辻邦生の「安土往還記」という小説を読みました。 この作品は以前{最近面白い作品に巡り会えない}と書いて以来、久しぶりに最後まで読んだ本でした。

 

それはこの作品のちょっと珍しい筋立てに興味が湧いて、読み進めたからなのです。

ちょっと珍しいと言いますのは、日本の戦国時代、特に織田信長その人に付いて、当時イタリアから来た宣教師に付いて共に来日した友人等が信長に会って、その詳しい人物像をイタリアの友人に書面で送ろうとしている?と言う筋立てになっているからなのでした。

 

そして小説の冒頭、その宣教師の友人は過去にも諸外国の国情をイタリアの友人に送っており、その一部が、南仏の著名な蔵書家の書庫で発見されたルイスフロイスの「日本史」にとじ込まれていたのが発見されている。と有って、織田信長との交友等も信憑性の有るものとの意味を持たせた書き出しです。

 

読み始めてわたしはすっかりその筋立てを信用してしまいまして、これは凄い内容が山盛りだ・・・、と感服すること著しい状態だったのですが、読んで行くにつれ、余りにも信長の佇まいや人物の思考描写が詳細過ぎて、これは・・・こんなに詳しく書かれているほどなら、いろんな歴史書にきっと何度も出典として出て来なければおかしいはずだが・・・、と思い始めまして、途中で末尾の解説を先に読んでみました。

 

そうしましたらあにはからんや、ヨーロッパの小説家か学者が、この本の作者辻さんに、この歴史資料の存在場所を聞きたいと問い合わせがあり、原作者としては作者冥利に尽きただろう、とあるのですね。

 

これを読んで、なぁ~んだ、全てが創作か・・・わたし同様、ヨーロッパの小説家か学者さんも騙されたのか・・・、となりますと、後は日本では知れ渡った歴史上の事実を装飾して、外国のキリスト教宣教師達の見た信長像、との小説にストンと落ち着いてしまったのでした。

そうしますと当初の意気込みは半減して(丁度半減くらいでした)最後まで惰性で読み終えたのでした。

 

次は丸谷才一さんの種田山頭火に付いての小説を読んでいますが、なかなか入込めるものが有りません。(この作品は、以前から読んでいます池澤夏樹さん自選の日本文学全集の中での続きなのです)

活字中毒患者は何か一応読んでいれば良いのですが、それでも時には、「これは・・・!!」と言う作品に巡り会いたいものなのですねー。

 

っでその後、山崎光夫さんの「北里柴三郎」と言う本を読みました。 例により日本文学全集を一冊借りて、図書館内のカウンターへ歩いていく途中、ふと文庫本のコーナーでその名が横目に飛び込んで来ましたので「おっこれは面白いかも」と伝記好きの血が騒ぎ(それなりに・・)手に取りました。

 

この本はやはり面白かったです。 北里さんは熊本県小国の出身ですが、何回か通ったことがありますが本当の山の中ですね。

何時も帰りの運転中に通りまして、わたしの印象では早く通り過ぎて町に出たい・・・、とそんな気持ちにさせるような地域だった気がしたものでした。(地元の方にはすみませんが)

 

しかし天才が生まれたのですね。 文庫本の上下巻でしたが特に上巻のドイツでの活躍が面白く読めました。

次はまた日本文学全集に戻るつもりですが、なにか面白いものが有るでしょうか、どうでしょうか・・・。