ご存じ、元プロ野球選手でスポーツ評論家の張本勲さん。

 

 この人がTBSの「サンデーモーニング」で一週間に起きた出来事を解説する際、自分がとしない出来事に関しては<喝!>と言って批判するコーナー「週刊・ご意見番」が人気ですが、同時に数々のオブジエクションを呼び込み話題になることも多いコーナーでもあります。

 

 この「週刊・ご意見番」で昨日、25日に行われた夏の高校野球岩手大会決勝で大船渡高校の監督がエースの佐々木朗希投手を登板させなかったことに対し、張本さんが例によって<大喝!>を飛ばしたのです。

 

 番組内でも司会の関口さんなど異論を挟んだりしたのですが、関口さんよりももっと現場を知り、野球を知る現役のMLB選手からツイッターで異論が舞い込み話題になっています。

 

 その選手はダルビッシュ有投手です。

 

 

 

(ハフトンポスト日本版 2019年7月28日19時11分)

『夏の高校野球岩手大会の決勝で、花巻東と対戦した大船渡が、エース佐々木朗希投手を起用せずに敗れたことで賛否両論が巻き起こっている。

 

登板回避について、決勝があった7月25日以降、大船渡には多数の苦情が寄せられる異常事態となった。

 

野球評論家で元プロ野球選手の張本勲氏(79)は、7月28日の「サンデーモーニング」(TBS系)のコーナー「週刊・御意見番」で「最近のスポーツ界で私はこれが一番残念だと思いましたよ」と語り、大船渡の采配に憤慨した。 

 

 一方、「故障を避けるため」とした大船渡・國保陽平監督(32)の判断についてシカゴ・カブスのダルビッシュ有投手(32)は「これほど全国から注目されている中で佐々木君の未来を守ったのは勇気ある行動」と評価。ミルウォーキーで行われたブルワーズ戦の際に取材陣に答えた。

 

7月28日には、張本氏の番組での発言について書かれた記事を引用し「シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う」とツイート。

 

 

【シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う。 https://t.co/94V9n3BCc7

    — ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) July 28, 2019

 

また、注目選手ではあったものの高校野球で「酷使されなかった投手」として「見たいというだけで、投げさせるなんてやめてあげてほしい」というファンからの言葉に、自身の過去を振り返って返答した。

 

    自分ほど酷使をされなかった強豪校のピッチャーはいないと思います。

    2週間キャッチボールすらしていない時もありましたし、先発も県大会、東北大会共に準決勝からという感じでした。

    — ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) July 28, 2019】

 

 

 ちなみにシェンロン(神龍)は世界中に散らばったドラゴンボールを7つ集めると出現し、どんな願いもかなえてくれる。

「絶対に投げさせるべき」「楽させちゃダメ」…故障回避は「楽をさせた」結果なのか?

 

張本氏は、コーナーの冒頭で岩手大会の決勝を伝えるVTRを見終え、開口一番で「最近のスポーツ界で私はこれが一番残念だと思いましたよ。32歳の監督で若いから非常に苦労したと思いますがね、絶対に投げさせるべきなんですよ」と強い口調で憤りをあらわにした。

 

佐々木投手は、決勝前日にも9回129球を投げており、岩手大会では2回戦の16日から準決勝の24日までの9日間で4戦29回、435球を投げた。

 

前年に話題となった金足農業の吉田輝星投手は、秋田大会5試合で636球、甲子園で6試合の投球数は881球を投げた。

 

炎天下の夏の甲子園では、歴代2位の投球数だ。歴代1位は、早稲田実業の斎藤佑樹投手の948球。

 

「炎天下、エースが一人で投げ続ける姿」は“激闘”“死闘”として感動を生みやすく、ともすれば美化されがちだが、成長過程にある高校球児にとって連投や過度な投球数は骨に異常をきたすなど、投手の肉体を消耗する判断でもある。

 

張本氏は連投を重ねた吉田投手を引き合いに出し「(佐々木投手は)予選で4回くらいしか、450くらいしか投げてないんですよ。昨年ね、吉田輝星が(甲子園で)800球くらい投げてるんですよ、予選からずっと一人で。“宝”とか“宝石”って誰が決めるの?」と疑問を呈した。

