昨年暮れに韓国の艦艇が日本の自衛隊哨戒機に対してレーダー照射を行いロックオンした事は記憶に新しいところです。

 今に至る最悪の日韓関係のほんとんど最大最悪の切っ掛けと言っても過言では無いでしょう。

 

 あの時、日本政府は韓国に対して哨戒機から撮影した映像や音声を使ってロックオンされた重大案件を国内外に向け未だ曾て無いほど繰り返し、そして強硬に説明しました。

 

 当時の事情を考えれば至極当然の対応だと思います。

 

 1歩間違えば軍事的な不測の事態を招く可能性があるレーダー照射なのですから、韓国側の意図を正確に知るためには不可欠の問題提起でした。

 

 ところが、昨日の朝刊で<オイオイ!韓国には探知能力を知られても事態の深刻さを究明することが重要だという理由で、あれほど大騒ぎした自衛隊なのに、相手が強いと泣き寝入りするのかよ!?>と思える案件が三大紙では無い、毎日新聞と東京新聞が記事にしていたのです。

 

 <なんじゃこりゃ!?>と思える対応です。

 

 

 

(東京新聞 2019年8月19日朝刊)

『東シナ海の公海上で五月、中国軍の戦闘機が海上自衛隊の護衛艦を標的に見立てて攻撃訓練をしていた疑いの強いことが分かった。複数の日本政府関係者が証言した。政府は不測の事態を招きかねない「極めて危険な軍事行動」と判断したが、自衛隊の情報探知、分析能力を秘匿するため、中国側に抗議せず、事案を公表していない。現場での偶発的軍事衝突の懸念があり、緊急時の危機回避に向けた仕組み作りが急がれる。

 

 日中関係は、政治的には改善が進む一方、東シナ海では中国によるガス田の単独開発や公船の領海侵入が続き、日本が抗議を繰り返している。今回の中国機の行動は、東シナ海の軍事的緊張の一端を浮き彫りにした形だ。

 

 政府関係者の話を総合すると、日中中間線の中国側にあるガス田周辺海域で五月下旬、複数の中国軍のJH7戦闘爆撃機が航行中の海自護衛艦二隻に対艦ミサイルの射程範囲まで接近した。中国機は攻撃目標に射撃管制レーダーの照準を合わせ自動追尾する「ロックオン(固定)」をしなかったため、海自艦側は中国機の意図には気付かなかった。

 

 別に陸、海、空自衛隊の複数の電波傍受部隊が中国機の「海自艦を標的に攻撃訓練する」との無線交信を傍受。その後、この交信内容とレーダーが捉えた中国機の航跡、中国機が発する電波情報を分析した結果、政府は空対艦の攻撃訓練だったと判断した。政府内には挑発との見方もある。

 

 日本政府は直後に「極めて危険な軍事行動」と判断し、海自と空自の部隊に警戒監視の強化を指示したが、情報を探知し、分析する能力を隠すため、中国側への抗議や事案の公表を差し控えた。

 

 日中両政府は二〇〇八年に東シナ海のガス田を共同で開発することで合意したが、交渉は沖縄県・尖閣諸島沖で一〇年に起きた中国漁船衝突事件を受けて中断。中国は一方的に単独開発を進めている。一三年には中国海軍の艦船が海自の護衛艦に射撃管制レーダーを照射したとして日本政府が中国に厳重抗議する事案が発生している』

 

 

 

 中国軍は<海自艦を標的に攻撃訓練する>という無線連絡を行っていたのです。

 

 そしてその通信を陸、海、空の自衛隊電波傍受部隊が傍受していたのにも関わらず中国への抗議や事案の公表を差し控えたんだそうです。

 

 <なんじゃこりゃ!?>でしょう。

 

 何故、公表しなかったのかという理由としては、自衛隊の探知能力や分析能力を知られたくなかったからという。

 では、何故今、この事実を公表しているのか?ということになります。

 本当に軍事的に相手側に知られてはならない<探知能力>だとすれば、5月下旬と8月中旬の今とで違いがあるはずは無いでしょう。

 

 考えられるのは2点です。

 

 第一は、安倍政権が韓国を下と見、中国を上と見ていたからです。

 この<下>と<上>という表現は、日本の相手に対する恐怖度、軍事能力度という基準における価値判断です。

 

