしょうか。
前回借りた「こころ」と同じシリーズ、「大活字版・岩波文庫」の数冊の中からふと手に取って読んだ小説なのですが、思わぬことから良き作品に巡り会えたのでした。
小さくて判り難いですがハーブのローズマリーの花が咲いています。
ここ数日、タネを蒔いた野菜の苗をポットに移しています。
キュウリの苗の一部です。
こちらはカボチャとブロッコリーです。
野菜が済めば、バラの挿し木を鉢に移そうと思います。二本ですが。
それとクリスマスローズの苗も鉢を大きくした方が良さそうです。
春先は商品の準備と、栽培仕事が多いです。



