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 上の写真は佐賀市で総裁選の街頭演説会を行う安倍晋三総理と石破茂元幹事長の二人。
 正に呉越同舟の図そのものですが、昨日は各局のニュース番組に順番で出演し、総裁選に対する自分の信念を語り、余り正面切って激突とは言えない論戦を行っていました。

 夜の「報道ステーション」に出演した二人を見たのですが。<総裁選の激論>を期待していた私は、かなり予想を裏切られました。
 そもそも、二人の候補がお互いに疑問に感じていることを質問したり、反論したりという形式では無く、番組司会者が話しをフリ、それに答えるというスタイルをとっていたからです。

 昨夜はコーナー冒頭から「質問には1分ぐらいに纏めて下さい」と前提条件を伝えていたのですが、安倍さんは最初から自分の言いたいことを止められるまで話し続けるという姿勢を維持していましたし、話が途切れた時にMCが石破氏に反論を求めるかの如く石破元幹事長に振っていましたので、討論を期待して見ていた視聴者の人は概ね、<何やってんだかな~!??>と感じていたはずです。

 そんなやりとりの中でも最大の論戦テーマは二つでした。

 先ず第一は、石破派の斎藤健農相に対して安倍派の議員が<石破を支持するんなら、閣僚を辞めろ>といった内容の発言をした問題です。

 この問題に関して安倍さんの論旨は、「自分の仲間に誰が言ったのか質問したけれど誰もいなかった」「曾て小泉純一郎氏と橋下龍太郎氏が戦った時にも似た話があったが、実際は誰もいなかった」と笑いながら語ったのです。

 この答えに対し、石破氏は「斎藤健という議員はウソをつく人では無い」「彼が名前を言わないのは党がガタガタになるのを防ぐ為であり、匿名にした思いがある筈だ」と答えたのです。

 更にこの答えに対して安倍総理は、「実際にそうした問題があったのなら、誰も言っていないと言うのだから是非名前を明らかにして欲しい」「こういう事は被害者的な立場になって同情票を集める場合もあるし、かつて角福戦争の頃はこんなものじゃなかった」などと、次第に恫喝的な<名前を明かせ>という言質と、<昔はこの程度の事は当たり前>といった半ばそうした発言はあって当然の様なニュアンスを語り始めました。

 ここだけの話し、恐らくそんなことを言うのは麻生さんぐらいじゃないかと。

 この、何とも下らない<論戦>を見る限り石破氏は迫力が足らず、格好付けすぎの感も強く、清濁併せ呑む魑魅魍魎の安倍総理の余裕には対抗できないのでは無いかと言う感想を、視聴者は感じ取ったのでは無いかと思います。

 しかし、次の論点ではかなり安倍さんの主張は弱く、目が泳いでいたなと思います。
 それは憲法9条の改憲問題です。

 自民党の党是は、戦争に負けた日本が占領軍のボスであるマッカーサー元帥が指示した「日本国憲法」を若干の修正を施すだけで認めざるを得なかった経過を鑑み、日本国民が自分達の意志で、日本国民が納得する憲法を持つべきだという観点に立ち、特に納得出来ない憲法9条を見直し改憲することを目指しています。

 そしてこの憲法9条に対して、安倍さんも石破さんも総裁選がまだまだ先の頃は同じ考えだったのですが、総裁選が近づくに連れ安倍さんの<改憲論>にブレが出て来たと指摘するのが石破さんの論点であり、安倍さんは国民総意に基づいたアイデアだと主張しているのです。

 最近思うのですが。
 テレビ番組などではどうしても、フリップに少ない字数で要点を書くために多くの視聴者は実際の所、何処をどう変えるのか分かっていないのでは無いかと思います。

 そもそも、憲法9条はー

第2章 戦争の放棄
 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争
     と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこ
     れを放棄する。
   2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権
     は、これを認めない。

 ーとなっています。

 この憲法9条の1項と2項を維持したまま、9条の2として加憲するというのが安倍総理の考えている憲法9条の改憲案です。自民党憲法改正推進本部の執行部が有力としているのがー

9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自
     衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところによ     り、内閣の主張足り中区総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
   ② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

