先日はちょっとショックなことがありました。
約一ケ月ぶりに片道90km程の運転出張に出かけましたが、出発し30分ほど走った所に見える家の松の葉が、全面黄色に変色しているのです。
「エッ」と運転しながら思わず声が出てしまいました。
一月前には元気が良かったのに・・・。しばらく信じられない思いをしながら運転しました。
その庭木の黒松は、わたしが10年ほど前に元気を再生させた黒松だったのです。
10年ほど前、或る家の方から電話があり、家の庭木の松が枯れそうだから見てくれませんか、と言うことでしたが、わたしの良く出張する道筋にも当たることから、出張の日に寄ってみることにしました。
一目見て、日光不足であることが解りました。
庭木の松の木の東側に、ちょうど松の木を陰にする楠が茂っており、家の人の「昔は元気が良かったのに、ここ数年元気が悪くなって・・・」と言われる通り、ここ数年で東側の楠が元気よく枝葉を広げたことが窺えました。
黒松は幹の直径が20cm以上あり、高さは2m50cm程有りますが、ちょっと幹をゆすってみますと、僅かながら根元の部分が動いていることが解りました。
また葉の一枚一枚がぷっくり丸みを帯びて、水膨れに成っていることも解ります。
楠の陰で一日中日光が当たらなくなってから木の生育が鈍り、葉の水分の蒸散作用も鈍つて葉が水膨れをし、日光が根元の地面にも当たらないことから、一度雨が降れば何十日も乾かない、従って地面と地中が冷えて温もらず、根が積極的に活動していない、ということが解りました。
その木の大きさから言えば、わたしが少しゆすったくらいで、根元が動くはずが無いのです。
家の人が「油粕の肥料を遣ったのですが・・・」と言いますので、慌てて「直ぐに全部取り除いてください」と言いますと、早速スコップで取り除き始めました。
「助かるでしょうか・・」と言われますから、「あの楠を下から切れば、多分助かると思いますよ」と言いますと、意外な顔をされて「そうなのですか、じゃあ早速下から切りましょう」ということで、そのままその日は出張先へ出かけました。
その次の出張は2週間後でしたが、楠はスッパリ地面の上1メートル部分から切り取られ、松に日光が燦燦と降り注いでいます。
これでまず大丈夫だろうと、しばらく日を置いて、一月後位に立ち寄ってみました。
黒松の葉は普通通りに細くなり、根元の土の表面が適当に乾いていて、手を当てると初夏らしくほっこりと温かみが感じられます。
家の方が庭へ出てきて「あ~ありがとうございました。松の命の恩人です」と言われ、「いえいえ」と照れてしまいました。
その後10年ほど、通るたびにチラリと横目で見て、~芽摘みもしてるし、元気にしてるな~、と思っていたのですが。
何が有ったのか、そういえば今年は何故か芽摘みもしていませんでした。
もしまた電話が有れば寄ってみたいと思いますが、松の場合、葉の色があんなに成れば、もう一か月も前から枯れているということなのです。
何となく、昔助けた子が10年後に突然不幸を迎えたような気持ちがして、驚いた後はしばし気が抜けた気分のまま運転を続けて行きました。
どこからどんなにして聞いてくるのか、松のことで相談を時々受けてきました。
中には「保険の掛からない薬を使っても良いから、是非助けてください」と言って、高額で買ったらしき盆栽の松を持ち込んで来る方も居られました。
その都度「元気になる保証はありませんから」と言って引き受けるのですが、ほとんど皆さん「それはもう結構でございます」と言って置いて帰ります。
若い時はそのような木を預かることは、一つの挑戦に思えて、「よし、回復させてやるぞ」と意気込んで対処したものでした。
しかし、わたしの所へ持ち込んで来た時点で、既に枯死してる木も有りました。
その場合は訳を話してお引き取りして貰うのですが、反対に「もう枯れているから処分して」と言ってまだ回復可能な松を持ってくる方も居られました。
そのような時は「そうですか・・・」と言って、極安で一応売って貰って、一年間育てた後、〇万円で売ったことも有りました。
いろいろな事がありましたが、今度の庭の黒松のようなケースは、長年チラリと眺めては「元気だな」と思って通り過ぎていただけに、特別に残念な気持ちになったものでした。