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 昨日に引き続き今日も体操の宮川紗江選手に対する日本体操協会・塚原千恵子女史強化本部長
のパワハラ疑惑について触れたいと思います。

 この騒動に関しては昨日朝から晩までワイドショー、ストレートニュースで取り上げられていました。 
 その中で気になったのが、夜のニュース番組「報道ステーション」のスポーツキャスターとして有名な宮嶋泰子アナウンサーの放送内容でした。

 と言うのは、彼女は騒動の渦中の塚原千恵子強化本部長と親しいらしく、彼女と電話でやりとりした内容を使いながら全体として強化本部長を擁護する話しを放送していたのです。

 宮嶋アナの放送した部分で最も気になったのが、<朝日生命クラブに40年間、選手を勧誘したことは一度も無い!>と語った塚原千恵子強化本部長の言葉を、「今まで私の耳にも入っていたのですが、勧誘したことは一度も無いと言う事を聞き驚きました」と伝えたのです。

 <今まで朝日生命クラブに選手を勧誘したことは一度も無い>と電話の向こうで語った塚原千恵子強化本部長の言葉を、何故、真実だとして驚きの声をもって語ったのか。
 彼女は報道ステーションの記者として出演しているはずなのに・・私は呆れました。

 そもそも、塚原強化本部長は宮川選手からパワハラを行った当事者として告発されている訳です。しかも、塚原氏が朝日生命体操クラブの女子監督で、今回の騒動中にも<朝日生命に来れば良い>という内容を付き人をから話されたと当の宮川選手は告発しているのです。
 にもかかわらず、パワハラをしたと告発されている人物に電話取材をして、相手が<朝日生命クラブに勧誘したことは一度も無い>⇒《だから、私が宮川選手を引き抜こうとしたことなどあり得ない》と強調するに等しい内容を、ただ当事者から聞いただけで何の裏付け取材もしていないのに、ニュース番組のキャスターともあろう者が無批判に放送してしまうなどあり得ないでしょう。

 更に、メインのMC二人も何の批判を差し挟まず、コメンテーターの後藤氏も沈黙を守っていたことは、それ即ち「報道ステーション」は今回のパワハラ騒動に対して塚原夫妻側を信頼していると体現している様なもので、ちょっと信じられない思いで見ていました。

 実は宮嶋アナを除いた3人は今まで散々自分達が批判してきた<忖度>を、ベテランキャスターの宮嶋アナに対して示したと私は思います。

 通常であれば、<でも、勧誘したことは一度も無いという言葉は塚原さんの言い分であって、まだ裏付け取材をしていませんよねえ>と言ったツッコミの言葉を入れるべきなのです。
 それなのに、MC達は宮嶋アナの言葉をまるで“天の声”の如く拝聴するばかりで、質問をするのではなく、相づちを打ち、御節ごもっとも的な態度に終始しました。

 昨夜の内容は「報道ステーション」として、視聴者の信頼を裏切るものだと私は考えます。

 確かに、18歳の女の子だからウソをつく訳は無い、と言った見方は甘すぎるし世間を知らなすぎるものです。
 10歳であろうと子供はよくウソをつきますし、18歳は既に大人と言っても良いでしょう。
 つまり、言い分が違う二組の対立構図を読み解くためには、特にニュース番組などの二報以降は、より多くの関係者や過去の事例を取材する必要があるのです。

 録音テープや動画など物証が無い時に言った言わないという主張が異なるケースでは伝える側も慎重に臨まなければならないのは当然です。
 お互いが<ウソをついてる!>と言う時に第三者として報道する者の責任はどちらか一方に偏らず、しかし自分が取材して発掘した事実は裏取りをしながら発表する姿勢が必須です。
 双方の意見を聞き、周囲の意見を聞き、過去からの出来事を検証しながら物事の本質を見抜く目がなければなりません。

 重要なのは、朝日生命体操クラブに所属していた元選手らが宮川選手を応援していることや、今は自分の体操クラブを持ち、曾て塚原氏の朝日生命クラブに所属選手を引き抜かれかけたことがあると話す池谷元選手など、多くの声を出していない人々の声を取材で引き出す事です。

 宮川選手のウソを暴こうとする者がいるとすれば、彼女が会見で語った内容を検証すれば良いのですから、そんなに手間暇はかからないでしょう。

 一方、塚原強化本部長のウソを暴こうとする者がいれば、これはもう30年以上の歴史を見直さなければならないですから大変です。
 ですが、仮にウソをついていれば、関係者もより多くいますので検証することは不可能ではなりません。
 
 先日のアマチュアボクシング連盟でもそうでしたが、パワハラが横行している組織では権力を持つ者が多くの決定権を持っているがために、批判の声はどこからも上がらず、まるで何も無い様に見えるものです。
 ところが、実際には権力を持つ者とその周囲にいる者達が有形無形のプレッシャーをかけ、立ち上がろうとする批判の声を潰しているだけなのです。

 今回の騒動も、恐らくは今後双方が自分の主張は正しいと言い張るでしょう。
 そして、どちらかと関係を持つ者は自分がついた側を擁護する口調や論調で世間を賑わすことにもなるでしょう。昨夜の宮嶋アナの様に。

 しかし最も重要なのは、事の本質です。

 通報があった<暴力>の度合いと具体的な事実関係の検証。
 そして処分の妥当性。
 更にはパワハラの実体の解明。
 朝日生命体操クラブによって選手が引き抜かれた事実があるのかどうか。ナショナルチームのスタッフ構成に塚原夫妻のアンバランスな配慮は無いかどうか。
 2020強化選手の海外遠征などはオープンに議論され決定されているか。

 何よりも重要なのは、宮川選手を象徴とするまだまだ成人していない体操選手達一人一人を守る体制は本当にあるのかどうか、でしょう。

 今日以降、マスコミの論調は二分されていくものと予想されますし、声なき声が、声を上げ始めるかも知れません。