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 昨日のワールドシリーズ第7戦、ドジャース対アストロズは写真のダルビッシュ有投手がドジャースの先発投手としてシリーズ2回目の大舞台に登板しましたが、ドジャーズファンの多くのアメリカ人と日本人の期待空しく、又しても2回で降板する散々な出来で終わりました。

 試合後の会見でダルビッシュは、野球への情熱を失いかけている今の状況で、再び、<勝ちたい!ドジャースで勝ちたい!>という目標を見つけたと語った様ですが、来年以降の所属はメジャーリーグならではの複雑な思惑があるようです。



(THE PAGE 11/3 6:00配信)
『「なんですかね。本当にワールドシリーズでやり返したいじゃないけど、そういうの(気持ち)がもっと出てくると思うので、そういうチャンスのある球団がベストですけど・・・・」

 ワールドシリーズ第7戦に先発しながら、第3戦と同じ1回2/3で降板したダルビッシュ有。今オフにフリーエージェントになるが、試合後、去就について何を重視するかと聞かれると、そう口にしてから6秒ほど沈黙し、やがて言葉を絞り出した。

「自分はドジャースでやりたいです」

 その機会が与えられるかどうか。

 試合後、地元記者の口ぶりは、一様に否定的だった。

 元々、再契約はない、との捉え方が圧倒的。地元紙オレンジ・カウンティレジスターのビル・プランケット記者がこう解説する。

「おそらく、ダルビッシュの契約総額は、1億5000万ドル(約165億円)を超えるだろう。しかしドジャースは、30歳以上の投手で、さらにこれまで、多くの球数を投げてきている投手との長期高額契約には消極的だ。彼らは、そういう投手の衰えが早いというデータを持っている。同様の理由で、来オフにクレイトン・カーショウが契約破棄をしてフリーエージェントになっても、これだけ貢献してきた投手ではあるが、長期契約をオファーしない可能性もある」

ドジャースはここしばらく、エイドリアン・ゴンザレス、アンドレ・イーシアなど、不良債権化した長期契約に苦しめられてきた。前フロント陣による場当たり的な補強が原因だが、アンドリュー・フリードマン統括本部長とファーハン・ザイディGM(ゼネラルマネージャー)の体制になってからは、方針を一転。5年以上の契約は結ばず、昨オフ、ケンリー・ジャンセンと5年総額8000万ドル(約88億円)で再契約したのが唯一の例外となっている。

 今オフは、FA市場に有力な先発投手が少ない。ダルビッシュとジェイク・アリエッタ(カブス)、そしてジョニー・クエット(ジャイアンツ)ぐらいだろう。となると必然、契約総額は高騰する。この夏、ダルビッシュの代理人は、ナショナルズのステファン・ストラスバーグレベルの契約(7年総額1億7500万ドル)を求めるのではという憶測が出たが、そうなれば、その時点でドジャースは撤退を決める。また、ダルビッシュが31歳で、日本時代も含めると、それなりの球数を投げている時点で長期高額契約はありえないということになる。その点、彼らは実にドライなのだ。

 プランケット記者が触れたように、来年30歳になるカーショウを巡る対応もしかり。彼もまた投球数が多く、しかも腰の状態が良くない。ドジャースを中心に取材するブリチャー・リポートのスコット・ミラー記者も、「カーショウが契約破棄を選ぶなら、それはドジャースを出るということではないか」と予想した。

 では、ダルビッシュが仮に、5年総額1億ドル程度(訳110億円)まで妥協したらどうかだが、プランケット記者は、「彼がそれをする必要はないし、そもそも相場が下がって、その程度になってしまうかもしれない」と話した。

「プレーオフ最初の2試合の好投により、相場は6、7年で、総額1億2000~5000万ドル程度となり、後はワールドシリーズの結果次第でどこまで跳ね上がるか、という状況だった。やはりビッグゲームでの結果は、契約に直結しうるから。しかしながら、全く逆の展開となった」

 ただ、奇しくもそうして価値が下がったのなら、逆に再契約のチャンスが生まれたのではないか、と聞くと、それにも否定的だった。

「ドジャースはワールドシリーズで勝つために、彼をトレードで獲得した。残念ながら、望んだ結果にはならなかった。それがすべてを暗示しているのではないか」

 前出のミラー記者も同様だった。

「極端に言えば、第7戦のような試合で、圧倒的なピッチングをすることを期待して、ドジャースは彼を獲った。仮にそうなれば、彼の相場はドジャースの手の届かないところへいってしまう。残念なピッチングをしたことで、例外を認めるような空気にはならないのではないか」

 結局、どっちに転んでもドジャースとの再契約はなかったーーそういうことか。

 ただ、ダルビッシュ自身の気持ちは定まっている。

「正直な話、メジャーに来てからこう、野球への情熱っていうのがだんだん落ちてきてしまっている部分があって、特にこの3年ぐらいはそれに凄い悩んでいた。で、ここでやっぱり目標を持たせてもらった。(先日の会見で)最後まで負けたくないと言ったと思うんですけど、今、ワールドシリーズに出て活躍したいというのが、目標になりました」

 冒頭で明かしたように、出来ればそれはドジャースで、というのが彼の思い。であればまだ、可能性は残されているようにも映るが、果たしてーー。

 改めて会見を振り返ると、気になるのはあの6秒間の沈黙。

 逡巡しているようにも見えた。どんな思いが頭をかすめたのか。口にした言葉は、社交辞令には聞こえなかった。それなりに重い響きもあった。

 いずれにしてもダルビッシュは、人生で初めて、チームを選ぶという選択権を得る』



 日本のプロ野球でなら、間違いなく彼はフリーエージエントの権利を行使しながら今所属するチームでの再契約を実行するでしょう。

 それが日本的だからです。日本のファンが望み、日本社会の価値観だからです。

 しかしメジャーリーグでは契約は実に冷徹で、人情が入り込む余地はほぼ完璧に無く、今までのデータに基づいた将来の最も高い可能性を選択するようです。
 当然、30才を過ぎた投手の肉体的な疲労と持続性を秤にかけ、高額な契約金を払ってでも抱えておこうという意志が働く余地はほとんどなさそうです。

 ダルビッシュは日本で相当に肩を酷使した。
 レンジャーズでも酷使し、メスも入れている。
 今回はワールドシリーズに優勝するために彼をトレード獲得したが、結果は出なかった。
 来年もワールドシリーズに出たとしても、雪辱する可能性は多くないだろう。

 となれば、ダルビッシュの侠気を受け入れるという日本的心情とはかけ離れたアメリカ人の感性です。150億円を越える可能性のある契約は勿論のこと、彼に対する期待の数値は高くなることはないように見えます。

 勝敗の差は僅か1勝という僅差でしたが、多くの選手達の来年以降の人生に及ぼす影響はとてつもなく大きくなりそうです。

 一球に全人生をかける、と言うことが大袈裟では無い事を改めて学びました。