阿部竜太郎著「等伯」を読み終えました。直木賞作品でした。
この本は上下に別れた大作で、なかなか読み応えのあるものでした。
わたしは絵師等伯の名は、テレビのお宝鑑定団で知るくらいで、事前に何も知識が無かったのですが、物語の内容に惹き込まれページの割に早めの読了となりました。
等伯は安土桃山時代を生き抜いた絵師で、時代に翻弄されながら織田信長や秀吉とも繋がりが深く、秀吉からは何度も襖絵などの要請を受けています。
また利休とも親交が深く、茶道の教えや禅の修行からも、絵に対する心の持ち方を学んでいます。
絵画に関しては先日も「永遠のカンヴァス」を読みまして、アンリ・ルソーの世界に惹き込まれましたが、今回の等伯の世界でも、生き方の凄まじさをまた違った肌合いで感じてしまいました。
天才画家たちの心の持ち様とは、洋の東西また時代の如何に関わらず、文字道理命懸けの自己研鑽自己葛藤が付きまとって来るようですね。
わたしのような凡人中の凡人には判らない心理です。
わたしも実は戯れに油絵を描いたことがあるのです。 二枚だけですけど。
一枚は静物でリンゴです。あのリンゴの色を出したくて描いてみたのですが、まぁ自分なりの納得した色が出たと思ったものでした。
二枚目は自画像でした。 鏡に自分を写して描きましたが、これもまぁそこそこ描けたとは思っています。
しかしその時気が付いたのが、油絵というものには終わりがない、という事でした。
思う色を出すため、色の上に色を重ねて行くのに、わたしのような素人としては行き着く所というものが無いのですね。
こうかなああかな~と迷いつつ、どうにか思いに近い色に成って、もうこの辺で止めておかないとまた迷路に入ってしまう・・・、と成って終わりに無理矢理にするようなことでした。
それでその後どうなったかと言いますと、もうそれ以上絵を描く気持ちにはならないのです。
もともと子供の頃から絵の才能は無い方ですから、そこそこ油絵に自己満足したら、もう良いだろう・・・となるのですね。
しかし才能の豊かな人は違うようです。 自分の納得するまで、身を削ってまで追求しようとするのですね。
歴史に名を遺すような画家に至っては、自分の命を削ってまで絵の中にその命を吹き込もうとするのです。
特別な才能が有るということも、一面難儀なことですね。 そこまでして初めて人の心を打つ作品が生まれるのでしょうが、凡人としてはただただ本を読みながら、恐ろしき世界かな、と感じ入るばかりなのでした。
午前中ちょっと仕入れに行ってきましたが、やや標高の高い所でしょうか、もう早咲の山茶花が開き始めていました。
そう言えば北風が吹き始めましたからね。


