真夏のバラ  まるで真昼の花火のようです。

 

 

 

「真昼の花火」という吉村昭氏の本を読みました。

 

この本は変わった編集で、氏のエッセイと、創作の短編、中編が混在しています。

 

最初のエッセイは「牛乳瓶」というタイトルで、氏の中学生頃の街中の情景が語られており、氏のエッセイらしい風合いが感じられるものです。

 

そしてその次には「弔鐘」という短編が載せられていますが、これは1967年発表の作品のようです。

「弔鐘」の次は、「真昼の花火」という、1962年2月発表の中編小説が掲載され、最後に「四十年ぶりの卒用証書」というエッセイが載せられています。

 

「弔鐘」を読みながら、たしかエッセイ集「私の好きな悪い癖」の中に、氏が或る編集長から「いけませんねぇ、こんなものを書いちゃぁ。私は、「さよと僕たち」の作者に頼んだんですよ」と諭される文があったことを思い出し、確認までしてしまいました。

 

しかしその時の作品は、競馬の騎手を主人公にしたものであり、「弔鐘」のテーマであるボクシングとは関係のないものでした。

 

ただ中編の「真昼の花火」と共に、世に知られた作家にもこのような時代があったのだなぁ・・と、知らなくても、それはそれで良い知識が、身に引っ付いて来たような気分になったのでした。

 

氏は2006年に没し、本は2010年に発刊されています。

出版に対する氏の意思は・・・何か釈然としません。

 

しかし考えように寄っては、人それぞれの歩み、のようなものが、この一冊の本を通して語られていると、もしかして、そのように捉えるべきものなのかも知れません。