張本勲さん。78才。
張本さんは日本プロ野球界の生きる伝説のような存在です。
3000本安打達成、500本塁打、300盗塁、16度のシーズン打率3割、9年連続3割と、もの凄い記録を打ち立てた名選手です。
しかし、巨人の長嶋茂雄さんに比べて<記録の張本、人気の長嶋>と呼ばれる様に人気の面では長嶋終身名誉監督には遙かに及びません。
その理由はたくさんあるでしょう。
中でも最も大きな理由はこの人の言葉にはウソが無いけれども、日本的な思いやりの心が薄く物事の本質を見極めないという点では無いかと思います。
彼が今、全国的な人気を博す元になっているのがTBSの日曜朝に放送している「サンデーモーニング」のスポーツコーナーです。
手持ちのパターン用紙をMCの関口宏氏が持ち、週刊誌の見出しの如くその日に採り上げるネタを列記し、VTR編集したものを見ては<天晴れ!>とか、<喝!>と一刀両断にネタ元の人物評価をするといった形ですね。
このコーナーで、先日行われたオールスター第一戦に先発登板した松坂大輔投手を<みじめだね!>と貶したのです。
実に人として、みっともない発言をテレビという公共の場でするものだなと思います。
(リアルライフ 2018年7月17日 12時40分)
『15日放送の『サンデーモーニング』(TBS系)で、張本勲氏が13日のオールスターゲーム第1戦に先発した松坂大輔投手を猛批判。さらに、選んだファンにも苦言を呈し、物議を醸した。
13日のオールスターゲーム第1戦に登板し、2本塁打を浴びるなど打ち込まれた松坂投手の様子を見た張本氏は、
「あんな姿見たくないね。みじめだね。私は彼の良いときを知ってるからね。ファン投票1位だからね、仕方ないにしても、ファン投票も考えてもらいたいわね」とコメント。
そして、選出方法と選んだファンにも苦言を呈したうえで、
「引退間際の力の衰えた選手は見たくないもの、我々は。良いときを知ってるから」と再度怒る。
これには、関口宏が「でも、見たいっていうファン心理もあるんじゃないですか」と返すが、張本氏は、
「それは本当のファンじゃないんですよ。本当のファンは見たくないはずですよ。なあ、どうだい?」
とゲストの元巨人・槙原寛己氏に水を向ける。槙原氏は「オールスターの投手はストレートしか投げてはいけないという暗黙のルールがある」と、話題を変え、この問題に言及せず、CMへと移行した。「炎上」には加わりたくないと考えたのかもしれない。
張本氏の発言に、プロ野球ファンが激怒。「成績が出なくとも投げているところを見たい」「スター性もプロのうち」「人気のない張本が松坂に嫉妬しているのでは」と怒りの声が噴出することに。
一方で、「もっともなことを言っている」「松坂が出るのはおかしい」「一番良い成績を残している投手を投票するべきだ」など、張本氏に賛同する声もあった。
オールスターの選出方法については、ネット投票が解禁された間もなかった2003年、3年前にヤクルトスワローズから中日ドラゴンズにFA移籍したものの、故障で一軍登板がなかった川崎憲次郎投手がファン投票1位となり、後に辞退したケースがある。
この現象は「川崎祭」などと呼ばれ、問題化。悪質な嫌がらせとする一方で、純粋に川崎を見たいという人もいたようで、議論を呼んだ。なお、この後ネット投票の規定が見直され、投票者の登録制度が導入されることになった。
昨今のオールスターゲームは槙原氏の言うように、投手はストレートのみという不文律ができており、真剣勝負よりも「お祭り感」が強いのが現状。また、交流戦の影響で勝負の新鮮さも薄れており、第一線の選手より、人気選手が選出されやすい傾向にあると言われる。
張本氏の言うように、オールスターゲームが実力のあるものが出場する舞台と定義するなら、わずか7試合の登板で3勝3敗の松坂が選出されることは、おかしいと言わざるを得ない。しかし、「人気選手が選ばれる舞台」とするならば、高い実績を持つ松坂が選ばれるのは、何らおかしいことではないだろう。
松坂が「みじめ」であるか否かは意見の分かれるところだが、「選出方法」や対象者の定義については見直す必要があるかもしれない』
張本氏は、自分が松坂選手の良い時を知っているから、5点も点をとられる様な今の様子はみじめでみていられないと語りました。
が、では自身の晩年のプレーをはどうだったのでしょうか。
巨人に移った最後の年は打率2割6分3厘。
翌年、ロッテに移って2割6分1厘。そして最後の年は2割1分9厘でした。
もはや足は遅く守れないので、70試合にしか出られず、唯一の打棒も残念な結果でした。
張本氏の最後は41才でした。
松坂大輔投手は今年38才。
にもかかわらず、オールスターで1位に選ばれた訳ですが、何故、彼が1位に選ばれたかを張本氏はよくよく考えた上で上記の発言をしたのでしょうか?