 日本と中国は尖閣諸島の帰属問題で、ほぼ中国のイチャモンに始まって今に至っています。

 中国の艦艇はひっきりなしに日本の固有の領土だと主張する尖閣諸島の領海侵犯を続けていますが、日本政府はいつまでたっても口先で抗議をするだけで、世界的な常識の領海侵犯への対応をとってはいません。

 

 その理由も今回の<自衛艦を目標にした攻撃訓練>と同質です。

 要するに、本格的に抗議したり軍事的な行動をとって相手を威嚇した場合、中国が本気になって軍事攻撃をするかもしれないという<脅威><不安>を感じているからでしょう。

 

 そうした意味で、安倍政権は中国を<上>と見、韓国を<下>と見ていると言われても仕方ないのです。

 

 第二は、時期が6月下旬に行われる大阪サミットの1ヶ月前だったと言う事で、関係が回復している日中の間に、ヒビをいれることになるかもしれないという政治的な配慮が働いたのかもしれません。

 

 しかし本当にそれで日本の世界に対する誇りと地位は守られるのでしょうか?

 

 「韓国の艦艇がしたことと、中国の戦闘機がした事は同じじゃ無いか?」

 

 「日本は“弱い国”には強気に出るけど、相手が“強い”と何をされても、何も言えない国なのか?エーッ!?」

 

 そんな世界各国の声が聞こえてきます。

 

 実際、<下>に見られた韓国では「中央日報」が今回の日本の対応をダブルスタンダードだとして批判しています。

 

 

 

(中央日報8/19 10:24配信)

『5月に東シナ海の公海上で中国の軍用機が日本の海上自衛隊の護衛艦を標的に見立てて攻撃訓練をしたことに気付きながらも日本政府は抗議しなかったと毎日新聞と東京新聞が19日に報道した。

 

複数の日本政府関係者の証言を基にした報道だ。

 

毎日新聞によると、日本政府は当時「極めて危険な軍事行動」と判断したが、自衛隊の情報探知能力と分析能力を隠すため中国側に抗議せず、一般に公開することもなかった。

 

昨年12月に韓国の軍艦が海上自衛隊の哨戒機に射撃レーダーを照準したとして防衛相が直接記者会見したこととはあまりに対照的な対応だ。

 

報道によると、東シナ海海上の日本と中国の中間線付近の中国側ガス田周辺海域で5月下旬に複数の中国軍JH7戦闘爆撃機が海上自衛隊護衛艦2隻に接近した。

 

中国機は攻撃目標に射撃管制レーダーを合わせて自動追尾する「ロックオン」をしなかったため護衛艦は中国側の意図に気付かなかったという。

 

その後、他の陸上、海上、航空自衛隊所属の複数の電波傍受部隊が「海上自衛隊の艦艇を標的に攻撃訓練をする」という中国機の無線交信を傍受した。

 

続けてレーダーで追跡した中国機の航跡、中国機の電波情報などを分析した結果、「日本の護衛艦を標的にした攻撃訓練」と日本政府が判断したという。

 

東京新聞によると、日本政府は直後に「極めて危険な軍事行動」で判断し、海上・航空自衛隊に警戒監視強化を指示した。だが中国に対する抗議や事実公表はなかった。

 

日本が中国に対して抗議をしないのは中国との関係改善ムードに冷や水を浴びせたくなかったためとみられる。

 

2013年に中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射した時は日本政府が中国に厳重に抗議した』

 

 

 

 書き方は非常に抑えめだが、<ナンダカンダ言っても、日本政府というのは相手が強いと黙りこくるんですね・・?>と揶揄する含み笑いが聞こえてくるようです。

 

 これが米軍なら恐らく間違い無く即応して攻撃態勢をとったはずです。

 

 ところが日本の自衛隊は既に集団的自衛権の行使を解釈改憲し、実質的に戦える軍隊になってはいても、戦後74年の負け犬根性は骨の髄まで染みこんでいるようで、まさかの事態に備えての行動規範が緩いというか、相手任せで済ますようです。

 

 もし、中国の空軍でクーデターが起きており、跳ねっ返りの軍人が日本艦艇を攻撃した場合には間違いなく沈没していたでしょう。

 

 日本政府は韓国との間でレーダー照射が起きた際、そうした不測の事態を防ぐために探知能力を知られても仕方ないと判断し、相手側のレーダー照射を明らかにして抗議し、話し合いを持とうとしたはずです。

 

 何故、中国にはそうしなかったのか?

 

 やはり、強い者には頭を垂れる国になってしまっているのでしょうか・・。