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 上の写真は中国の江蘇省で行われたマラソン大会の様子。
 中国選手とケニア選手の二人が熾烈なトップ争いをしている瞬間に、何とマラソンが行われていた沿道でボランティアを務めていた人間が中国国旗を無理に自国選手に手渡したのだ。

 このドタバタが原因で中国選手は2位に終わった。

 しかも2位に終わっただけで無く、この国旗を手渡された中国選手が落としたものだから、ネット上では<国旗を侮辱した!>と言った批判のツイートが殺到したそうだ。

 実に愚かというか、贔屓の引き倒しというか、ナショナリズムを私物化する輩の自己満足と他者への押しつけへの象徴的な姿としか思えない事態だろう。

 更にこの出来事に対して共産党機関紙はこれまた訳の分からない<愛国コメント>を載せているのだから、呆れると言うか何と言うか・・。



(朝日新聞 2018年11月20日21時22分)
『マラソンの成績と国旗、どちらが重要なのか――。中国・江蘇省で18日開かれたマラソン大会で、ゴール直前にデッドヒートを繰り広げていた中国人の女子選手がコース上で手渡された中国国旗を落とし、失速して2位に終わったことに、中国のネット上で評価が真っ二つに割れている。

 「国旗騒動」が起きたのは、蘇州市での蘇州マラソン女子の部。ゴール間近で、中国の何引麗(ホーインリー)選手がケニア人選手と並走してトップ争いをしていると、沿道からコース上に人が飛び出し、何選手に国旗を手渡そうとした。突然のことに何選手は国旗を受け取らず、そのまま疾走。すると、今度は別の人がコース中央に立って待ち構え、国旗を何選手の右腕に絡めるように手渡した。

 何選手が腕に絡みついた国旗を左手で取り外した時、国旗はコース上に落ちた。そのままレースは続いたが、何選手はペースが落ち2位でゴール。タイムは1位と5秒差の2時間30分30秒だった。

 ログイン前の続きこの様子はテレビで生中継され、レース終了直後からネット上では、「紙くずのように国旗を投げ捨て、国旗を侮辱した」「愛国心が足りない」、一方で「レースを邪魔され、選手がかわいそうだ」「愛国主義の過ちだ」と大論争に。何選手は中国版ツイッター微博で「国旗は投げ捨てたのではなく、腕がこわばって落ちてしまった。とても申し訳ない」と謝罪した。

 ネット上で行き過ぎた愛国主義への批判が相次ぐ中、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)は19日、「国旗は侮辱されてはならないし、愛国は偏狭であってはならない。ただ、すべてを愛国主義のせいにするべきではない」との記事を出した。大会主催者は国旗を渡したのはボランティアで、「愛国の思いからだった」と説明している』



 そもそも、ボランティアをする人間がレース後に国旗を渡すのであれば理解出来るが、ゴール間近の最も熾烈なタイミングで選手の行く手を遮るような行動をとることが全く理解出来ない。

 ボランティアがしてはいけない行動についてのレクチャーはしてなかったのだろう。

 また、見ていれば分かる筈の<国旗を渡された選手の驚きと困惑>を理解しようとせずに、ただ、国旗が落ちたことを<国旗を捨てたケシカラン行動>として批判する連中が多いことも全く理解出来ない。

 見れば、ボランティアがとった行動が自国選手を妨害していると分かるだろうに・・。

 そして「環球時報」の記事内容も理解に苦しむ。

 <国旗は侮辱されてはならない>という文章をどんなつもりで書いたのか。倒れそうになりながらも必死でケニア選手とトップ争いをしている自国選手が、突然手渡されて落としたとしても彼女が侮辱する気など無いことは明らかだろう。
 <愛国は偏狭であってはならない。ただ、すべてを愛国主義のせいにするべきではない>とは何を言っているのか全く分からない。

 愛国主義は絶対に大事なモノで、偏狭であってもなくても、これを批判すべきでは無いといっているのだろうか?

 思うに。

 ボランティアの人間がとった行動は、自国選手を中国国家が見守っているという意味か、国旗を身に纏いながらトップでゴールインして欲しいという気持ちが込められていたのだろう。

 しかし、当人はそうした行動が全く選手の為にならないと考えもしていなかったのだろう。

 このボランティアは自分のしている行動が<愛国的>であるとか、<晴れがましさ>を感じながら自分自身の満足の為にしたとしか思えない。

 つまりは、<自己満足的な愛国行動>を他者に押しつけたに過ぎないのだ。

 偏狭な<愛国主義>の例は、最近では韓国の反日的な言動によく見られる。
 日本を批判するのであれば、どんなに不法であっても、違法であっても<愛国無罪>となり、国民感情的には無実と見られるし、法的にも問われないことが多い。

 中国でもそうだ。
 かつて尖閣諸島沖で漁船が巡視船に体当たりした時、尖閣諸島を国有化した際に見せた<愛国主義的反日行動>は全て愛国無罪の元に許された。

 日本国内でもそうした行動に出る偏狭な愛国主義者はいる。
 決して本来の右翼思想家では無く、単に憎しみに対して憎しみを返す行動を取っているだけなのにもかかわらず、右翼を気取り、ヘイトスピーチを投げつける者など。

 <愛国>は大切だと思うが、本当にそれが国家や国民にとって理ある言動なのか。あるいは、単に自己満足による個人的な<偏狭愛国>なのかの見極めは益々困難な時代になっているように思えるし、国民全体が意識しなければならないのではないかと思う。

 トランプの独善的な自国利益追求主義が多くの国に影響しているのを見れば、単に共産主義や独裁国家だけでは無い問題であり、民主主義と全体主義の際どいポイントだろう。

 しかしまあ、ゴール直前で二人ものボランティアが国旗を無理強いするなんて・・。