 ーです。

 要するに、<憲法9条を改憲する>となると与党の公明党が五月蠅い。
 また、野党を始めとして戦後アメリカ民主主義とアメリカ政府のポチ化戦略に洗脳された<平和主義>を唱える多くの国民を納得させる為には、憲法9条は変えずに、現時点で既に国民から認知されている自衛隊の存在を明確化させようという狙いでしょう。

 これに対して石破さんは更に明確です。

 第9条2 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交
      戦権は、これを認めない。 

 の2項を削除し、「陸海空自衛隊を保持する」ことを明記するとしています。

 それはそうでしょう。
 自衛隊は戦力を維持しています。それもかなりの高額兵器をアメリカから買わされ、世界でも有数の軍事力を持つ国家だと日本以外はどの国もそう見ているのです。

 なのに、9条の2項では戦力を持たない。交戦権を認めない。などという話しは今の小学生でもクビを捻ることでしょう。

 結局、何はともあれ反対があるのだからそれに対抗するよりも彼等が納得する妥協案を認めていくのが現実的だと考えるのが安倍総理の考えであり、国家の礎である憲法に欺瞞を持ち込むべきではない。日本国民が納得出来る様に正論を訴え続け、納得して貰うまで説得すべきだというのが石破元幹事長の考えです。

 私はこの改憲論議に関しては、安倍総理の欺瞞策は納得出来ず、石破氏の考えに賛成です。

 何故、日本国民は現在の「日本国憲法」を持たされたのか?

 私はこの点を多くのメディアが議論すべきだと思っています。
 占領軍最高司令官マッカーサー元帥は戦争終結後、厚木基地に降り立ち、日本を1952年まで統治しました。

 その中で彼が最も力を注いだのは、敬虔なキリスト教徒らしく、日本を理想郷に造り替えることだったと言われています。
 現実に彼はアメリカ本土のバプティスト教会の議長に<日本人の精神生活は戦争で空白になっているから、キリスト教を日本人に布教するのは、今が絶好の機会である>と書いた手紙を送り自分の考える理想郷を創る意志を示しています。(孫崎亨「戦後史の正体」)

 「日本国憲法」はその為に最も有効な土台になると考えていたのでは無いかと思われます。
 そうでなければ、スイスなど永世中立国でさえ呆れる<軍隊を持たない。戦力を保持しない。国の交戦権を認めない>などという条文を明文化する筈がないからです。

 そして戦後日本の多くの政治家はこの事を恥じ、敗戦国の悲哀を臥薪嘗胆の思いで堪えてきたのだと推察します。

 私は現在の国際情勢を考えると、戦力を保持せずに、交戦権を認めない憲法を持つ事が民主主義社会の国民として当然だとは到底考えていません。
 北方領土は今もロシアが不法占拠したままですし、竹島はサンフランシスコ講和条約が発効する直前に韓国が不法占拠したままです。
 更に南の尖閣諸島は、中国が度重なる領海侵犯を行っても何の有効手段をとる事も出来ず、いつ何時、こうした隣国が過激で攻撃的な指導者に率いられ、実力行動に出てくるか分からない状況にあるのです。
 北朝鮮は日本人拉致被害者問題を既に解決した問題だとシラを切っている状況。

 こうした世界の中の日本の立ち位置、置かれている状況を考えれば、万が一の時に備える武力無しで後世の若者達が幸せな生活を営めるかどうか不安になるのです。

 総裁選を見ていて感じた事です。

 既に結論は見えている。
 安倍さんが勝ち、石破さんは負ける。
 但し、石破さんは自分の取れ高によって総裁選後の影響力を維持できるのであくまでも自分の信念を語り続けるが、正面切ってのガチンコ対決はしない。

 こんな感じです。

 となれば、日本の総裁選よりもトランプ大統領が行う中国貿易戦争への次なる一手であり、訪中する安倍さんが太平洋のかなたで日本を恫喝するトランプを睨み、どんな一手を打つかです。

 既に、日本国民の注目すべき動きは総裁選などという瓶の中の波では無く、太平洋と日本海を挟んで発生するだろう大波にこそ注目すべきでしょう。