 

続けて、佐々木投手を登板させなかったことにより、チームが犠牲になったとの見方を示し「これぐらいの選手でね、ものすごい素質があります。ダメになった選手はいくらでもいるんだから。監督と佐々木くんのチームじゃないから。ナインはどうします?一緒に戦っているナインは。1年生から3年生まで必死に練習してね、やっぱり甲子園が夢なんですよ」と断じた。

 

甲子園へかける思いについて「この夢が欲しくてね、小雨の降る路地で泣いたこともあるんですよ。出たい、出たいって」と“選手の思い”を代弁。

 

司会の関口宏氏が「壊れてしまうかもしれない」と故障の可能性について言及すると、張本氏は「けがを怖がったんじゃ、スポーツやめたほうがいいよ。みんな宿命なんだから、スポーツ選手は」 と説明した。

 

また、國保監督について「彼はアメリカの独立リーグにいた。だからアメリカ流に考えている。アメリカは消耗品と考えるが、東洋人は投げて投げて力をつけるんだ」と力説。

 

けがをして将来の可能性をつぶすべきではないという意見に対しても「(佐々木投手の)将来を考えたら投げさせたほうがいいに決まってるじゃない。苦しいときの投球を体で覚えてね、それから大成したピッチャーはいくらでもいるんだから。楽させちゃダメですよ。スポーツ選手は」と声をはり上げた。

高校野球人気か、選手の将来か

 

旧来の「高校野球の美学」を大切に感じている張本氏とは対照的に、ダルビッシュ投手は、高校野球の運営について多く提案をしている。

 

夏の高校野球(全国高等学校野球選手権大会)では、30度を超える気温のなかのプレーによる熱中症や過度の連投、過密日程によって選手が消耗されてきた事態が「美談」として人気を博す一方、近年は試合管理が問題視されてきた。

 

記憶に新しいのは、2013年に活躍した済美(愛媛)の安楽智大投手。現在は東北楽天ゴールデンイーグルスで次世代を担う若手投手として注目されている。

 

安楽投手は、春の甲子園では初戦の延長12回232球から立て続けに5試合で先発し772球と投げた。

 

浦和学院の初優勝で幕を閉じたものの、センバツの話題は安楽投手に集中。決勝で力尽き、大量失点をしたものの、最後まで投げ続けた姿は野球ファンから“感動”のコメントが相次いだ。 

 

2013年夏の選手権大会では、当時甲子園最速の155㎞/hを記録した。

 

その後、高校2年の秋に尺骨神経麻痺を発症。3年の夏も甲子園へ出場しているが、プロ選手となったいまも怪我の具合はすぐれず、成績は行ったり来たりを繰り返している。

 

最も有名なのは、1991年、夏の甲子園だ。

沖縄水産の大野倫投手は選手権大会で決勝戦まで6試合すべてに登板した。773球を投げたことで右ヒジを疲労骨折。閉会式では、右腕が曲がったまま伸ばすこともできずに行進した。

 

その後、彼がマウンドで投げる姿を見ることはなかった。大野投手は、3年の春からひじに痛み止めの注射を打って登板していた。

 

この時の沖縄水産にはエースの座を争う別の投手がいたが、夏の沖縄大会を前にした練習試合で、高熱を押して練習試合で投球、身体を壊して入院していた。

 

投手としての選手生命を断たれた大野選手は、骨折をした甲子園決勝から3年後、朝日新聞の取材に対し次のように語っている。

 

「今の高校球児に『もう少し、自分の体を大切にしろ』と言いたい。将来のある選手が何人もつぶれていったのを見ている。でも、甲子園に行ってしまったら、『もう自分の体なんてどうなってもいいや』と考えてしまう」

 

ダルビッシュ投手は、甲子園での「感動」について、炎天下の中の過密スケジュールや、開会式での整列行進の必要性にも言及。選手を第一に考える姿勢を示している。

 

 

【 申し訳ございません。

    炎天下の中一生懸命頑張る球児達の身体は無視して自分だけ感動したいドS勢以外のまともな人たちと球児達のことを一生懸命考えた結果です。 https://t.co/6uwJNHtnAc

    — ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) July 26, 2019】

 

 

選手生命が断たれたり、将来が制限される選手がいる一方で、田中将大投手や松坂大輔投手などのように強豪校で酷使されたり、ダルビッシュ投手のようにエースとして活躍しながらも大成し、メジャーリーグで活躍する選手も、もちろんいる。

 

ただ、甲子園をエースとして“投げ抜いて”、プロでも第一線でエース級の活躍を続ける選手は少ない。それが才能のためなのか、酷使のためなのかは分からない。

 

だが選手を消耗し、将来をつぶす可能性があるとしても、依然として「エース」の連投が甲子園人気を下支えし、投手を酷使することで「力をつける」「磨かれる」と考える野球経験者も存在するという事実が、今回の問題でも浮き彫りになった』

 

 

 

 実に興味深い意見の対立です。

 

 恐らく、今、吉本興業の闇営業問題とその問題から派生した“内部抗争”まがいの話題で持ちきりのテレビですが、今日以降はこの問題が多少は吉本興業の話題に食い込むんじゃ無いかと思います。

 

 各地で地方予選の決勝が行われ、夏の甲子園大会がいよいよ始まる直前です。

 

 例年のことですが、強い高校には注目のエース投手がいて彼らの球速やピッチャーながらもチームの4番を打つ強力な打棒について話題になります。

 しかも一回戦、二回戦、三回戦、そしてベスト8、ベスト4、決勝へと勝ち進むにつれ注目は更に高まり、甲子園での優勝とプロ野球での活躍が話題になっていくのが年中行事でもあります。

 

 しかし真夏の盛りに、しかも曾てよりも熱帯地方に変化してしまったような現代の日本。そして日影の無い甲子園球場で戦う辛さを知っているのは経験者のみです。

 佐々木投手の地方予選決勝で登板回避させたことに<喝!>を飛ばした張本さん自身夏の甲子園大会に出た経験はありません。

 ウイキペディアで彼の歴史を読めば、高校野球部だった彼が部内で起きた不祥事の責任を負わされて出場停止処分を受けたとなっており、張本さん自身が夏の甲子園に対して大きな思いを抱いていることは理解出来ます。

 

 チームはエース一人のものじゃない。監督のものじゃない。というのが彼の今回放送における言い分の一部の様ですが、どうもそこには張本氏がどの立場からこの問題を見ているのかが良く分かりません。

 

 選手の立場であるならば、ダルビッシュ投手は正に自身も経験者で現役の投手として佐々木投手の登板を回避させた監督の気持ち、佐々木投手に対する思いやりがビンビン伝わって来ますが、張本氏からは選手目線と言えば選手目線。指導者的な立場から言えば指導者目線。・・なんですが、どうもハッキリしません。

 

 選手目線の意見だとすれば、彼の言い分では<例え投手の肩が壊れようと、チームは彼一人のものじゃないんだから、投げきるのが務めだ!>という、何となく軍隊精神の様な主張に思えますし、指導者目線の意見だとすれば、今の時代にそぐわない前近代的な考え方と一蹴されることでしょう。

 

 要するに、<古い>の一言なのです。

 

 

 確かに彼が言うように今、ヤンキースで活躍する田中投手も日本ハムにいる斎藤投手も佐々木投手よりは球数多く投げていたかも知れませんが、果たして医学的に見て誰の肩が一番疲労度や損傷度が高かったかは誰も知らないでしょう。

 誰もが知っているのは、3人の中で160キロを超える球速のボールを投げているのが佐々木投手ただ一人と言う事です。

 それだけのボールを投げる投手が、しかもまだ肉体が出来上がっていない段階でそんなに超人的スピードを出すことの損傷度は張本さんが知る筈も無いことです。

 

 少なくとも現状を一番良く知っていたのが大船渡高校の野球部監督であり、チームの優勝を選手同様に望んでいる監督が苦渋の決断としてエース登板を回避させたと言う事に、既に答えは出ているのです。

 

 私はこのダルビッシュ投手と張本氏の正論!反論!論争に関して、ダルビッシュに軍配を上げます。ただ、「コーナーを消して」というのは、火種になるでしょうが。

 

 皆さんはどう思いますか。