松坂は横浜高校出身で、伝説の甲子園投手でした。
西武にプロ入りし、スター選手として活躍し、2007年にメジャーのボストンに破格の移籍金で入団して活躍したのは今更言うまでもないでしょう。
ところが、アメリカのメジャーリーグでの登板間隔と試合数の多さに肩が悲鳴を上げ、年々、成績は落ち、日本のプロ野球に帰ってきたのです。
ソフトバンクに3年契約で入団したものの結局、肩の回復は芳しくなく1試合しかマウンドに上がることは出来ませんでした。
私が思うに。
普通の選手であれば、メジャーで肩を壊した段階で日本球界に復帰することは無かったのでは無いかと。
恐らく金銭的に何等困ることは無いでしょうし、彼の人気度からすれば今後どこのテレビ局でも解説者として契約するでしょうし、タレント事務所としても彼ほどの知名度があれば三顧の礼を重ねても契約したい人材だからです。
ところが彼は日本に復帰し、しかもソフトバンクで3年も不遇の時を過ごします。
これは凄い事です。
あれだけの前評判で日本復帰をしながら、3年も活躍できず、穴があったら入りたいと思う事はそれこそ何度、何十度、何百度あったか分かりません。
でも、松坂は辞めませんでした。
そして今年、中日の入団テストを受け、西武時代の投手コーチだった森監督の友情もあって年俸1500万円の1年契約で入団したのです。背番号は99です。
エースナンバー18番をつけ、6年総額5200万ドルの年俸を貰った男にとってどれ程屈辱的な内容である事か。
それでも松坂は、<肩が戻りさえすれば・・>との思いで野球を諦めず、今年、中日で3勝を上げる事が出来たのです。
ストレートは130キロ台。
しかし、カットボールやフォークなど、変化球を駆使して若手選手をキリキリ舞いさせる姿は私の言葉では<天晴れ!>な活躍です。
そして、先日のオールスター第1戦です。
彼は、試合ではほとんどストレートしか投げていません。
140キロに届かないストレートを、パリーグの強打者が打てない訳がありません。
先頭打者に打たれ、その後もメチャメチャ打たれました。
それでも松坂は堂々と投げ続けました。
<これが今の自分の実力だ。ストレートでは勝負できないけど、ファンに選ばれた以上、自分の持てる力を出し切って若手と勝負する>という言葉にならない言葉を投げ続けていた様に感じました。
ところがこの姿を、この野球に取り組む姿勢を張本勲氏は<みじめだ!>と評したのです。
武士は、死ぬと分かっても戦場に赴かなければならない時があり、相手の数が多くてとても勝てないと分かっていても背中を見せず突き進まなければならない時があります。
それは、自分の後ろにいる者達が背中を見て後に続くか、怯えて逃げるかが決まるからです。
私は、オールスター初戦で見せた松坂大輔の姿は実に見事な“戦い態”だったと考えます。
あの姿を張本某は<みじめだ!>と評しましたが、その投げる姿、その一球にどんな思いを込めているかを見極められない<生きる伝説>こそ、<みっともない!>でしょう。
ボロボロになっても胸を張って己の生き様を見せられる男が今の日本にどれほどいるでしょうか?政治の世界、経済の世界、そしてスポーツの世界を見回してもほとんどいないでしょう。
唯一、サッカーの三浦カズが50才を越えてもピッチにしがみつける体力と気力を我々に見せてくれているぐらいでしょうか。
若く、跳ぶが如く活躍し、勝利の美酒に酔うだけが真のスポーツマンではないでしょう。
年を重ね、力が落ちても、勝利を掴み取り、敗北に打ちのめされる姿を後輩に見せる事が出来る者こそスポーツマンとして見事だと、私は考えます。
私は、松坂大輔選手や三浦カズ選手にこそ<天晴れ!!!>を届けたいと思いますし、張本勲氏には、もっと戦う男の極みを知れと、<喝!!!!>を言いたいと思います。